車名と見た目のイメージがちがう? 馴染みの車名だけど売れなかった車3選
新型車の開発で重要な要素のひとつが車名です。車名からそのクルマの車格やキャラクターが推し量れたり、覚えやすさや発音のしやすさ、耳にした時の心地よさなど、多角的に検討する必要があります。一方で、既存のモデルから車名を拝借するのも、有効な手段です。そこで、名車の車名を付けたものの販売は苦戦したモデルを、3車種ピックアップして紹介します。
お馴染みのクルマから車名を借りたものの売れなかったクルマを振り返る
クルマの車名は販売台数に影響を与えることもあるほど、新型車開発で重要な要素のひとつです。発音がしやすくて覚えやすく、親しみがわいてクルマのキャラクターにマッチするなど、車名を考えるのは非常に難しい作業といえます。
さらに、競合他社が商標登録していないか、海外でスラングとして変な意味は無いかなども調査しなければなりません。
新たな車名を生み出すのは大変なので既存の車名をアレンジするケースも多く、トヨタ「ヤリスクロス」やスズキ「スペーシア ギア」など、派生車ということがすぐに理解できます。
一方、既存の車名を流用するも、見た目のイメージが大きく異なるモデルも存在。そこで、お馴染みのクルマから車名を借りるも、販売的には成功しなかったモデルを3車種ピックアップして紹介します。
●日産「スカイライン クロスオーバー」
日産のラインナップで、もっとも長い歴史を誇るモデルが「スカイライン」です。スカイラインというと「GT-R」に代表される高性能クーペや、11代目以降ではスポーティなセダンというイメージが強いのではないでしょうか。
一方、そんなイメージを覆すモデルが、2006年に登場した「スカイライン クロスオーバー」で、12代目スカイライン(V36型)の派生車として開発され、車名でわかるようにクロスオーバーSUVです。
リアハッチの傾斜を寝かせたクーペSUVの先駆けともいえる外観で、スカイラインの意匠をアレンジしたフロントフェイスに抑揚のあるフォルムが特徴となっており、もともとは海外市場に投入されていたインフィニティ「EX37」をベースに国内向けに仕立てられました。
エンジンは330馬力を発揮する3.7リッターV型6気筒自然吸気を搭載し、駆動方式はFRと4WDが設定されていました。とくにアクセルレスポンスに定評がある大排気量エンジンでしたので、スポーティかつ余裕のある走りを実現。
高級感も漂うプレミアムなSUVでしたが、やはりスカイラインのイメージとは離れていたのか販売は芳しくなく、2016年に生産終了して後継車はありませんでした。
●三菱「ミラージュディンゴ」
数ある三菱車のなかでも希代の迷車ともいえるのが、1999年に誕生した「ミラージュディンゴ」です。
ボディはコンパクトなトールワゴンで、車名から当時の主力モデルだった「ミラージュ」の派生車と想像できますが、プラットフォームが異なる独立したモデルとなっています。
ミラージュディンゴはコンパクトなサイズながら広い室内空間を実現し、前後左右へのウォークスルーが容易な「H(エイチ)ウォーク」を可能とするなど、ミニバン的なユーティリティの高さから「賢く(Smart)、便利な(Utility)ワゴン」という意味で「SUW(スマート・ユーティリティ・ワゴン)」と呼称。
さらに、エンジンは新開発で当時世界最小の1.5リッター直列4気筒直噴エンジン「GDI」を搭載し、サスペンションも新設計の4輪独立懸架を採用するなど、技術的にも次世代を担う意欲作でした。
しかし、ターンシグナルを内蔵した縦型異型ヘッドライトを採用したフロントフェイスはかなりアグレッシブなデザインで、このフロントフェイスが不評だったためか、販売は徐々に低迷。
そのため、2001年のマイナーチェンジでは、フロントまわりのデザインを完全に一新する大規模なテコ入れがおこなわれました。
ヘッドライトは一般的な横基調のスクエアな形状とされるなど、比較的オーソドックスなフロントフェイスとなって販売の巻き返しを図りましたが、その後は三菱の不祥事も重なって販売台数は伸び悩み、2002年に生産を終了。
今では中古車市場でもほとんど流通していない、激レアなモデルとなってしまいました。
●ホンダ「インテグラSJ」
現在、ホンダのディーラー網は「ホンダカーズ」で統一されていますが、1970年代の終わりから複数の販売チャネルを立ち上げ、以前は「プリモ」「クリオ」「ベルノ」と、3つの販売チャネルを展開していました。
なかでもベルノ店では「プレリュード」や「CR-X」「インテグラ」といったスポーティなモデルを中心に販売。
このインテグラは「タイプR」に代表されるFFスポーツカーとしてのイメージを確立していましたが、1996年にセダンの「インテグラSJ」がラインナップされました。
当時はインテグラにも4ドアセダン(ハッドトップ)が設定されていましたが、インテグラSJは完全に別モノで、「シビックフェリオ」「ドマーニ」とプラットフォームを含む主要なコンポーネンツを共有した販売チャネル違いの兄弟車という位置づけのモデルでした。
ボディパネルの多くはシビックフェリオと共通で、さらにフロントマスクはステーションワゴンの「オルティア」から流用するなど、かなり開発費が抑えられていました。
エンジンも既存の1.5リッター直列4気筒SOHCのみで、VTECとスタンダードなバルブ機構の2種類をラインナップし、トランスミッションは5速MTとCVT、4速ATを設定。
インテグラSJは「フォーマルなセダン」というコンセプトでしたが、内外装からはとくに高級感もなく、存在感が薄かったため販売は低迷し、2001年に販売を終了。ラインナップの隙間を埋めるかたちのモデルだったといえます。
現在、インテグラSJは滅多にお目にかかれない、ホンダ車のなかでも稀代の珍車となっています。
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日本車に関わりが深い車名について、アメリカで面白い報道がありました。
それは、フォードが「スカイライン」の商標登録を申請したというもので、さらに日産はアメリカで「フェアレディZ」を申請したというのです。
前者は北米で販売されていないスカイラインの名を取得しようという目論見で、後者は同様な事例を阻止しようというのが理由と思われます。
各メーカーとも膨大な数の車名を商標登録しており、新規での登録はかなり難しいとされますから、なかなかおもしろい展開ではないでしょうか。
マークXジオ
クラウンクルーガー
クラウンヴェルファイア
駆動方式がFRからFFに切りかわって短命だった車名、バイオレットりベルタを思い出しました。たしか2年くらいしてすぐに、リベルタビラに車名変更してしまいましたから。