なぜ車の象徴は激減した? 憧れだったボンネットマスコットが無くなる理由
ボンネットの先端で美しく輝く「ボンネットマスコット」は、そのクルマのブランドだけでなく、ブランドが持つ格式を示すシンボルでした。しかし近年では、ボンネットマスコットを採用するクルマは激減しています。なぜボンネットマスコットは採用されなくなったのでしょうか。
ボンネットマスコットを見なくなったワケ
クルマのボンネット先端で美しく輝く「ボンネットマスコット」は、ブランドが持つ格式を示すシンボルでした。
しかし近年では、ボンネットマスコットを採用するクルマは激減しています。なぜボンネットマスコットは採用されなくなったのでしょうか。
ボンネットマスコットとは、自動車メーカーのロゴやシンボルを立体化し、ボンネットの先端中央部に取り付けられるアクセサリーのひとつです。
平面的に作られるエンブレムは車内から見えませんが、ボンネットマスコットは立体的に作られるため車内からも見え、先端部の中央に設置されることから、クルマの先端を把握する目安にもなります。
また、ブランドのシンボルとして一部の高級車に採用されるため、羨望の眼差しを受ける存在でもありました。
そんな高級車に積極的に採用されていたボンネットマスコットですが、近年は見かけなくなりました。これは2001年6月に、クルマの国際基準調和の一環として道路運送車両の保安基準等が改定され、国際基準である「乗用車の外部突起(協定規則第26号)」が導入されたことが要因です。
改定された「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」では、2009年1月1日以降に登録したクルマについて、「自動車の外部には、衝突時又は接触時に歩行者等に傷害を与えるおそれのある形状、寸法、方向又は硬さを有するいかなる突起を有してはならない」と規定されています。
多くのボンネットマスコットは、この告示に抵触する恐れがあっただけでなく、メーカーとして歩行者保護の姿勢を示す観点からも採用を取りやめる例が増え、現在では街中で見ることも少なくなりました。
そんな絶滅が危惧されるボンネットマスコットは、現在でもメルセデス・ベンツの「Sクラス」や「Eクラス」の一部グレードで採用されているほか、ロールスロイスでは全車種で採用され続けています。これらの車両は法令には抵触しないのでしょうか。
法令では、「装飾部品であってその支持部から10mmを超えて突出しているものは、その先端部分に対し、装飾部品を取り付けた表面に平行な平面内のあらゆる方向から10daNの力を加えた場合に、格納する、脱落する又はたわむものでなければならない」と明記されています。
また、「装飾部品は、格納、脱落又はたわんだ後に残った突出量が10mm以下でなければならない」と規定されており、表記内の10daNとは、およそ10kgを荷重した状態です。
現在、メルセデス・ベンツで採用されているボンネットマスコットは可倒式となっており、衝突時に倒れることで衝撃を緩和します。また、倒れたときの突出量が10mm以下となっているため、法令に抵触しないようになっています。
また、ロールスロイスのボンネットマスコットは、マスコットへの衝撃を検知するとボンネット内に格納されるようになっています。
盗難防止としても実装された機能ですが、ロールスロイスのクルマにボンネットマスコットである「フライングレディ(スピリット・オブ・エクスタシー)」はなくてはならない存在です。
複雑な機構を搭載することなろうとも、ボンネットマスコットを採用し続けるロールスロイスの意地を感じます。
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