韓国ヒュンダイが再上陸!? トヨタ・ホンダに追従? BTSコラボでFCV市場を狙う
日本へ再進出するヒュンダイ、勝機はどこに?
しかし、FCVの普及には大きな課題があります。そのひとつが、水素ステーションの拡充です。
ガソリンスタンドのように、燃料である水素を充填できるステーションがあれば、既存のEVを大きく超える航続距離を可能としているFCVですが、水素ステーションがなければ走ることができません。この点が、家庭用電源でも充電可能なEVとの大きな違いです。
前述の通り、日本は世界に先駆けてFCV開発を進めてきたなかで、官民一体となって水素ステーションの拡充に努めてきました。
その結果、現在では、世界でもっとも水素ステーションが整備された国となり、その数はさらに増えるとされています。
一方、ヒュンダイはネッソを北米で展開しています。
これは、おもに西海岸エリアを中心に、北米でも環境意識が高まってきたことで、国を挙げて水素ステーションを拡充するという動きがあったためといわれています。
しかし、近年の原油価格の下落により、化石燃料を使った自動車の人気が再燃したことで、水素ステーション拡充の話は鈍化し、現在でもごく限られたエリアでしか整備されていないのが実情です。
そこで「水素ステーション大国」である日本に白羽の矢が立ったものと考えられます。
ヒュンダイとしても、せっかく市販化までこぎつけたFCVをこのまま下火にするわけには行きません。しかし、水素ステーションがなければそもそも走行することすらできません。
水素ステーションが整備されている日本であれば、走行すること自体は可能です。
実際に販売することで市場から得られるデータや知見は、将来の技術開発に役立つことを考えると、計り知れない価値があります。
過去にヒュンダイの日本再進出の報道がされたとき、インターネットには「一度撤退した韓国車が売れるわけがない」「日本車にかなうはずがない」といった否定的な意見が多く見られました。
おそらく、コンパクトカーなど通常のガソリン車ではその通りかもしれません。
しかし、FCVに限ってみれば、トヨタやホンダも市販しているとはいえ、年間1000台にも満たない販売台数です。
つまり、ヒュンダイがネッソで数百台販売することができれば、トヨタやホンダと同等のデータを得ることができるのです。
ミライやクラリティ フューエルセルは、技術的にはすばらしいものですが、デザインでひとめぼれするようなものではありません。
その点、ネッソは流行りのSUVスタイルであり、ミライやクラリティ フューエルセルにありがちな「いかにも感」がありません。
年間数百台であれば、「新しもの好き」の人や希少車ファンなどの「マニア」だけでも、達成する可能性は少なくありませんし、韓国系企業などが社用車として購入する可能性も考えれば、決して夢物語ではないでしょう。
このように、FCVに限ってみれば、ヒュンダイの日本再進出は合理的な判断とも考えらます。一方で、ヒュンダイは日本市場を単なる実験場として見ているわけではないようです。
韓国の主要産業のひとつにエンターテインメント産業があります。いわゆる韓流アイドルは、日本のみならず世界でも爆発的な人気をおさめており、韓国にとって重要な外貨獲得の手段になっているといわれています。
とくに日本では、若年層を中心に、ファッションやメイクなども含めて韓国文化が受容されています。
歴史的な背景から、日韓関係は常に緊張を極めていることも事実ですが、一方でもっとも身近な国のひとつとして文化的・経済的交流が盛んという側面もあります。文化的・経済的交流の先頭に立っているのは、10代や20代の女性を中心とした若年層です。
こうした若年層は、いますぐにヒュンダイのターゲットになることはないかもしれません。
しかし、ヒュンダイが日本市場に再進出して実績をたくわえ、FCVが現在よりも市民権を得たとしたら、現在の若年層はメインターゲットになるでしょう。
FCV先進国である日本で多くの販売実績を持っていれば、世界中で販売できるかもしれません。
おそらくそれは10年以上先のことかもしれませんが、巨大な財閥をバックに持つヒュンダイは、10年間実績をたくわるために投資するだけの体力があります。
つまり、韓国にポジティブなイメージを持っている若年層とともに、FCVを成長させていこうとしているのです。
これを裏付ける証左として、前述のヒュンダイ・ジャパン公式Twitterでは、主力モデルである「アイオニック」と韓国の人気アイドルグループである「BTS」のコラボレーションについて、複数回紹介しています。
また、2020年9月16日から22日に東京・代官山で開催されるヒュンダイのイベントでは、数量限定でBTSグッズが配布されることも明らかになっています。
インターネット上の反応を見ても、BTSとのコラボレーションは好意的に受け止められているようです。
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日本語公式ホームページの公開、ネッソのWEBカタログの公開、国土交通省によるネッソの型式認定の取得など、さまざまな背景から、ヒュンダイの日本市場再進出は秒読み段階であることは確実です。
しかし、具体的な日程や販売方法、価格などについての公式な発表は依然としてありません。また公式ホームページ上にも、問い合わせ先の記載もありません。
おそらく、手続き上は再進出の準備はほぼ完了していると思われますが、ヒュンダイほどの大企業が日本へ再進出するとなると、国内外の経済へ与える影響も大きく、また政治的な影響も考慮する必要があることから、慎重にタイミングを図っているのかもしれません。
また、ヒュンダイとしても、歴史的な背景からネガティブな反応が避けられないことも承知しているでしょう。そのため、SNSや小規模なイベントを通して市場の反応を伺っているとも考えられます。
いずれにせよ、ヒュンダイからの発表が待たれるところです。
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