全長4m切りの新型「“5ドア”スポーツカー」日本でまもなく登場! 「4WD」&“2+2”も可能な新シャシー開発! “ポルシェより少し下”を狙うアルピーヌの新戦略とは
フランスのスポーツカーブランド、アルピーヌは2026年9月24日、日本でメディアを招いたプレスカンファレンスを開催しました。来日したフィリップ・クリエフCEOは、アルピーヌの現状や今後のブランド戦略について語りました。どのような未来を描いているのでしょうか。
70年以上の歴史を持つアルピーヌ、販売も好調に
アルピーヌは2026年9月24日、都内でメディアを招き、現在、そして未来のアルピーヌについてプレスカンファレンスを実施しました。当日は、WEC(世界耐久選手権)の開催に合わせて来日していたフィリップ・クリエフCEOも出席。そこで語られた内容をもとに、アルピーヌの今後について考えてみたいと思います。

まずはアルピーヌの歴史を簡単に振り返っておきましょう。アルピーヌの創設者ジャン・レデレは、もともとフランスのディエップで父親からルノーのディーラーを受け継ぎ、経営していました。
その関係もあり、ルノー「4CV」をチューニングしてモータースポーツに参戦。1952年にはイタリアの「ミッレ・ミリア」でクラス優勝を果たすほどにまで完成度を高めていきました。また、1951年と1952年にはル・マン24時間レースにもエントリーし、1952年には17位で完走しています。
そんなレデレがアルピーヌを立ち上げたのは1955年のこと。これまでの経験から4CVのポテンシャルを高く評価し、これをベースにミケロッティがデザインした「A106」を登場させました。
その後、ルノー「ドーフィン」をベースにした「A108」へと移行し、ルノーが「R8」をデビューさせると、それに合わせてアルピーヌもR8をベースにした「A110」を登場させます。こうしてルノーのモデル変遷に合わせ、アルピーヌも成長していったのです。
ここで触れておきたいのがエンジンチューニングです。アルピーヌのエンジンには、エンジンの魔術師とも呼ばれ、特に小排気量エンジンのチューニングでは比類する者がいなかったアメディ・ゴルディーニも関わっていました。そのため、当時のアルピーヌの性能は際立っていたのです。
1962年に登場したA110は、その後徐々に排気量を拡大。最終的には1800ccにまで排気量を増やし、どちらかというとGT的な要素も強めていきました。その流れを象徴するのが、1971年のジュネーブモーターショーで発表された「A310」です。それまでのアルピーヌとは一線を画し、GT色を強く打ち出したモデルでした。あえてこの方向に舵を切ったのは、当時のアルピーヌがアンチポルシェとして、欧州のスポーツカーメーカーとしての地位を強固なものにしたかったからではないかと思われます。
その後もアルピーヌはこの路線を続け、「V6ターボ」「A610」へと発展していきました。もちろん、モータースポーツを忘れたわけではありません。ル・マン24時間レースをはじめ、さまざまなレースに参戦し、数々の勝利を収めてきました。しかし1995年、アルピーヌは一度その幕を閉じます。そして2017年、第2世代となるA110が登場し、現在に至るのです。
さて、そんなアルピーヌですが、近年の販売は好調です。2025年の世界販売台数は1万970台で、前年比139.2%増を達成。2026年も上半期だけで8216台を販売し、前年同期比67.5%増を記録していますので、好調といっていいでしょう。
この要因として挙げられるのが、2024年にデビューした新型「A290」です。ボディサイズは全長3997mm×全幅1823mm×全高1512mmと、全長4mを切るコンパクトなサイズが特徴。5ドア・5人乗りの実用性を備えながら、アルピーヌらしいスポーティな走りを追求したモデルです。販売全体の約75%を占めるといい、2025年に登場したスポーツファストバック「A390」も、その後押しをしています。
一方、第2世代のA110は約2万8000台を生産し、2026年6月をもって生産を終了。日本には約2000台が輸入されました。なお、A290については2026年内の日本導入が予定されており、ルノーの新型「5(サンク)」と同時発表になる模様です。また、本国ではA290やA390の購入者に他ブランドからの乗り換えが多く、A290ではその割合が約80%に上るといいます。つまり、新規顧客の獲得という面でも、大きな役割を果たしているわけです。
