「戦場で生き残るために」 スバル水平対向エンジンを「火砲」に搭載! 自走可能な「155mm榴弾砲FH70」とは

なぜ火砲にエンジンを搭載したのか? 今後は全車退役か

 では、なぜトラックでけん引する火砲にわざわざエンジンが付いたのでしょうか。

 それは現代の苛烈な砲撃戦を生き残るという切実なニーズがあるからです。

 火砲はトラックで砲撃位置までけん引されて設置した後射撃を開始しますが、ずっと同じ場所で撃ち続けるわけにはいきません。

 敵も撃たれっぱなしというわけにはいきませんから、反撃の砲撃を仕掛けてきます。

 砲弾は発射されると物理の法則に則って弾道を描きますので、レーダーなどを使えば比較的簡単に発射場所が特定されてしまいます。

 また最近ではウクライナでの戦闘の様子は多く投稿されていますが、無人機(ドローン)による空中映像は地上を動き回る人や車両などが丸見えであることが分かります。

 撃ったら逃げるが基本ですが、けん引式の場合トラックに連結して移動するまでどうしても時間が掛かります。

 それでも数百メートルすぐに移動できれば生存性がぐっと高まります。そこで構造が複雑になることを承知のうえでエンジンを載せて自走できるようにしたのです。

 そうでなくともトラックを呼ばなければ微動だに出来ないというのはかなり不便です。約9.6tもある重量物ですから自走できればかなり扱いは楽になります。

スバルのエンジンで自走するFH-70。運転席は左側になる。(画像:2018年8月23日月刊PANZER編集部撮影)
スバルのエンジンで自走するFH-70。運転席は左側になる。(画像:2018年8月23日月刊PANZER編集部撮影)

 ではトラックに直接火砲を載せてしまうアイデアはどうでしょう。

 すでにトラックの荷台に火砲を載せた新装備「19式装輪自走155mmりゅう弾砲」の配備が始まっています。

 155mm砲の発射時の反動は強烈ですので砲架と車台の構造を工夫して反動を直接地面に逃がすようにしています。

 20世紀では革新的ともいえたけん引・自走両用のFH-70もデビューから40年以上経過し、開発国だったドイツでは全車退役しました。

 日本でもレオーネを見かけることはほとんどなくなりましたが、FH-70も19式の配備に伴って数を減らしていくでしょう。

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