今はもう無い!? かつて存在したクルマの装備品5選
ひと昔前はよく見かけたのに、いまではすっかり見なくなったクルマの装備は数多くあります。今回は、懐かしのクルマの装備品を5つ紹介します。
あの頃は一種のステータスであった装備も、今や過去のものへ
ひと昔前はよく見かけたのに、時代の移り変わりによるニーズの変化によって絶滅危惧状態になったともいえるクルマの装備品はいくつかあります。
今回は、最近見かける機会が減ったクルマの装備品を5つ紹介します。
●リトラクタブルヘッドライト
クルマのフロントデザインで重要なアイテムがヘッドランプです。その形状で特徴的なのが、必要なときだけボディから出てくる「リトラクタブルライト」でしょう。
量産車でリトラクタブルライトを採用した初めてのクルマは、1962年の初代「ロータス・エラン」とされています。
国産車で初めてこの格納型ランプを採用したのは、そのエランに影響を受けたとされる1967年デビューのトヨタ「2000GT」です。エランは空力特性の向上を目的に、2000GTは前照灯の高さ法規制をクリアするために採用したとされ、その後、フェラーリやランボルギーニが積極的に採用し、スーパースポーツの象徴となりました。
しかし、2002年8月にマツダ「RX-7」の生産終了をもって国産のリトラクタブルヘッドライト採用車は無くなりました。
そして、2005年2月11日にシボレー「コルベッド」のフルモデルチェンジにより、リトラクタブルヘッドライトは新車市場からも消滅しました。
●コラムシフト式マニュアルトランスミッション
日本自動車販売協会連合会の統計によると、日本の乗用車販売(軽自動車と輸入車を除く)におけるAT車とMT車の構成比は、1985年にAT車は48.8%と半数に満たなかった状況でした。
しかし、1990年代になって急速に日本でのAT化が進みます。AT車は、1990年に72.5%となり、2000年には91.2%になっています。その後もAT車の構成比は上がり、2016年に販売された乗用車では、約98.4%がAT車となりました。
そんな絶滅危惧のMT車にいて、すでに絶滅してしまったのが「コラムMT」です。現在、50歳以上のドライバーであれば、コラムシフトの3速MT車が教習車だった人も多いでしょう。
以来、数年前まではコラムシフトの牙城でもあったタクシーの一部で生き残っていたコラムMTは消滅、商用車の4速コラムMTもフロア式やインパネ式のMTシフトになっています。
なお、コラムMTの3速と4速ではシフトパターンがかなり異なり、4速に慣れていないドライバーはリバースギア位置が分からず苦労していたようです。
●ODスイッチ
トランスミッション関係では、「OD付き4速AT」というシステムも絶滅危惧種といえます。1980年代半ばまでトルコンATは3速が一般的でした。
そのなかで、高級車やスポーティカーの一部に、この「OD付き4速AT」が装備されました。ODスイッチをONにしておけば4速(OD:オーバードライブ)まで自動でシフトアップされますが、燃費を稼ぐため相当なハイギアード設定だったことから、エンジンブレーキはほとんど効きかなかったといいます。
そこで、長い下り坂やワインディングなどではODを切って3速で走るため、ODスイッチがシフトレバーに装備。
当時の4速ATの変速ロジックはメーカー毎に異なっていて、ODをカットすると3速を維持するタイプと、1速から3速間で自動変速するミッションがありました。
また、メーカーによってはODボタンを廃しシフトポジションを「R-P-1-2-D3-D4」とし、D3を選択時にシフトロックボタンを押すと3速を維持するクルマもありました。なお、1速から2速を選ぶと選択したギアがキープされ、雪道などで重宝する2速発進も可能でした。
●電動ロッドアンテナ
クルマの車載オーディオにおいて、ラジオ受信のためのアンテナも時代とともに変わってきたアイテムです。ひと昔前では、前後フェンダーのなかに内蔵する「電動ロッドアンテナ」が主流でした。このアンテナは、商用車などでAピラーに装着されて一般化していきます。
電動ロッドアンテナは、車載AM/FMチューナーのスイッチON/OFFに連動してアンテナが伸縮し、アンテナを手動で引き出す手間が省ける便利な装備です。
1970年代から1980年代には、高級車向けアンテナとして装備されたほか、エンジンを切ると自動的に収納するタイプの電動アンテナもありました。
しかし、1990年代には前後ウインドウに貼り付けるシールタイプのアンテナや、ルーフアンテナが主流となり、ロッドアンテナは段々と姿を消していきます。
また、その後はシャークフィンアンテナなどに進化し、ラジオだけでなくワンセグやテレマティクス、カーナビなどにも対応していきます。現在では、より多彩でスポイラーやダッシュボード内蔵タイプなど高性能化しています。
●灰皿&シガーライター
厚生労働省による「2018年全国たばこ喫煙者率調査」によると、成人男性の平均喫煙率は27.8%でした。 これは、1966年以降のピーク時の83.7%と比較すると、約50年間で56ポイント減少しています。
年代別にみると、急激な喫煙率の減少傾向が見られる60歳以上は21.3%、30歳代から50歳代は35%ほどで推移しています。
成人女性の平均喫煙率は8.7%であり、ピーク時の1966年より次第に減っています。 女性で喫煙率が一番高い年代は40歳代の13.6%、最低は60歳以上の5.4%。そして、年々強まる禁煙ブームにともない、クルマからは灰皿が消えています。
かつて喫煙人口が多かった時代、灰皿はインパネから引き出すタイプやドア部分に内蔵されているものなど、「標準装備」が一般的でした。
同時に電熱式シガーライターも当然のように装備されていましたが、現在ではその存在すら知らない世代も多いです。現在、オプションとして用意される灰皿も、その多くはドリンクホルダーに置くボトル型です。
また、タクシーは2008年1月より全面禁煙へ、レンタカーでも多くの会社で喫煙車がホームページ上から抹消されるなど、自家用車以外でも禁煙は一般化しました。「クルマでタバコ」という概念はもう時代遅れかもしれません。
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都内の自動車アクセサリー店スタッフは以下のように話します。
「当店では、1990年代から2000年代初頭にかけて、車外・車内アクセサリーの売上は一時期落ちました。しかし、最近では後付けの灰皿や空気清浄機などのシガーソケットグッズ、スマホ関連グッズなど、車内アクセサリーは売れています。割合的には、クルマ自体にお金をかけるより、車内を充実させる方が増えたのではないでしょうか」
標準装備品は重視せずに自分でクルマを充実させていく、クルマにまつわる装備品の捉え方も、時代によって変化があるようです。
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