こうしたなか、今回来日したクリエフCEOは、今後アルピーヌを成長させるために「プロダクト」「ネットワーク」「ブランド」という3つの柱を掲げると説明しました。プロダクトは文字通りアルピーヌのラインナップ、ネットワークは販売拠点、そしてブランドは、アルピーヌという存在をどのように定義するかということです。
では、それぞれについて見ていきましょう。まずプロダクトについては、大きく3つのラインナップがあるといいます。ひとつ目は、これまでのアルピーヌを彷彿とさせるクルマたちです。
例えば第3世代となる次期A110や、パリモーターショーで発表された「A310ビジョン」などが挙げられます。これらは、後述する「APP(アルピーヌ・パフォーマンス・プラットフォーム)」を使った、新世代のスポーツカーとして位置づけられます。
ふたつ目は「スペシャルプロジェクト」です。これは「お客様の拡大を目的にするとともに、ブランドの認知度を高めていくこと」を狙ったもので、今後F1に注力することでブランドの認知度を拡大するとともに、「A110 ULTIME(ウルティム)」の後継にあたるような、特別で高性能なモデルなどが含まれます。こうしたモデルでは、顧客の好みに合わせたパーソナライゼーションなども考えられているそうです。
そして3つ目が「日常を非日常へ」という考え方に基づくモデルです。「現在のアルピーヌよりも、多目的で使えるような製品」とされ、A290やA390などがこれにあたります。従来のスポーツカーだけにとどまらず、日常生活のなかでもアルピーヌの魅力を楽しんでもらおうというわけです。
続いてネットワークです。現在アルピーヌは世界25か国に251店舗を展開していますが、2026年末までに300店舗へ拡大させたいとのこと。販売網については、大きく2つのカテゴリーに分けていく考えです。基本的には、ルノーの販売拠点を通じてより多くの顧客との接点を増やし、例えばA290のようなモデルを販売することを想定しています。
一方、次期A110などのアイコンモデルや、より特別な高性能モデルについては「エクスクルーシビティ」と呼ぶ専用の販売チャンネルで扱う構想です。クリエフCEOは「よりエクスクルーシブなモデル、次期A110やアイコンモデルなどはエクスクルーシビティというチャンネルで販売をしたいと考えています。
ただしこれについては多少の時間はかかると思いますけれど」と説明しました。誰もが気軽に接することのできるモデルと、特別な顧客に向けたモデルとで販売の仕組みを分けることで、ブランド全体を成長させていこうという考えなのでしょう。
「ポルシェより少し下」を目指す理由とは? 次期A110の新技術にも注目
そして3つ目となるのが、ブランドの構築です。そのためにアルピーヌが挙げたのは、「DNAの継承」「エクスペリエンス体験」「ブランドプレゼンテーション」という3つの要素でした。まず、アルピーヌのDNAについては、初代A110を踏襲した軽さ、そして軽やかさを重視したクルマづくりだといいます。

クリエフCEOは「軽いことが非常に大切です。これはクルマとしての重量が軽いことも大切であると同時に、軽やかさがあることが重要です」と語ります。先日、富士スピードウェイで開催されたWECで、A110Sのホットラップに参加する機会がありましたが、その軽快さと回頭性は図抜けていると感じました。こうした走りの魅力が次世代モデルにも踏襲されるのであれば、喜ばしいことです。
続いてエクスペリエンス体験は、単にドライビングを楽しむことだけではありません。ユーザーがアルピーヌと接する販売店などでの体験も含まれており、ショールームの設えはもちろん、接客なども重要視していくというのです。そして最後のブランドプレゼンテーションでは、「サヴォアフェール」という言葉が登場しました。
サヴォアフェールとは、フランスの職人による匠の技を指す言葉で、オートクチュールなどのファッションの世界でも使われています。クリエフCEOは、こうしたフランスならではの匠の技を駆使したスポーツカーとして、「フランスの本物のプレミアムなスポーツカーを目指します」と語りました。
しかし、初代A110を知る身としては、この「プレミアム」という言葉が少し引っかかりました。というのも、アルピーヌといえばモータースポーツを背景に、軽量化のために無駄な装備をそぎ落とし、純粋に走るためだけにこだわったクルマづくりをしてきたブランドだからです。そんなアルピーヌが、なぜあえてプレミアムを目指すのでしょうか。そこで、クリエフCEOに質問してみました。
