「乗ればわかる“ごく普通”の車?」 身近な「電動車」何が違う? ガソリン車との差は? 色々聞いてみた
街中で見かける機会が非常に増えた「電動車」。一口に電動車と言ってもHEVやPHEV、BEVなど様々な種類があり、市場の動きや特徴はそれぞれ異なります。今回は車載用角形リチウムイオンバッテリーを手掛けるプライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社に取材を実施。電動車の基礎知識からガソリン車との違い、今後の見通しまで詳しく解説します。
身近になりつつある電動車とは
最近、街を走るクルマを見渡すと「電動車」を見かける機会が当たり前のように増えてきました。
では、電動車にはどのような種類があり、現在の市場動向はどのようになっているのでしょうか。

日本政府(経済産業省)は「乗用車は、2035年までに、新車販売で電動車100%を実現」という目標を掲げています。
こうした中、自販連が公表した日本市場での2025年年間販売台数データ(軽自動車を除く登録車)を見ると、EV(電気自動車)が約4万台、PHEV(プラグインハイブリッド車)が約4万1000台であるのに対し、HEV(ハイブリッド車)は約153万台に達しています。
シェアの割合で見ても、2025年通年でHEVが全体の約60%という大きな割合を占めているのに対し、EVは約1.6%、PHEVは約1.6%となり、現在の日本国内においてはHEVが圧倒的な中心となっています。
こうした市場動向や、HEV・PHEV・BEVの違いなどを、電動車の心臓部とも言えるバッテリーの開発・製造を手掛けているプライムプラネットエナジー&ソリューションズ(以下、PPES)に話を聞きました。
PPESは、トヨタ自動車とパナソニック ホールディングスが共同で設立した車載用電池(バッテリー)の合弁会社となります。
自動車をはじめとした車載用の角形リチウムイオンバッテリーを開発・製造しているほか、各種コンポーネントやシステムなども幅広く展開。なかでもHEV用バッテリーにおいては、20年以上の出荷実績と世界トップシェアを達成している点が特徴です。
電動車の違いについて、同社コーポレートコミュニケーション部 部長の木村毅典氏は次のように語ります。
「一般的に、電池が搭載されていれば『電動車』と表現されます。主にハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)、そして水素で発電する燃料電池車(FCEV)も電池が必要なため、電動車の枠組みに入ります。それぞれ用途や使い勝手が異なりますが、今や多様な形で普及が進んでいます」
一口に「電動車」と言っても、HEV、PHEV、BEV、FCEVなど複数の種類が存在し、それぞれの仕組みや特徴は大きく異なります。
まず、HEV(Hybrid Electric Vehicle:ハイブリッド車)は、エンジンとモーターの2つの動力源を効率よく組み合わせて走る自動車です。PPESでは、HEV向けを中心に「高出力型バッテリー(ハイパワーバッテリー)」を供給しています。このバッテリーは高出力密度と優れた充放電特性を備えているのが特徴です。
次に、PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle:プラグインハイブリッド車)は、HEVに外部からの充電機能を加えた自動車です。
日常の近距離移動は電気だけで走り、長距離移動時にはエンジンを併用するといった柔軟な使い方が可能です。
そして、BEV(Battery Electric Vehicle:電気自動車)は、ガソリンを一切使わず、車載バッテリーに蓄えた電気のみでモーターを駆動させて走る自動車です。
このほか、水素と酸素の化学反応によって発電した電気で走るFCEV(Fuel Cell Electric Vehicle:燃料電池自動車)も電動車の一角を担っています。
それぞれのタイプが持つ役割や技術的な特徴について、木村氏は次のように説明します。
「HEVは基本的にガソリンで走り、低速域やエンジンの苦手な領域を電池でカバーして燃費を向上させることが目的です。
一方、PHEVとBEVは充電できることが大きな特徴です。PHEVは普段の短距離移動はEVとして走り、長距離移動の際はガソリンを使ってハイブリッド車として走ることができるため、1台で様々な用途に対応したい人に適しています。
BEVは充電のみで走るため、ガソリンスタンドに行く必要がなくなり、自宅などで充電するという生活サイクルに変わります。
また、搭載する電池も使い方が異なります。エンジンが主役のHEVは、必要な時に瞬時に力を出す『出力』や、常に充放電を繰り返すための『サイクル性能(寿命)』が求められます。
一方、電気で走り続けるBEVは、出力を継続的に維持することや、一度の充電でどれだけ長く走れるかが重視されるため、用途に合わせて電池の設計を変えています」

