ホンダ、「ゴールドウイング」で新しい前輪サスペンションに挑戦 大胆な変化を求める意図とは
まだあるメリット、乗り心地は“空飛ぶ絨毯”
衝撃を和らげるサスペンション機構とハンドル操縦機構を分けるという発想は、じつはBMWでも早くから導入され、高く評価されてきました。特に高速道路を使って長距離を走るようなツーリングモデルには最適で、ホンダは独自の技術を盛り込んで新型「ゴールドウイング」に新採用となったというわけです。
ダブルウィッシュボーン式のメリットはまだあり、上下アームの角度設定によってサスペンションのストロークを真上方向に定めことで、前輪とエンジン部の隙間を最小化させることもできます。
そのぶんエンジンを車体前方に寄せることができ、同時にエンジンの前後長も短縮することで、前で運転するライダーと後部座席に座るパッセンジャーの着座位置を従来よりも36mm前方へ移動させることができたのです。
これによってホイールベース(前後輪の軸間距離)を従来と同等としながらも、前輪分担荷重(前輪へ掛かる重さの配分。オートバイでは前輪への適度な荷重が必要)が最適化され、操作した感覚がより軽快となりました。
「まるで空飛ぶ絨毯のようです」
ホンダの開発者はこう言って、新型「ゴールドウイング」の完成度の高さを誇らしげに教えてくれました。新たなダブルウィッシュボーン式フロントサスペンションの他にも、7速DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)という新機構や、後輪を片持ちにするスイングアーム機構など新しい技術が満載です。
荷物を収納するケースを後部座席の後ろにも備えるフルパッケージ仕様を「ゴールドウイング ツアー」とし、テールエンドをスッキリとさせ若者にも乗っていただきたいカスタム仕様を「ゴールドウイング」と2本立てになって新発売されます。
【了】
Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。