まるで雪面の飛び魚! 新型「マツダ3」進化のポイントは骨盤だった?
ポイントは「骨盤」
さらにマツダは、シートの形状にもこだわりました。そのキーとなるのは「骨盤」。人間が歩くときの姿勢を参考に、骨盤が立つようなシートを作ったことで、路面からのインフォメーションを自然に、素早く感じ取ることが可能になったというのです。
こうした進化を検証する試みとして当日は、ふたつの面白いプログラムが用意されました。ひとつは体感を鍛える健康器具(レールにシートが装着されており、座ると左右に揺れる)を現行/新型「マツダ3」の助手席に装着し、時速5km/hにも満たない速度で走り比べるというもの。
結果としては新型「マツダ3」の方が、シートの揺れ方が圧倒的に穏やか。カーブはおろか微妙な凹凸のある直線でも、揺れを予想しながら体勢を整えることができました。
また、シートポジションの違いによって、運転の精度が変わるという実験も行いました。骨盤を適切に立てた状態で運転したGPSデータと、敢えてヒップポイントを前にずらして運転したデータをグラフで見比べ、同じコースでハンドルやアクセル、ブレーキ操作に違いが出るかを可視化したのです。
残念ながら筆者(山田弘樹)は、こうした不安定な状況に慣れており、グラフに大きな違いは出ませんでした。しかし運転しやすさでは確かに大きな差がでています。
骨盤を寝かせた状態は体を支えにくく、太ももや両脇を絞るようにして手足の動きを規制する(大きく動かしすぎないようにする)必要があるから、リラックス度合いが遙かに違うのです。
今回は、速度域が低く、ハンドル操作量も少ない雪上路面だったから同じように運転することができましたが、もっと高いGが発生するテストであれば、正しく座ったときとの差は大きくグラフに出ていたことでしょう。
このようにマツダは、新世代車輌において人間中心のクルマ造りをより強く押し進めています。その鬼気迫る努力はときに見る者を呆れさせるほどですが、それこそがすなわちデフレ日本に住む我々に『実際に買える良質車』を提供できている理由だと今回の試乗で思いを強くしました。こうした日本らしさ溢れるクルマ造りは、とても誇らしいと思います。
【了】
Writer: 山田弘樹(モータージャーナリスト)
自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。レース活動の経験を活かし、モータージャーナリストとして執筆中。並行してスーパーGTなどのレースレポートや、ドライビングスクールでの講師も行う。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。