なぜ人気? 国内2大巨頭SUV トヨタ「C-HR」とホンダ「ヴェゼル」は似て非なる存在
総合的なパッケージにも両車の個性が存在
しかし、両者の大きな違いはそれだけではありません。居住性や荷室などのパッケージングにもキャラクターの違いがでてきます。
「C-HR」でもドアが後席にもついているものの、キャラクターは『個性を強めたクーペ』に近く、後席も大人が座るのに窮屈とまではいきませんが、それほど広くありません。
荷室も同じジャンルに属するマツダ「CX-3」ほどは狭くありませんが、リヤシート使用時の容量は318L(VDA式計測)で、「ヴェゼル」に比べると393L(ハイブリッドFF車)と狭いのです。
「C-HR」から「ヴェゼル」に乗り換えてみると、後席や荷室はその広さに驚きます。後席は足元(ひざまわり)に圧倒的なゆとりがあり、広々感を実感できる空間。また荷室は、SUVとは思えないほど床が低くて空間が広いから、コンパクトSUVでナンバーワンの実用性の高さを誇っています。
同じようなボディサイズなのに、どうして「ヴェゼル」は小さな車体に広い後席と荷室を用意できたのでしょうか。実は、「ヴェゼル」が巧みなパッケージングを成立できたのには、大きな理由があります。それが『センタータンクレイアウト』と呼ぶホンダ独自のアイデア。
通常は、後席の下あたりに置かれる燃料タンクを運転席/助手席の下に組み込んでいるのですが、燃料タンクの制約がなくなることで、後席の配置や設計の自由度が高まり、高効率のパッケージングを実現できているのです。
一方で、「C-HR」の魅力はデザインの個性の高さといえるかもしれません。かつて筆者(工藤貴宏)は、「C-HR」の開発エンジニアから『なにより個性的なスタイルを重視した。そのため実用面では犠牲となっている部分もあるが、それを最小限に抑えつつ思い描く外観のデザインを成立させることを優先させた』と教えてもらいました。
また、「ヴェゼル」に比べると「C-HR」はワンクラス上のプラットフォームを使っているので操縦安定性にゆとりがあるのも、クルマ好きにとっては見逃せないポイント。
いま、まさに百花繚乱といえるコンパクトSUVクラス。そのなかでも、「C-HR」のように個性的なデザイン重視のモデルや「ヴェゼル」のように実用性が際立つモデルがあります。
間違いないのは、幅広い選択肢があり、そのなかから自分の好みや使用環境に応じて選べるのは、クルマを選ぶ立場からは歓迎すべき状況だということです。
【了】
Writer: 工藤貴宏
1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに寄稿している。執筆で心掛けているのは「そのクルマは誰を幸せにするのか?」だ。現在の愛車はマツダ CX-60/ホンダ S660。