トヨタ「ライズ」は、日本の道路環境に最適化された5ナンバーサイズのコンパクトSUVです。

　力強いスタイリングと優れた実用性により、軽自動車からのステップアップ層と、大型車からのダウンサイジング層という二つの顧客層を取り込み、市場の王者として高い支持を集めています。

　自販連（日本自動車販売協会連合会）調べによる2025年6月の販売ランキング（軽を除く）で、ライズは2位（1万1216台）に位置します。

　1位のトヨタ「ヤリス」（1万1943台）は、コンパクトカー「ヤリス」、コンパクトSUV「ヤリスクロス」、4WDスポーツ「GRヤリス」の3つの“ヤリスシリーズ”を合算した数値であり、単一車種としてはライズがナンバーワンといって差し支えないでしょう。

　そのラインナップの出発点となるのが、180万700円（2WD・消費税込み）から購入可能な最廉価グレード「X」です。

　ボディサイズは、全長3995mm×全幅1695mm×全高1620mm、ホイールベース2545mm。

　パワートレインは、2WD（FF）モデルが最高出力87ps、最大トルク113Nmを発揮する1.2リッター直列3気筒ガソリンエンジン、4WDモデルが最高出力98ps、最大トルク140Nmの1リッターターボエンジンで、ともにCVT（無段変速機）と組み合わされます。

　カタログ燃費（WLTCモード燃費）は2WDが20.7km／L、4WDが17.4km／Lと経済性にも優れており、主に2名乗車がメインなら十分といえる性能を発揮します。

　安全面では、先進運転支援機能「スマートアシスト」として、対車両・対歩行者（昼夜）対応の衝突回避支援ブレーキ機能をはじめ、車線逸脱警報機能／車線逸脱抑制制御機能などのひと通りの予防安全機能が備わります。

　そんなXグレードですが、この廉価な設定を実現するため、いくつかの妥協点も存在します。

　外観では16インチのスチールホイール、内装ではウレタン製ステアリングや、ハードプラスチックを多用したダッシュボードなど、上位グレードとの差は明確です。

　中でも特に注意が必要なのが、運転席にシートリフター（座面高さ調整機能）がオプションでも装備されない点です。

　体格によっては適切な運転姿勢を取れない可能性があるため、このグレード最大のウィークポイントとして、購入前の確認が強く推奨されます。

　では、上位グレード「G」（195万8000円／ガソリン・2WD）と比べるとどうでしょうか。

　約16万円高のGグレードでは、外観が16インチのアルミホイールに変更され、細部がメッキやツヤあり黒塗装の加飾にグレードアップします。

　内装ではステアリングにシルバー加飾が加わり、シートやインパネなどの加飾が少し華やかになります。

　またメーターが7インチのカラー液晶ディスプレイに変更されるなど、全体の質感が向上します。

　前述のシートリフターは標準装備となり、シートヒーターがオプションで選択可能（4WDは標準装備）になるなど、快適性にも差が出てきます。

　ちなみに最上級グレード「Z」（215万2700円／ガソリン・2WD）となると、アルミホイールが17インチに拡大し、本革巻きステアリングホイールやLEDフロントシーケンシャルターンランプ、全車速追従機能付ACC（アダプティブクルーズコントロール／停止保持機能あり）など多くの快適装備などが加わりますが、200万円以下で手に入るXやGと比較すると、買い得感はやや弱まります。

　ともあれライズXは、“条件付きで買い”といえるモデルです。

　安全装備はしっかり備えつつ、初期費用を極力抑えてライズを手に入れたいユーザーにとって、非常に魅力的な選択肢となります。

　一方で、日常の快適性にこだわる場合は、約16万円の追加投資で質感が向上するライズ Gの検討価値も十分にあるといえるでしょう。