【MotoGPアナライズ】「夢見ていたような完璧なレース」マルク・マルケスを今季2勝目に導いた3つの要因
マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)がMotoGP・第15戦アメリカズGPで今シーズン2勝目を挙げた。タフなコンディションにより消耗戦となったレースで手負いの元王者を完璧な勝利へと導いたいくつかの要因を考察する。
8戦7勝の結果を残した大得意のサーキッット
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マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)がMotoGP第15戦アメリカズGPで優勝した。
昨年負った右上腕骨骨折の影響が残り、本来の走りとはまだまだいえないが、第8戦ドイツGPに続く今シーズン2勝目となった。
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レースを重ねていく中で少しずつ成績は上向いているものの、勝利の大きな要因としてまず挙げられるのは、マルクが大得意とするコースが舞台だったということだろう。
復帰後、初優勝を果たしたドイツGPのザクセンリンクと同じく、今回走ったサーキット・オブ・ジ・アメリカズは、MotoGP開催サーキットでは珍しい反時計回りのコースだ。
2013年に初めて同地でGPが開催されて以来、“COTA(Circuit of The Americas)”では、新型コロナウイルスの影響で中止となった2020年を除き、合計8回のレースが行われているが、2019年のアレックス・リンス(チーム・スズキ・エクスター)以外、全てマルクがウィナーとなっている。
ザクセンリンクに至っては、MotoGPクラスにデビュー後、参戦した8レース全部で勝利を収めている。
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右腕を痛めるまでは時計回りのサーキットでも変わらぬ強さを見せていたが、身体が完治していない現在は、よりその傾向が強まった。マルク自身もこのアメリカズGPが「2021年に優勝する最後のチャンスになるかもしれない」と感じていたようだ。
「反時計回りのサーキットは、常にストロングポイントのひとつでしたが、怪我をしたため、左コーナーと右コーナーで感覚の差がさらに大きくなっている。左コーナーでは左腕の上腕三頭筋でハンドルバーを操作することで適切にバイクの向きを変えられますが、右コーナーで同じようにハンドルを操るとアンダーステアになってしまう。何度もクラッシュしましたし、フロントを失った時も肘でセーブできないので、それを理解して取り組んでいます」とレース後に振り返っている。
レースウィークを通して遂行された完璧な戦術
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次に挙げられるのは、コースの攻略方法を含めた戦術を完璧に遂行できたことだろう。
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初日のFP1とFP2でいずれもトップタイムを記録したマルクは、予選3番手。今季初のフロントロウからスタートし、ホールショットを奪うと終始トップを快走。ペースをコントロールする余裕を見せ、ランキング首位のファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハ・MotoGP)に4.679秒差をつけ、チェッカーを受けた。
「ここのところ、スタートが良くなかったので、プランAは1周目からレースをリードすることでした。そこからの4、5ラップは意図的にペースを抑えました。6ラップ目あたりでファビオとの間に約1秒ほどマージンが築け、大丈夫だと感じたので、タイヤが少し消耗したところでプッシュしました。前の晩に夢見ていたような完璧なレースでした」とホンダの絶対エースは喜びを表現した。
例年4月に行われるところ、今年は10月初旬の開催。気温は30度を超え、湿度も高かったため、20ラップの争いは消耗戦の様相を呈し、さらにバンピーな路面はライダーたちの体力を削り取ったが、事前に映像でライバルの走りをじっくり観察し、ポールポジションを獲得したフランチェスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)のラインを参考にしたことも功を奏した。
「彼はターン4で縁石をうまく利用していました。タイムはほぼ変わりませんでしたが、それをコピーすることで体力低下を大幅に抑えられました。土曜日にエネルギーを温存しておけたのも重要なポイントでした。日曜日に全てを発揮することが勝利の鍵であることを証明できました」。
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ホンダ陣営を率いるアルベルト・プーチも「マルクは何をすべきか正確に知っていた。自分自身をコントロールし、バイクをどうするか、タイヤをどうするか、可能な限り最善の方法でマネジメントした」と賞賛している。
確実に競争力を上げてきた2021年型RC213V
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テクニカルディレクターの横山健男氏が「我々は勝利を目指して戦うというよりテスト段階にあります」と記者会見で認め、マルクが「ホンダのバイクはミシュランの新しいリアタイヤのグリップをうまく引き出せていないが、少しずつ改善はしている」とコメントしたように、常に優勝を狙えるところまでには至っていないが、RC213Vの競争力は確実に上がってきている。
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シーズン半ばには、ここ数年使われていた角張ったコの字タイプのウィングレットに代わり、湾曲して垂れ下がった新しいタイプが投入され、第9戦オランダGP以降は新型フレームも持ち込まれている。また、リアブレーキのキャリパーを冷却するためだと思われるダクトが設けられるなど、細かなモディファイも続けられている。
アメリカズGPでは、フロントフォークの突き出し量を極端に減らし、バイクのフロントエンドを高くしたセッティングがある程度うまく作用した様子だが、「マルクからのフィードバックは的確で、非常に多くの新しいアイデアを我々に与えてくれました。私たちはハードワークを続け、全てのレースに新しいコンポーネントを導入するつもりです」と横山氏は常勝軍団の復活に力が入る。
ミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリで行われる、次戦エミリア・ロマーニャ&リビエラ・ディ・リミニGPでも好走が期待されるが、本当の試金石となるのは続く第17戦アルガルヴェGPだろう。
ポルティマオにあるアウトードロモ・インテルナシオナル・ド・アルガルヴェは、マルクがレースに復帰した第3戦ポルトガルGPの舞台にもなっている。
この春、7位でフィニッシュした時計回りのサーキットでどれだけのリザルトを残せるのか? 2022年シーズンを見据え、現在の回復具合とRC213Vの競争力が試される興味深いレースになる。
提供:バイクのニュース
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