ランボルギーニ「ディアブロ」の名前は闘牛ではなかった!! 開発者に聞いた命名理由とは!?

闘牛の名前ではない「ディアブロ」が車名に選ばれた本当の経緯とは?

 投票の前に、マルミローリ氏が車名の候補リストをまとめなければならない。リスト作りこそ、車名選びには重要な過程だ。

 そこで、彼の妻や子供たちを巻き込んで、マルミローリ家総動員での車名探しが始まった。それまでマルミローリ氏は、レースのために世界中を回っていたので、常に家に居ない人だった。

 そんな父親と一緒にクルマの名前を考えることになるとは! マルミローリ家は一丸となって車名探しをスタートした。

 先ずは闘牛の世界から探してみようということになった。闘牛といえばスペイン、ということでスペイン語の辞書を用意。それからは家族中で毎日スペイン語の辞書とにらめっこの日々が続いた。

「名前は音が重要。単語を前後に分けて軽快なリズムに聞こえる言葉、例えば、ウラッコは『ウラ+ッコ』、クンタッチは『クン+タッチ』というように、そのリズム感が記憶に残るんだ」とマルミローリ氏は語る。

 リストのなかには、地方の方言のクンタッチのように彼の故郷であるモデナの方言も入れた。こうしてマルミローリ家で考えたリストには約30の名前が並べられた。

クンタッチの後継モデルとして華々しくデビューを飾ったディアブロ
クンタッチの後継モデルとして華々しくデビューを飾ったディアブロ

 リストに並んだ車名候補は次のとおりだ。

 CHATO、DUENDE、BOLERO、FULGOR、CORREAL、MACHO、VENDAVAL、PLAZA、HONDO、TRADO、PICADOR、ESTRIBO、ROCIO、CANTO、MIRO、DIABLO、VENTAS、TAURUS、RAZA、RABO、RUEDO、FULMEN、LAMBO、MUCHO、RADA、TODO、STAR、ELREY

 マルミローリ氏は、用意したこのリストを当時のランボルギーニの幹部約20名に配った。

 1987年、夏休みに入る前の6月、密かに投票がおこなわれ、結果ダントツの票数で「DIABLO」がトップとなった。

 マルミローリ氏はその結果を当時の最高責任者のノバーロ氏に報告し、彼から承諾を受け晴れて正式な名前となった。

 ディアブロという単語も「ディア+ブロ」と、軽快なリズム感がある。世の中では、ディアブロという車名は、闘牛の名前から取ったといわれているが、実はそこにはちょっとした物語があった。

 ディアブロはスペイン語で悪魔という意味だ。これはマルミローリ一家が辞書を見ながら音感に惚れて選んだだけだった。辞書から選んだときには、まさか闘牛の名前だとは思ってもいなかった。

 後に、ディアブロという単語について詳しく調べたてみたところ、「悪魔」という意味のほかに、なんとディアブロという名前の闘牛がいたことが判明した。しかも果てしなくアグレッシブな闘牛だった。

 1869年、マドリッドの闘牛場で当時一番人気があった闘牛士、Jose De Laraと戦った記録が残されていた。この偶然は、幸運というか必然というか、奇跡としかいいようがなかった。

 1987年6月、その頃は未だクライスラーの直接介入はなかったため、名前に関してはクライスラーは一切関わらなかった。

 ところがロゴの段階になると、ランボルギーニはクライスラー傘下になっていたので、会議には必ずクライスラー側のデザイナーが出席するようになっていた。

 ロゴデザインにはクライスラー側のデザイナー、主にクルマの内装の担当だったビル・デイトン氏と、ランボルギーニ社と外部契約をしていたパガーニ氏が参加。

 1988年7月、選ばれたロゴはクライスラー側のデザインだった。

 残念ながらパガーニ氏が提案したロゴは、材質が鏡である上に工程が難しく、壊れやすいということで却下になったらしい。

 プロジェクト始まって約4年が過ぎた1990年1月21日、ディアブロはモンテカルロで華々しいテ゛デビューを飾った。

 発表後、アメリカではディアブロという名前に対し、ある宗教団体からかなりの抗議があったらしいが、当時の社長のアイアコッカ氏はそれに屈せず、ディアブロの名前を推し通したそうだ。

 クンタッチの陰に隠れてしまっていたディアブロ。1980年代、停滞していたランボルギーニに新風を吹き込み、クライスラーの傘下に入りつつも、ランボルギーニ魂をしっかり受け継いだディアブロ。

 クンタッチの後継モデルは、候補リストにディアブロと名前が載ったときから、〈アグレッシブな闘牛〉となるべく運命づけられていたのかもしれない。

 ディアブロは誕生30年を迎えた2020年、再び「闘牛ディアブロ」に注目が集まっている。

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