わずか3車に託された軽バン業界 再編された軽4ナンバー車の内情とは?

軽バンの常識を覆す N-VANで勝負を挑むホンダ

 ホンダは以前から軽商用車を手掛け、1999年にはアクティバンとそのワゴン仕様となるバモスを発売しました。エンジンをボディ後部の床下に搭載して後輪を駆動するので、エブリイシリーズやハイゼットカーゴシリーズと同様、軽商用バン専用のプラットフォームです。しかし2018年7月13日に発売された後継車種のN-VANは、N-BOXをベースに、左側ドアの開口幅を1580mmまで広げたり、後席に加えて助手席まで小さく畳める構造を採用しました。新しいプラットフォームを開発することが困難だからです。

ホンダ「N-VAN」

 このN-VANの商品力について、販売店のホンダカーズに尋ねました。

ホンダ N-BOXの詳細を見る

「N-VANの2名乗車時の荷室長は、先代型のアクティバンに比べて20cmも短いです(アクティバンは1725mm/N-VANは1510mm)。そうなるとアクティバンに積めた荷物がN-VANには収まらず、一部のお客様は困っています。ただしアクティバンは発売からすでに約20年を経過しており、その後にフルモデルチェンジを受けたエブリイやハイゼットカーゴに乗り替えたお客様が多いです。

 率直にいって、今ではアクティバンの保有台数がほとんどありません。その意味ではむしろ、N-BOXをベースにしたN-VANの方が売りやすいです。軽乗用車と軽商用車の中間的な商品で、後輪駆動のエブリイやハイゼットカーゴとは違う個性があるからです」と説明されました。

 今の自動車メーカーは、軽商用車から最先端技術まで、負担の重い開発に取り組んでいます。これを成立させるのが業務提携ですが、行き過ぎると商品のバリエーションが減り、競争関係も薄れて魅力が低下したり、価格が割高になったりします。

 実際、昔は6車種の個性豊かな軽商用バンを選べましたが、OEM車だらけになった今は、N-VANを含めても実質的に3車種しかありません。

 共通化によって合理化を図りながら、どこまでメーカーの個性を表現してユーザーに違った魅力をもたらせるのか。今は業務提携の時代、幅広い分野にわたり、従来とは違う開発が求められています。

【了】

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Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

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