同性に「モテる」を重視? ダイハツがあえて挑んだイマドキ女子に合わせた開発秘話
ダイハツ「ミラ トコット」は、女性目線の可愛いクルマを作るべく女性主導で開発が進められたクルマです。ダイハツ初となった試みはどのような経緯でスタートしたのでしょうか。
ダイハツ初の女性主体プロジェクト
ダイハツのミラシリーズの中で、女子向けのクルマは「ミラ ココア」がありました。『カワイイクルマ』の代表として誕生したものの、時代と共に変化しているのが女子のトレンドです。そこで後継モデルとして登場した新型「ミラ トコット」はこれまでと違うアプローチで開発されたようです。
今回、新たに発表された「ミラ トコット」は、『男性から見た女性らしいクルマではなく、女性目線によるクルマ』を作るべく、ダイハツの女性社員により開発プロジェクトが発足しました。
驚くことにそういった取り組みはダイハツで初めてのことだったようで、『女性や、初めてクルマを買おうと思っている人が求めているクルマは何か』を考えるところからスタートしたそうです。
「トコット」という名前の由来は、『To Character(自分らしさ)、To Comfortableness(安心、安全、運転のしやすさ)、To Convenience(使いやすさ)』の頭文字、3つの『ToC』からの造語で、前から読んでも後ろから読んでもトコット「TOCOT」になりました。
女性プロジェクトのメンバーは、エンジン、デザイン、操縦安定性など各部署から選ばれた7名をメインにスタート。コンセプト作りからスタートし、男性チーフエンジニアのもとに女性チームが作られました。
まずは、デザイントレンドの徹底的なリサーチ。すると世の中の流れや『カワイイ』の定義が以前より大きく変わっていることを確信したそうです。
『白いシャツ』と『バケツ』から始まったコンセプト?
プロジェクト発足からミラ トコットの開発について、主要メンバーで製品企画部の木村友喜さんにお話を伺いました。
――プロジェクトを進めていく上で、「大変だったこと」や「嬉しかったこと」はどんなことでしたか。
プロジェクトを進めていくなかで、大変だったのは社内の男性社員に『カワイイ』という言葉を使わずに、別の表現で感情の共感を増やしていくことでした。「ミラ ココア」の時代は、『モテる』といえば異性に対して使うものでしたが、現在は同性に対して『モテる』ことを重視してみました。いまドキの女性たちは、異性との交流より、同性同士の女子会のほうがお洒落に気を使うんです。そういった世の中の変化を男性陣にどう話したら理解してもらえるか悩みました。
説明の仕方を考えて行く中で、イメージとしてわかりやすかったのが『白シャツ』と『バケツ』です。白シャツは、デザインや素材など細部の違いで、性別に関係なく良し悪しがわかります。そしてバケツも、プラスチックやアルミなどの素材の違いの話を例に出したら、クルマも板金でボディができているせいか、イメージとして伝わったようでした。
そして、目指したのは『シンプルな中にも愛嬌があること』。単に四角いのではダメ。丸を取り入れたり、ドアに一本ラインを入れたときは、男性からは『安っぽく見えるのでは?』といったネガティブな意見が出ましたが、女性からの意見では『横に入っている線がカワイイ』という声もでていました。そういうやり取りで、説得するのに半年かかりましたが、その部分が決まってからは早かったです。男性社員を理解させることが大変だった分、発表会の時は嬉しかったですが、トコットを見た皆さんの反応も心配でした。