トヨタが2024年夏に生産を終了した「C＋pod（シーポッド）」は、全長2.5mという超コンパクトなボディに必要十分な性能を備えた小型BEV（バッテリー電気自動車）でした。

　移動用小型車として普通免許で運転できるこのクルマは、高齢化が進む地方の移動手段として有効でしたが、後継モデルはまだ登場していません。

　地方では過疎化や高齢化が進み、バス路線の廃止やタクシー事業者の廃業が相次いでおり、日常での移動手段の確保が課題となっています。

　そうした背景のなか、トヨタが販売していた小型2人乗り四輪EV シーポッドは、取り回しやすいサイズに最新の先進安全機能を備えたEVとして注目を集めていました。

　シーポッドは2020年12月に登場しました。道路交通法では普通免許で運転できる「移動用小型車」に分類され、軽自動車と同じ黄色いナンバーが装着されますが、最高速度は60km／h以下に制限され、高速道路の走行はできません。

　ボディサイズは全長2490mm×全幅1290mm×全高1550mmと非常にコンパクト。狭い路地や、昔ながらの町並みが残る地域などでも余裕を持って乗りこなせるサイズです。

　最小回転半径は3.9mで、これは2車線道路で1回切り返せばUターンできるという小回りの良さを持っています。

　外観については軽量で安価な樹脂パネルを採用し、ブラックでまとめたキャビンや、大型のLEDヘッドランプ・テールランプなどを装備。慣れ親しんだ普通乗用車のような洗練されたデザインで、日常使用でも違和感のない仕上がりになっています。

　インテリアでは大人2人が並んで座れる十分な室内空間を確保しています。コクピットは運転に必要なスイッチ類を集中配置して使いやすさを重視。

　シート足元にはバッテリーを配置しており、段差の少ないフラットな床面により乗降性が高められています。高齢者や足の不自由な方でも乗り降りがしやすい設計になっているのです。

　極めてシンプルなデザインながら、高効率クーラーや快適温熱シート（シートヒーター）を装備しており、日常の移動も快適にこなせる機能性を持っています。

　ラゲッジルームは長さ335mm×幅619mm×高さ767mmを確保。ゴルフバッグなどの大きな荷物の積載はできませんが、日常の買い物には十分な容量となっています。

　パワートレインは最大出力12.5馬力・最大トルク56Nmを発揮するリアモーターに、51Ahリチウムイオンバッテリーを組み合わせ、一充電走行距離（WLTCモード）は150kmを達成。隣町への買い物や通院、片道1〜2時間程度の移動なら十分な航続距離です。

　充電は200V普通充電の場合、5時間ほどで完了します。専用工事が不要な家庭用の100V電源でも充電できます。

　電子レンジやドライヤーなども利用できる1500W容量のコンセントや外部給電システムを備えており、災害時やアウトドアでの外部電源としても活用できる汎用性の高さも特徴でした。

　安全装備では「プリクラッシュセーフティ」や「パーキングサポートブレーキ」、両席エアバッグやABS、ELR（緊急ロック式巻き取り装置）付きシートベルトを装備するなど、小さいボディながら先進的な機能を搭載。高齢ドライバーでも安心して運転できる安全性を確保していました。

　当時の価格（消費税込）は166万5000円から173万1000円。国のCEV補助金や自治体独自の補助金を組み合わせると、実質的に100万円台前半で購入できる手軽さも魅力的でした。

　シーポッドは最小限の移動手段としてはかなり充実した内容で、地方や山間部などの移動手段に困る地域だけでなく、離島や古い町並みが残る地域などでの観光客の移動手段としても期待されていました。

　しかし、発売から3年ほど経過した2024年夏に生産を終了。現時点では後継モデルは発表されていません。

　今後も地方での移動課題はさらに深刻化すると予想されるため、シーポッドのような使い勝手の良い小型EVの再登場が待ち望まれています。

　移動手段の選択肢が多様化する中で、小型で環境にやさしい次世代モビリティの開発は、持続可能な地域社会の実現にとって重要な要素となるでしょう。