次世代ネットワーク「5G」って何? 5G時代到来でこの先クルマはどう変わる?

全国21万基ある信号機を5Gのアンテナに活用する案も

 ただ、こうした自動運転車が数多く走るようになれば、通信トラフィックは激増する。米インテル社が試算したデータによれば、高レベルの自動運転車が取り扱うデータ量は、一日で4TBにもなるという。

 実際は駐車中のクルマも多いため、すべてのクルマがこのデータ量を一度に消費することにはならないが、自動運転が実現した状況下では、通信量が膨大になることは間違いなく、それだけ通信トラフィックにも負担が生じることは避けられない。

2019年2月に開催されたMWC(モバイル・ワールド・コングレス)2019は、日本より先行してサービスインした国もあり、会場はまさに5G一色に染まった
2019年2月に開催されたMWC(モバイル・ワールド・コングレス)2019は、日本より先行してサービスインした国もあり、会場はまさに5G一色に染まった

 自動運転では、さらに膨大な数の車両と同時接続できる環境も必要だ。

 現在の4G環境で映画などの動画コンテンツを見ていると、時折、動画がフリーズすることがある。これは通信トラフィック状のパケット詰まりが生じさせたものだが、動画ならそれは一時的なものとして捉えればいい。しかし、自動運転車にこの症状が出れば、それこそ安全な走行に重大な問題につながりかねない。

 こうした問題にも5Gは柔軟な対応ができる仕様となっており、その意味でも将来の自動運転の実現に5Gの普及は欠かせないといっても過言ではないのだ。

 一方で、5Gが普及するにあたり、解決すべき課題もある。

 5Gは、現在の4Gで使っている3.5GHzよりも高い周波数帯(3.7GHz帯/4.5GHz帯/28GHz帯)を使う。使用する帯域幅が広がることで、データが行き来する通り道を確保して高速・大容量を実現しているのだ。

 しかし、高周波帯を使えばそれだけ電波は直進性が強まり、電波の回り込みがしにくくなって、とくにビル陰には弱い。また、電波が遠くまで届きにくく、減衰しやすいという弱点もある。そこで通信各社は送受信の環境を改善するために、従来のアンテナ本数よりもはるかに素子数を増やすなどの対策を講じることで乗り切る考えだ。

 こうしたなかでスタートした5Gではあるが、これがクルマで活用されるようになるにはもうしばらく時間がかかる。

 というのも、現状ではサービスのスタート段階にあり、基本的には4Gとコアネットワークを共用しているに過ぎず、当然ながら5G本来の高速通信は実現できていない。

 しかも電波が遠くまで届きにくい以上、今までよりもはるかに多くのアンテナを整備する必要もある。つまり、その整備が進んでいない状況下では、移動体であるクルマにメリットが生まれるはずもないのだ。

三菱電機とNTTドコモは、ビルの壁面に超多素子アンテナシステムを使った5G実験で通信速度27Gbpsを2018年に成功させた(写真提供:三菱電機)
三菱電機とNTTドコモは、ビルの壁面に超多素子アンテナシステムを使った5G実験で通信速度27Gbpsを2018年に成功させた(写真提供:三菱電機)

 そこで政府が進めようとしているアンテナ整備計画が、全国に21万基ある信号機の活用だ。

 信号機であればクルマにとっても電波を捕捉しやすい上に、これを上手くつないでいけば広範囲にわたってスムーズな情報伝達ができていく。

 とくにアンテナの設置場所が飽和状態になっている現状では、携帯電話会社にとっても良い話であることは間違いない。この計画は2020年代なかばごろを目標に整備を終える計画で、そのころにはクルマのコネクテッド化がいまよりも進んでいるものと予測される。

 完全な自動運転は無理だとしても、より高度なアシストによって安心安全かつ快適なドライブが日常となる日もそう遠くはないのだ。

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