なぜ初代クラウンがイタリアを走るのか トヨタが欧州最高峰のヒストリックラリーで『クルマ文化』を学ぶ
トヨタは2026年6月9日よりイタリアで開催される伝統のラリー「ミッレミリア」の特別企画へ初出走します。日本の自動車メーカーとして初の参戦です。初代クラウンやLFAなど歴代の名車5台を現地に投入し、1000マイルの完走を目指すとともに、欧州のクルマ文化を現地現物で学びます。自動車研究家・山本シンヤ氏の取材を元に解説していきます。
【日本車初の快挙】トヨタがイタリア『ミッレミリア』初参戦! 初代クラウンなど伝説の名車5台が1600kmの難路に挑む理由
トヨタは2026年6月9日からイタリアで開催されるラリー「ミッレミリア」の特別企画への参加を発表しました。
日本メーカーが同関連イベントに出走するのは初となります。初代クラウンなど歴代の名車5台を投入し、欧州に根付く自動車保存の文化や歴史を直接学ぶ計画です。
トヨタが由緒あるイベントに参戦する目的や、現地のクルマ文化から何を学ぼうとしているのかを解説します。

ミッレミリアは、1927年から1957年にかけてイタリアで開催されていた公道レースを源流としています。開催当時は、量産モデルの走行性能や耐久性を実証する場として機能していました。現在は、1957年以前に製造された原型を保つ車両のみが参加できるヒストリックラリーとして復刻され、世界中から希少なクラシックカーが集う「走る芸術祭」として知られています。
大会名は、レースの総走行距離である1000マイル(約1600km)に由来します。2026年大会のルートはブレシアを出発および終着点とし、パドヴァ、モンテカティーニ・テルメ、ローマ、リミニなどの都市を巡りながらイタリアの景観の中を5日間走行する計画です。
本大会は、単にゴール到達の速さを競うものではありません。あらかじめ設定された区間を指定された時間や平均速度で正確に走行する「レギュラリティラリー」形式を採用しています。競技は主に、指定時間にチェックポイントを通過する「タイムコントロール」、指定された秒数で短区間を走る「タイムトライアル」、指定の平均時速で走る「アベレージトライアル」の3つで構成されます。減点の少なさを争うため、車両の運動性能以上にドライバーの緻密な運転技術が求められます。
今回トヨタが出走するのは、「より幅広い名車を走らせたい」という目的から企画された「1000 Miglia Gran Turismo Experience 2026」です。日本の自動車メーカーがミッレミリア関連のイベントへ参加するのは初の試みとなります。
現地でプロジェクトに携わる16代目クラウンの開発に携わった清水竜太郎氏は「感無量です。自動車業界に関わる人間として、ミッレミリアは昔から知っていた憧れの舞台なので、この場にこうして立てるというのは本当にすごいことで、ありがたいことだと思っています」と語っています。
今回日本から持ち込まれた車両は、トヨタの歩みを象徴する5台です。清水氏は「70周年のクラウンに加え、トヨタのモータースポーツの歴史を培ってきた5台を選びました。モリゾウさん(豊田章男会長)の色々な思い出が詰まったクルマでもあります。トヨタとしてこの文化の地に敬意を示しながら、我々もその文化をしっかり学び、今後の日本のクルマ文化の広がりに貢献できたらという思いです」と説明しています。
出走車両は、日本初の純国産車「初代クラウン」をはじめ、航空機の技術を応用した「スポーツ800」、国際新記録を樹立した「2000GT」、そしてニュルブルクリンクで運転訓練が行われた「スープラ(JZA80型)」と「LEXUS LFA」という顔ぶれです。
今回のプロジェクトの中心的な役割を担うのが、1955年に発売された「トヨペット クラウン RS型(初代)」です。
初代クラウンは、日本人の手で乗用車産業を興す目標のもとに開発され、今日のトヨタの基盤を築いたモデルです。1956年にロンドンから東京までの5万キロを完走し、1957年には豪州一周ラリーに出走するなど、モータースポーツ活動の原点と言える歴史を持ちます。
クラウンを欧州で走らせる意義について、清水氏は次のように明かします。
「現在クラウンは16代目となり、昨年70周年という節目を迎えました。クラウンのブランドをグローバルに広げていきたいと考えたとき、ブランディングの面でまだ足りていない部分があります。歴史はあるのに海外での認知が弱いという課題に対し、豊田会長も仰っている『クルマを文化に』という目標を目指したいと思いました。まずは自動車文化がヨーロッパに根ざしているこのイベントを通じて、『クラウンとは何か』を知ってもらいたいというのが発想のきっかけです」
クラウンのこれまでの輸出実績は中東地域などがあり、米国市場では初代モデルで苦戦した歴史があります。欧州市場では本格的な展開が行われてこなかったため、現地のファンにとってクラウンは未知の存在です。
そのため今回は、クラシックモデルを出走させるだけでなく、最新の「クラウンスポーツ」と「クラウンセダン」を伴走車として現地に持ち込んでいます。
長年培ってきたセダンの伝統と最新のラインナップを同時に披露することで、新たな市場におけるブランド認知の向上を図るという挑戦が含まれているといえます。

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トヨタは2025年より、旧車のレストアや補給部品の再販売、自動車文化に触れる機会の創出をまとめたヘリテージ活動「TOYOTA CLASSIC」を展開しています。
ミッレミリアへの参戦は、過去の名車を単に展示するのではなく、実際に公道で走行可能な状態を保つ動態保存の実践です。
自動車業界が転換点を迎える中で、歴史的な車両を用いてイベントに自社体制で挑むことには、技術やノウハウを次の世代へと引き継ぐ意味もあるのかもしれません。
Writer: くるまのニュース編集部
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