なぜ頭上から見られる? 定番化する「360度モニター」の仕組みとは
数多くある先進安全装備のなかで、ユーザーの負担軽減で役に立っているのが駐車を支援してくれる「360度モニター」です。クルマの上空から映し出しているような画面が表示されますが、どのような仕組みの装備なのでしょうか。
リアルタイムで撮影しているワケではない!?
近年の運転支援機能のなかで、駐車時などに活躍するのがクルマを頭上から見たようなシステム「360度モニター」です。実際に上空から撮影している訳ではないですが、どのような仕組みになっているのでしょうか。
世界で初めて実用化した日産は、「インテリジェントアラウンドビューモニター」という名称で製品化しています。アラウンドビューモニターでは、ソニーの超広角レンズを搭載した高解像度のカメラに、車載機器メーカーであるクラリオン(旧・ザナヴィ)の画像変換技術が組み合わされています。
自車を上空から見下ろすように捉えることができ、駐車を補助するとして幅広い層のドライバーから人気の装備です。障害物との距離感が掴みやすいだけではなく、いきなり歩行者が近づいてきた場合でも、アラームと注意表示によって瞬時に気付くことができます。
また、後退時の衝突回避システムである「インテリジェントBSI」と連動することで、後方から接近する障害物をセンサーで感知し、自動でブレーキ制御をアシスト。
登場当初は、おもに「エクストレイル」や「セレナ」などに搭載されていましたが、最近ではコンパクトカーや軽自動車まで、オプション設定される車種が増えています。
なお、トヨタは「パノラミックビューモニター」、ホンダは「マルチビューカメラシステム」、マツダは「360°ビュー・モニター」、スズキは「全方位モニター」、ダイハツは「パノラマモニター」、そのほか海外メーカーでも、名称こそ違いますが広く導入されている機能です。
では、上空にカメラがないにも関わらず、なぜこのような映像を映すことができるのでしょうか。
まず、カメラはフロント・リア・両サイド(ミラー下部)の4箇所に設置されています。その撮影映像を、疑似的に真上から見た映像に変換、映し出す仕組みとなっています。
ポイントとなるのが、画面中央に映し出されたクルマ本体の映像です。実は、このクルマの画像はリアルタイムで映し出されているものではなく、あらかじめ撮影された画像を合成しているだけなのです。
周囲の景色だけでなくあえて自車も合成することで、より俯瞰的に見える視覚的な工夫が凝らされています。
また、現時点で未搭載なクルマでも、社外品の後付けが可能となおり、価格帯は10万円前後です。新車購入時に純正オプションした場合と大きな差はありません。
しかし、それぞれのカメラ配線をコントロールユニットに集結させるといった作業が必要になります。スキルのあるユーザーなら比較的簡単に取付け可能とのことですが、スキルがなければ業者に依頼するしかありません。カー用品店などに依頼した場合は、追加で10万円ほどの費用がかかるとのことです。
アラウンドビューモニターについて、日産の販売店スタッフは以下のように話します。
「アラウンドビューモニターはあくまでカメラですので、目視での確認と並行することを心がけて頂きたいです。画面に注視してしまうと、死角の外からスピードの速いクルマが接近した場合に衝突する恐れがあり、過去には事故例の報告もあります。
また、カメラが過度に汚れてしまえば映像がぼやけてしまい、障害物などを見落として物損事故を引き起こす可能性もあります。あくまで目視確認を優先、アラウンドビューモニターは補助機能として、活用することが大切です」
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また、360度モニターの有無は、クルマ選びに欠かせないポイントとなりつつあるようです。
2020年2月10日に発売したトヨタ新型「ヤリス」を扱う販売店のスタッフは、次のように話します。
「ホンダ『フィット』と比較検討したというお客さまで、ヤリスにパラノミックビューモニターの設定があることが決め手になったという人がいました。家族全員が乗るため、駐車に不安のある人でも安心とのことでした」
現段階で、360度モニターはオプション設定がない車種も多く存在します。しかし、安全装備の重要性が増している昨今、定番の装備になるかもしれません。
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