ランボルギーニ「アヴェンタドールSV」再評価。ランボ謹製V12を味わうなら「SV」がベスト
アヴェンタドールSVの野太いサウンドだけでも価値あり!
アヴェンタドールSVのスタイリングはスタンダードよりいっそう平べったく、そしてシャープに見える。固定式となったサイドインテークと大型のマニュアル可変(三段階)のリアウイングがユニークで、さらにフロントバンパースポイラーやサイドステップ、そしてリアデュフューザーも大幅なデザイン変更を受けた。
SVJが出た今となってはSVのアピアランスは大人しくみえるが、それがかえって好ましいのだ。それでも空力性能はスタンダードに比べてかなり向上した。ダウンフォース性能アップ(+170%)を中心に、エアロダイナミクス効率の劇的な向上(+150%)を果たしていたのだ。
そのほか、アヴェンタドールに始めてLDS(ランボルギーニ・ダイレクト・ステアリング)とMRS(マグネト・レオロジカル・サスペンション=磁性流体ダンパー)を装備したのもこのSVからで、後のS、SVJへと継承されている。
このSVを初めて試乗したのはスペインのカタロニアサーキットだった。内装のスパルタンさを見るにつけ走り出す前から緊張したことをよく覚えている。
いざエンジンを始動すると、ピットウォールに反響するサウンドがまるで違った。より野太く、よりラウド。乗り心地も明らかに違った。ハードだが、ショックの収まりが早い。弾性ハードサス。ピットロードで早くも前アシが自在に動く感じがした。
コースイン。先導車にくらいつくうち、いきなりかなりのハードドライブとなった。そしてピットロードでの予感はトラックに出て早々に確信へと変わっていく。スタンダードモデルとはまったく性格の違うクルマだ、と。
SVのエンジンパフォーマンスを公道で楽しむことは恐らく無理だ。多少がんばってみたところで、スタンダードとの違いはサウンド以外に感じられないと思う。否、スタンダードでも十分に速いというべきで、なかでも右アシ裏に感じるエンジンの回転(トルクフィール)がたまらない。
SV用ユニットは、高回転域における伸びと力強さがスタンダードとはまるで違う。パワー感を保ったまま8000回転域にまで達するのだ。ハイトーンの絶叫にも力が充ちている。ハードロックヴォーカルに喩えるなら、ロニー・ジェイムス・ディオであった。
トラックでは“たった”50馬力のパワーアップと“たった”50kgの軽量化、という事実がにわかに信じられないほど、パフォーマンスがあがっているように感じられた。
特にコーナリングスピードがスタンダードよりはっきりと速い。タイヤのグリップをきっちり活かせば、フラットな姿勢を保ちつつ、想定より高い速度域で面白いようにコーナーを駆けぬける。コーナー脱出時にはリアのダウンフォースのおかげで安心してアクセルペダル踏み込んでいける。
SVJではここでさらに“見えざる手”で抑えつけられる感覚があって、さらに安心して踏めるのだが、そのぶん面白みに欠けるだろう。
優れた空力性能とタイヤパフォーマンスにくわえて、磁性流体ダンパーのおかげで状況に応じた確かな接地フィールを得つつ、L539エンジンを存分に味わうことができる。SVJが出た今となってもSVに“らしい”魅力があると思う所以だ。
●Lamborghini Aventador LP750-4 SV
ランボルギーニ・アヴェンタドール LP750-4 SV
・車両価格(新車当時価格):5179万2353円
・全長:4835mm
・全幅:2030mm
・全高:1136mm
・ホイールベース:2700mm
・車両重量:1525kg
・エンジン形式:V型12気筒DOHC
・排気量:6498cc
・エンジン配置:リアミッド縦置き
・駆動方式:4輪駆動
・変速機:7速ISR
・最高出力:750ps/8400rpm
・最大トルク:690Nm/5500rpm
・0-100km/h:2.8秒
・最高速度:350km/h以上
・サスペンション:(前)ダブルウィッシュボーン式、(後)ダブルウィッシュボーン式
・ブレーキ:(前)ベンチレーテッド・カーボンセラミックディスク、(後)ベンチレーテッド・カーボンセラミックディスク
・タイヤ:(前)255/35ZR20、(後)3555/25ZR21
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