すると「スポーツカー市場のメインストリームよりも確実に上の位置でありながら、ポルシェよりも若干下ぐらいのところを狙っていきたい」というコメントが返ってきました。つまり、アルピーヌは軽快な走りにこだわるという理念はそのままに、それだけではなく、フランスならではのラグジュアリーさも感じさせるスポーツカーを目指しているというのです。
ここでもうひとつ気になったのが、同じフランスのプレミアムブランドである「DS」との違いです。DSもまたサヴォアフェールを掲げ、フランスらしい高級感を追求しています。そこで改めてクリエフCEOに聞いてみると、「DSは快適性を追求したクルマ」であるのに対し、アルピーヌはあくまでもサヴォアフェールをまとったスポーツカーなのだと強調しました。なるほど、アルピーヌが目指すのは、単なる高級車ではなく、軽やかな走りを中心に据えたプレミアムスポーツカーというわけです。
とはいえ、その考え方が実際のクルマにどのように表現されるのか、まだ具体的には見えていません。今後のモデルでどのような答えが示されるのか、注目したいところです。
さて、そんなアルピーヌを率いるクリエフCEOは、これまで一貫して技術畑を歩んできた人物です。ミシュランをはじめ、フィアット、アルファロメオ、フェラーリなどを歴任。かつては日本にも駐在していたことがあるそうです。そこで、次世代スポーツカーの開発に向けた新たな車両基盤「APP(アルピーヌ・パフォーマンス・プラットフォーム)」についても聞いてみました。
APPはオールアルミニウムのシャシーを基本とし、バッテリーパックをフロントとリアに分割して搭載することも可能な構造です。つまり、後輪駆動だけでなく、4WD(AWD)も視野に入れているわけです。
基本的にはモーターと駆動システムをリアに配置するレイアウトですが、説明のなかではエンジンを搭載する可能性にも言及がありました。電動化を進めるアルピーヌだけに、エンジンという言葉が出てきたのは少し意外です。ただし、具体的なエンジン搭載モデルの計画が発表されたわけではありません。
また、サスペンションにはアルミニウムを使用し、ドライビングポジションはあくまでも低い位置に設定されるといいます。基本となるのは2人乗りのスポーツカーですが、ホイールベースを延長することで「2+2」の4人乗りにも対応できるとのこと。
さらに、クーペだけでなくコンバーチブルも考えられており、幅広いモデルへの展開を視野に入れています。その後のパリモーターショーで公開された「A110スカルプチャ」や「A310ビジョン」も、このAPPを用いる新世代モデルの方向性を示す存在として位置づけられています。
こうして見ると、次期A110だけではなく、今後のアルピーヌのラインナップがどのように広がっていくのか、楽しみになってきます。
最後に、少し私見を付け加えておきたいと思います。アルピーヌは、あくまでもルノー傘下のブランドです。そうすると、どうしても気になるのがルノーの意向です。というのも、これまでルノーが持っていたスポーツブランドの扱いを振り返ると、少々気になるところがあるからです。
例えば「ゴルディーニ」はどうなったのでしょうか。1960年代から1970年代にかけては、エンジンチューニングによってモータースポーツで活躍し、「ドーフィン ゴルディーニ」「8 ゴルディーニ」「12 ゴルディーニ」といった市販モデルも存在していました。
その後、先代「トゥインゴ」や「ウインド」では、ゴルディーニのブランドイメージを外観や内装に取り入れたグレードが登場しましたが、いつの間にか姿を消してしまいました。
さらに近年では、モータースポーツや高性能モデルで名を馳せてきた「ルノー・スポール」という名称も姿を消し、その役割をアルピーヌが担う方向に進んでいます。アルピーヌにしても、第2世代A110の登場以降、限定モデルなどは展開してきましたが、ブランド全体の存在感をどこまで高められたのかという点では、まだ疑問も残ります。
果たしてルノーは、アルピーヌというブランドをどこまで大切に考え、育てていくのでしょうか。もちろん、いちアルピーヌファンとしては、これからの盛り上がりに大いに期待したいですし、応援したい気持ちでいっぱいです。
軽さと走りへのこだわりを守りながら、フランスならではのプレミアムなスポーツカーブランドを目指すアルピーヌ。その未来がどのようなクルマによって形づくられていくのか、注目したいと思います。






























































