1台4億円!! フェラーリになぜ「アメリカ」の名がつくのか北米向けオープン・フェラーリを調査

わずか10台だけ生産された「F60アメリカ」の驚愕の落札

 フェラーリ「F60アメリカ」は、2014年夏にロサンゼルス・ビバリーヒルズにて開催された、北米マーケットにおけるフェラーリの正規ディーラーシップが60周年を迎えたことを記念するパーティイベントにて初公開された。

 このモデルがオマージュを捧げるのは、当時の最高性能版フェラーリ「375プラス」を1954年に初めて輸入した北米におけるフェラーリの礎、故ルイジ・キネッティと、彼がアメリカで築いてきた名声である。

2014年夏に初公開された「F60アメリカ」は、わずか10台限定であった(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's
2014年夏に初公開された「F60アメリカ」は、わずか10台限定であった(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's

●2016 フェラーリ「F60アメリカ」

 キネッティは、1949年に戦後初めて開催されたル・マン24時間レースを、こちらも初出場となるフェラーリで制した人物。のちにアメリカでのフェラーリ販売代理権を取得。一時は世界最高のフェラーリディーラーとなった。

 F60アメリカがイメージカラーとし、今回のオークション出品車にもペイントされている濃紺のボディカラーは「Blu NART」と呼ばれるのだが、その「NART(North American Racing Team)」もキネッティが設立したレーシングチームの名前だ。

 1960-70年代、NARTはフェラーリのサテライトチームとしてスクーデリア・フェラーリを補完。ル・マンをはじめスポーツカー耐久レースや、時にはF1GPでも大活躍を果たしたのだ。

 そんな偉大な足跡を記念するF60アメリカは、古くから北米のフェラリスタが愛してやまないフロントエンジンのV12に、こちらもアメリカ好みなオープントップの組み合わせ。特別なスペチアーレとはいえ、740psを発生する6262ccのV12エンジンなど、メカニズムはベースモデルである「F12ベルリネッタ」と変わらない。

 しかしその最大の差異は、ベースモデルであるF12とは一線を画したアピアランスにある。フロントは、格子型グリルを持つフェラーリの伝統的スタイルとされ、ブレーキを冷却するエアインテークに至るまでクロームで仕上げられる。

 F60アメリカは当然ながら限定モデルであり、生産数はスーパーアメリカやSAアペルタよりもさらに少ないわずか10台だけ。その台数の由来は、かのスティーヴ・マックイーンをはじめとする米国の顧客に向けて、キネッティがエンツォ・フェラーリに特別注文、1967年に同じく10台のみが製作された「275GTB/4 NARTスパイダー」へ敬意を表したものだった。

 そして当時の販売価格は、同時代の「ラ・フェラーリ」さえもしのぐ250万ドルとされながらも、実は発表と同時に完売になってしまったという。

 そんな逸話も相まって、今回のオークション出品に際してRMサザビーズ社は350万−450万ドルという途方もないエスティメートを設定していたのだが、いざフタを開けてみれば、エスティメートに収まる363万5000ドル。日本円に換算すれば、約4億円という驚くべき価格で落札されることになったのである。

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