なぜ極秘開発車両なのにお披露目? カモフラージュ車が街中を走行する理由とは
新型車を開発する際に、カモフラージュを施したテストモデルが目撃されることがあります。本来は、極秘になるはずのクルマがカモフラージュ柄の状態で人目に触れる街中を走る理由とはなんなのでしょうか。
全体を見せて詳細を隠すテストラッピングの広告戦略
開発段階のクルマをサーキットや街中で極秘にテストする際、デザインや外観パーツがわからないようにカモフラージュを施します。
その多くは、渦巻き模様やモノクロの迷彩がほとんどですが、なかにはカモフラージュ柄を逆手にとって宣伝カーとして利用しているメーカーも存在します。
一見、ただのカモフラージュ柄のようですが、各社にはそれぞれ意味のあるデザインのようです。どのような意図でテストモデルはカモフラージュされているのでしょうか。
カモフラージュ柄テストモデルは、車体外観をラッピングで覆っています。従来は、宣伝文句やイラストなどを描き、宣伝用として街中を走らせるという形で古くから存在します。
当初は、ペイントを直接クルマに書き込んでいましたが、宣伝期間が終わったあとに塗り直さなければいけませんでした。そのような背景のなかで、1990年代中盤にラッピングという技術が誕生した結果、表現の自由が飛躍的に発展し、現在のテストカーに採用されるようになったのです。
ではなぜ、市松模様や渦巻き柄といったデザインになったのでしょうか。第一の理由は、車両デザインのディテールを伏せることです。極秘開発のクルマが人目に晒された場合でもラッピングを施すことで、デザインやパーツの細かな部分をカモフラージュできます。
基本的に開発車両は、テストコースで走行させた後、一般道を走ることになります。模様が細かく、スピードが出るほどデザインがぼやけ、全体像がつかみにくくなるのです。
さらに、カモフラージュ柄には宣伝効果を狙った要素も存在します。広告代理店の自動車メーカー担当者は「テストモデルによくある奇抜なデザインのクルマが街中で走行すれば、目立って仕方ないと思うかもしれませんが、それもメーカーサイドの狙いのひとつでもあります。
謎のクルマを走らせることで、『なにか新しい車が発売されるらしいぞ』という期待感をユーザーに与えることにつながるほか、サーキット上で走らせても実際のディテールはつかみにくいため、そのわからなさがユーザーの興味を引き立たせます」と話します。
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このような宣伝手法を「ティザー広告」「覆面広告」と呼び、商品の詳細をあえて知らせず注目を集めるという、自動車業界では広く使われている方法です。
代表例として、17年ぶりに復活を果たしたトヨタの新型「スープラ」があります。スープラの日本正式発表は2019年5月17日でしたが、それ以前に東京オートサロンやさまざまなイベントで一般ユーザーの前で、幾度となくカモフラージュモデルがお披露目しています。
この手法は、欧州の自動車メーカーでよく見られ、あえて人が多く集まる場所に出向きテストモデルをアピールしているのです。大手自動車メーカーの関係者は、「スープラのようなインパクトがあるクルマは、クルマ好きの興味を惹かなくてはいけません。そのため、クルマ好きが集まるイベントなどで露出することで大きな宣伝効果が期待できるのです」
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