需要増加? 日本の98%がAT車時代 なぜかMT車が徐々に増えているワケとは
新しいトレンドに! MT設定すれば注目されてイメージリーダー
アテンザの発売直後には、6速MT車が国内販売総数の13%を占めるなど、人気を高めました。これが一種の成功体験になり「MTを設定すれば注目されてイメージリーダーになる」という見方が自動車業界に生まれています。当時のマツダはディーゼルもヒットさせており、新しいトレンドを示しました。
この後、マツダはアクセラ(発売は2013年)、デミオ(2014年)、CX-3(2015年)という具合に、各車種に6速MTを設定しています。この流れが、先に述べたカローラスポーツなどにも受け継がれたわけです。
現在の日本ではATや無段変速のCVTが主力になりましたが、MTを求めるユーザーがいなくなったわけではありません。とくに若い頃にMTのスポーティモデルを運転した経験のある中高年齢層には、ギアチェンジを積極的に楽しみたいドライバーも多いです。しかし自動車メーカー各社は、この需要を見過ごしてMTを大幅に減らした結果、運転を純粋に楽しみたいユーザーから少数のMT車が注目されることになったわけです。
日本の場合、何かひとつの流行やトレンドが生まれると、そこへ一気に突き進む傾向が見られます。クルマのトランスミッションも同様で、AT比率が増えると圧倒的多数を占め、MTは一部のスポーツカーと低価格車に限られるようになりました。一連の6速MTは、その揺り戻しともいえるでしょう。
MT設定車を増やす理由に、新しい傾向を探す試みのひとつでもあります。MTは古いメカニズムともいえますが、流行は常に動いています。これを掘り起こす一環でもあるでしょう。
今のクルマは運転支援技術の機能や各種の通信機能に力を入れ、メカニズムでは環境性能の優れたハイブリッド車や電気自動車が話題になります。このような時代だからこそ、運転の原点ともいえる、ギアチェンジの必要なMTが注目されている面もあるでしょう。いろいろな価値観に応える日本車であって欲しいと思います。
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Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。