なぜ小型SUVは急増? 世界を巻き込むSUV人気 新興国需要が要因か

怒涛のごとく登場するコンパクトSUV。日本市場でもトヨタ「ヤリスクロス」「ライズ」や日産「キックス」、マツダ「CX-30」などが相次いで投入されているほか、輸入車でもさまざまなモデルがデビューしています。ここ1、2年で急増しているコンパクトSUVですが、なぜこれほどまでにモデル数が増えているのでしょうか。

日本で売れてるワケとグローバルの背景

 コンパクトSUVの攻勢が止まりません。日本市場では2019年秋に登場したトヨタ「ライズ」&ダイハツ「ロッキー」がヒットを飛ばし、2020年6月には日産が新型「キックス」を投入。さらにトヨタは新型「ヤリスクロス」を投入したばかりです。

 かつてのSUV(RV)といえば、大柄で悪路走破性(オフロード)というイメージでしたが、近年のSUVはオンロードの走行を重視した都市型SUVが主流となっていました。

 そこに、ここ1、2年で急増しているのが、コンパクトSUVです。なぜ、世界中のメーカーがこぞって小さなSUVを投入しているのでしょうか。

激戦状態のコンパクトSUV。今後の行方はどうなるのか。
激戦状態のコンパクトSUV。今後の行方はどうなるのか。

 コンパクトSUVのブームは、国産メーカーだけではありません。欧州メーカーでもフォルクスワーゲンの「T-クロス」と「T-ロック」が日本に上陸。

 メルセデス・ベンツからも「GLA」がフルモデルチェンジしたほか、さらに3列シートの「GLB」をデビューさせ、シトロエンも「C3エアクロスSUV」と「C5エアクロスSUV」の導入で日本市場で新たな顧客層を獲得しています。

 また、アウディでも売れ筋モデルの「Q2」が2020年9月1日に本国でフルモデルチェンジしました。

 さらに新興国マーケットでも、タイではトヨタ「カローラクロス」、インドではトヨタ「アーバンクルーザー」や日産「マグナイト」、南米市場ではフォルクスワーゲン「ニヴス」といったように、Aセグメント/Bセグメント/Cセグメントに属するコンパクトSUVが増えているのです。

 現在、日本で主流となるコンパクトSUVは、日産「ジューク」が2010年にデビューして、従来のオフロードを意識させるSUVではなく、スタイリッシュなコンパクトSUVを提案してヒットしました。

 以降、ホンダ「ヴェゼル(2013年)」、マツダ「CX-3(2015年)」、トヨタ「C-HR(2016年)」など、コンパクトSUVのシェアが拡大してきました。

 従来のSUVが、オフロード性能と街乗り性能を兼ね備えたクルマとして人気を博してきたなかで、これらのコンパクトSUVは「なんちゃってSUV」などと揶揄されることもありました。

 しかし、これらのクルマが売れるようになったのは、スタイルやファッションだけが理由ではありません。

 最低地上高が高いのがSUVの大きな特徴のひとつです。本格的なオフロード走行をしなくとも、たまにキャンプに行ってもフロアを擦る心配がありませんし、出先で悪路に遭遇してもストレスを感じることがありません。

 雪が積もったときにも、4WDではないFFでも、スタッドレスタイヤの性能が向上しているので、SUVなら多くの状況に対応することができます。

 さらに、ほとんど街乗りでお買い物カーとして使う人でも、「車高が高い=アイポイントが高い」ので前方視界が広くなるため、安全面でも心理面でも、運転のしやすさにつながります。

 1人か2人で乗るようなシティコミューターとしても、コンパクトSUVのメリットは大きいわけです。

 そして世界的にコンパクトSUVが増えている大きな理由は、新興国の経済成長です。

 未舗装路や悪路が多い、南米やアフリカ、アジアの各地で、クルマを買える人が増えてきました。

 一家に一台から一人に一台へと、クルマの需要が変わるなかで、安価なコンパクトサイズのSUVが人気を呼ぶのは自然な流れでした。

 新興国でのニーズの急増に合わせて、世界中のメーカーがコンパクトSUVの開発と製造にリソースを傾けるようになり、それらは日本や欧州市場でも導入され、今日の大ブームを迎えています。

 さて、今日のコンパクトSUVが実用性にとても優れているのは分かりましたが、それならなぜ、以前は同様のカタチのクルマが売れていなかったのでしょうか。 その理由は、走行性能と技術の進歩がカギを握っています。

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