乗員守る「エアバッグ」は知っている しかし補助装置との認識なく展開時に大けがをすることも
やさしく保護するため改良されている最新のエアバッグ
では、低速走行中で事故が起きてしまった場合など、エアバッグによる乗員の怪我を防ぐことはできないのでしょうか。国内大手のエアバッグを製造しているメーカーである豊田合成株式会社(以下:豊田合成)に話をうかがいました。
──低速走行中の事故で、展開したエアバッグによる怪我をなくすことはできないのでしょうか。
命に関わる事故が起きた際、乗員の体を拘束することで、命を落すのを防ぐことがエアバッグとシートベルトの役割です。致命傷を負うような事故は、すごいスピード域で起こります。そういった事故で頭を強く打ち付けてしまう、ということがないよう、エアバッグは0.03秒で開きます。そうしないと人がハンドルやフロントガラスなどに頭をぶつけてしまい、最悪の場合は亡くなってします。
確かに、怪我を負わないことが理想ですが、エアバッグはすごい勢いで開き、衝撃を受け止めるということが目的で、怪我をゼロにできるようになっているかというと、そうではありません。
──乗員をやさしく保護するための改良などはされていますか。
エアバッグは前からだけではなく、横から保護する「サイドエアバッグ」というものがあります。従来は膨らむ際に、エアバッグの袋が2つの部屋に分かれている構造だったものを、3つに分けることで、より内圧を調整できるようになりました。圧力を調整することで展開時の衝撃が少なく、胸の部分を柔らかく保護するといったことができるようになりました。
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豊田合成では近年、アメリカ向けにクルマが横転して道から転げ落ちてしまうような事故に対応したエアバッグを開発しているそうです。一瞬で開き、すぐに収縮する従来のエアバッグとは異なり、クルマが回転している間、頭部を受け止めるために、長い間ガスをバッグにためておく必要があるといいます。
今後の予定として「クルマが回転している間も頭部を守る必要があるなど、過酷な衝突形態にも対応していき、より優しく乗員を保護するといった新しい事例にも対応したエアバッグの開発も進めています」と話します。(豊田合成)
エアバッグは、乗員の命に係わるほどの事故で、衝突の衝撃から乗員を守るために装備されています。しかし、すべての衝突事故から乗員の身を守ってくれる万能なものではありません。
また、エアバッグが有効に働くために、シートベルトだけでなく正しい乗車姿勢も重要なポイントです。
いまではエアバッグの種類も増えてきており、車内に展開するものだけでなくボンネットにエアバッグが展開される「歩行者保護エアバッグ」も存在し、乗員だけでなく、歩行者保護のためのエアバッグも少しづつ増えてきています。先進安全装備によって、事故を起こさない技術が日々進歩していますが、エアバッグもまだまだ進化していくでしょう。
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