走行距離たったの983km! 奇跡の「チゼタ」が「ディアブロ」に似ている理由とは
もともとランボルギーニの社員だった男が、海を渡ってアメリカ西海岸で夢を現実のものとしたチゼタ「V16T」とは、どんなスーパーカーだったのだろうか。
ひとりの男の夢が形となったスーパーカー
2021年1月の第4週の週末は、オートオークションの世界にとって、もっとも大きな盛り上がりを見せる期間であるといってもよい。
これはアメリカのアリゾナ州スコッツディールを中心に、メジャー・オークショネアから、比較的規模の小さなオークショネアまでが、一斉に今年最初の本格的なオークションを開催するためで、見方によってはここで2021年の動きが決まるといってもあながち間違いではないのである。
●1993 チゼタ「V16T」
各社はすでに出品車の多くを公開し始めているが、そのなかで、個人的にまず目に留まったのは、1993年式のチゼタ「V16T」だった。
イタリアン・スーパーカーの世界に詳しい人には多くの解説を必要としないが、このV16Tを開発・生産したのは、当時モデナの新興勢力として語られたチゼタ・モロダー社である。
チゼタとは、創業者のひとりであり、かつてはランボルギーニでテストドライバーやメカニックの職にあったクラウディオ・ザンポーリのイニシャル、「CZ」をイタリア語した音である。
モロダーは世界的に有名な音楽家、ジョルジョ・モロダーの姓である。このふたつを組み合わせ、チゼタ・モロダー社となった。
1973年にランボルギーニを辞したザンポーリは、その数年後にイタリアを離れ、カリフォルニアでイタリア車のスーパースポーツ・ディーラーを経営していたが、彼にはどうしても諦められない夢があった。
フェラーリやランボルギーニがそうであったように、自分の名前を掲げたスーパーカーを生み出すこと。その夢はあまりにも壮大で、多くの資金を必要とするものだったが、その計画に賛同してくれたのがモロダーだったのである。
ザンポーリは1980年代を迎える頃には、早くもその胸中に理想的なスーパースポーツ像を描いていたという。鋼板を組み合わせて製作されたスペースフレームを基本骨格に、それに前衛的なデザインのボディパネルを張り合わせていくという手法は、小規模生産を前提とするモデルにはベストな手法。
ボディデザインは、かのマルッチェロ・ガンディーニに委ねられた。しかし当時ガンディーニは、クライスラー・グループにあったランボルギーニで「カウンタック」の後継モデルとなる次期12気筒モデル「ディアブロ」をデザイン中で、チゼタのディテールには、そもそもディアブロに与えられるべきデザイン要素が多数採用されているともいう。
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