フォルクスワーゲン新型「Tクロス」に先行試乗 これは想像以上にイイクルマ?
完成度のレベルは抜群
「コレは売れる」とおもった本当の理由、それは走りにこそありました。日本導入が予想されるのは1リッターターボの3気筒ガソリンエンジンで、本国には2種類の出力が用意されていますが、高出力のほうに7速デュアルクラッチDSGの組み合わせが来るのではないかと思われます。
最高出力は85kW/115ps。数字だけ見れば「え?たった1リッターターボ?たった115ps?」と思ってしまう気持ちはわかります。しかし、プレスリリースによれば0-100km/h加速10.2秒となかなかのもので、実際に走らせるとその頼り甲斐に感激すること間違いなしです。
試乗シーンは、空港のある島の左サイドから、ワインディングや小さな町を超えつつ高速道路を含めたルートで島の右サイドまで横断する、というものでした。
高速道路はきちんと整備されて日本の路面と同等、もしくはそれ以上に美しい舗装面でしたが、田舎町に入るとアスファルトは荒れ、路肩もほぼ取られていないほどの農道となります。
高速道路では、そのわずか1リッターのエンジンがもたらすパワフルな加速に驚きました。いや、パワフルというと語弊があるかもしれません。Tクロスのそれはフレンチ系のドッカンターボのような“踏み出しから背中を蹴られるようなターボを感じる”といった性格のものではなく、「あれ?気付いたらめっちゃスピード出てるやん!」的マイルドなトルクバンドなのです。
「あら、あなた繊細に見えて意外に頼りになるわね」なんです。だから、正直に言えばエンジン自体がメチャクチャ楽しい性格を持っている、って類いのモノではありません。
むしろ、市街地なんかでブレーキを踏んでからの低速での再加速、だいたい1800回転あたりからアクセルを踏み足して行くときなんかは、デュアルクラッチのあんまり良くない特性も悪さして、ちょっとスカスカ感を感じることも、またそのときのカラカラ音が気になることもあるでしょう。
しかし、そのネガティブをすべて凌駕して素晴らしいのが、サスペンションストロークの豊かさ、深さ、減衰の正確さなのです。
先述のスカスカ感のときも、ピッチさせずにキャビンはフラットなまま。田舎道のガタガタ舗装もスタタンスタタンと軽やかに乗り越えて見せ、しかも微塵も揺り返しを残さない。
コーナリングではその素直な性格を遺憾なく発揮し、ライントレース性が抜群。むろんスポーツモデルのようにガチガチに固めているワケではないのに、思ったようにスルスルとコーナーを曲がっていけるのですから、感動しました。しかも静粛性もお見事です。
この走りの仕上がりは、正直国産車にない完成度の高さのレベルにあります。「ああ、やっぱドイツ車ええわあ」となる、カッチリ感とスッキリしたハンドリングの妙、最高のバランスがちゃんとTクロスにも用意されていました。
ちなみに、導入予想価格は200万円台後半から。この戦略的なプライスタグなら、これ以上高くならないことを祈りながら、年内導入を待ちましょう。
【了】