以前は先進的な技術というイメージが強かった電動車ですが、現在では私たちの身近な生活の中にすっかり定着しています。
日本国内の市場データが示している通り、新車販売におけるHEVの割合が6割を超えていることから、普段の通勤やショッピング、休日のお出かけなどの日常的な場面で接する乗用車の多くが電動車となっています。
静かに発進するクルマや、街中の駐車場・商業施設で見かけるようになった充電スタンドなど、街の景色そのものが電動車を中心としたものへと変化してきました。
毎日の暮らしや街中で電動車が身近になったと感じる変化について、木村氏は次のように話しています。
「一般の人が変化を感じるタイミングとしては、例えば郵便局や宅配便の車が電動バイクやEVに変わり、朝の配達などが静かになったことが挙げられます。街中を頻繁に走る商用車がEVに変わってきたことは、皆さんが最初に変化を感じる部分ではないでしょうか。
また、最近では日本でもBEVが増えてきており、車が近づいてきてもエンジン音がなく気付かなかったという体験を通じて、身近になったと感じる人もいると思います。
私自身が便利だと感じるのは、アイドリング時にエンジンが全く動かない点です。例えば、夜間の送迎などで住宅街において車内で待機する際、BEVであればエンジンをかけずに快適な状態で過ごすことができます。こうした点は、電動車ならではの大きな特徴だと思います」
ドライバーや同乗者が実際に乗った際、従来のガソリン車と電動車の間で実感しやすい違いにはどのようなものがあるのでしょうか。
主な違いとして挙げられるのが、乗り心地や静粛性、環境面、維持費といったポイントです。
エンジン音や振動が抑えられたモーター走行による優れた静粛性は、車内での会話や音楽鑑賞をより快適なものにします。また、スムーズな加速感や走行安定性も電動車ならではの乗り心地につながっています。
さらに環境面においては、走行時の排出ガスを低減またはゼロにできるため、地球環境への負担を減らすことができます。
ガソリン車に対する環境意識の高まりから、環境に配慮した選択として電動車を選ぶユーザーも増えています。維持費の面でも、走行にかかる燃料代や電気代、定期的なメンテナンス費用など、従来のガソリン車とは異なる特徴を持っています。
ガソリン車との具体的な違いや、車両開発におけるパッケージングの視点について、木村氏は次のように話しています。
「ガソリン車と電動車の分かりやすい違いとして、動力性能が挙げられます。アクセルを踏んだときのレスポンスや加速感が大きく異なります。
モーターは動き出しから同じトルク(力)を出したまま回転できるため、動き出しの加速や高速道路の合流など、スムーズな加速が必要な場面でのレスポンスが非常に優れています。
また、静粛性も異なります。エンジン音がなくなった分、ロードノイズ(タイヤの音)が気になりやすくなるため、車体側の工夫がより必要になっています。
さらに、電池メーカーとしては自動車メーカーが求める車としての剛性を実現するために『電池をどのように収めるべきか』を綿密にすり合わせています。
特にBEVは電池が大きいため、車体に合わせてどうパッケージングするか、衝突時の安全性をどう確保するかなどを自動車メーカーと連携しながら開発を進めています」

最後に、これから数年から10年というタイムスパンで、私たちの乗るクルマや電動車を取り巻く環境がどのように変化していくのか、将来的な見通しについて探っていきます。
足元ではEV市場に停滞が見られるものの、中長期的には「EVシフトが進展する」という見方が大半を占めています。その背景には、今後の技術革新と供給体制の強化があります。
まず、多くの既存OEMは今後、HEVをはじめとする電動車のラインナップを拡充させる計画を進めています。
また、2030年頃までには、全固体電池や液系のリチウムイオンバッテリーをはじめとした「性能の向上と価格の低減の双方を実現した蓄電池」が十分に供給されるようになると予想されています。
これにより、BEVの航続距離が大幅に伸びるなど商品力が飛躍的に向上し、同時に課題とされていた中古車としてのリセールバリューも向上すると期待されています。
また、すでに各社において蓄電池への大きな投資が実施されており、状況によって投資の時期が後倒しになる可能性はあるものの、BEV生産そのものが中止されることは考えにくい状況です。将来的に魅力ある新型モデルが市場に上市され、競争力の高いBEVが販売される見通しとなっています。
ある消費者意識の調査においても、所得や年代、居住地域などによる差はあるものの、「次に買う車としてBEVを望む消費者」が一定数存在することが分かっています。
これらの要素を総合すると、中長期的にはEVシフトという大きなトレンドに変化はないと言えます。

これからの電動車社会の展望とバッテリー技術の未来について、木村氏は次のように思いを語りました。
「車の進化という観点では、自動運転や安全機能の強化が進んでいくと考えられます。それに伴い、車を制御するための電気の使用量は確実に増えていきます。そのため、大容量のバッテリーを搭載し、モーターで駆動するEVの仕組みは、今後の車の進化と非常に相性が良いと言えます。
電池メーカーとしては、より安全で高容量なバッテリーの開発や、コストを下げるための取り組みが引き続き求められます。用途に応じた電池開発を、自動車メーカーと連携しながら進めていくことが重要だと考えています。
一般の人には、機会があればぜひ一度BEVに乗ってみていただきたいです。実際に乗っていただければ、『ごく普通の車だな』と実感していただけると思います。いきなり長距離を走るのは不安に感じる人もいらっしゃるでしょうから、まずは短い距離から体験できるような機会を提供していく必要があると考えています。
私たちとしてもそういった取り組みができればと思っています。なによりもまず、一度BEVを体感していただきたいですね」
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電動車は単なる「環境に配慮したエコカー」という枠を超え、優れた静粛性や滑らかな加速といった快適な移動空間を提供する存在へと進化を遂げました。
HEVやBEVなど、多様化するライフスタイルに合わせた選択肢が広がっているのも大きな魅力です。
これからの10年でバッテリーの性能向上や充電インフラの整備がさらに進めば、航続距離や利便性への不安も解消され、電動車はより一層身近で使いやすい乗り物になっていくでしょう。





























