陸自の戦車に変化が? 総火演で見た花形は戦車じゃなかった
これからの国防はどうなる?
16式の攻撃力は90式や10式などの戦車には劣りますが、74式戦車とほぼ同等といわれており、島しょに上陸してきた敵の侵攻へ初期攻撃をするには十分であると、防衛省は考えているようです。
16式機動戦闘車をはじめとする装甲戦闘車両は、その車重から艦船だけでなく航空機によって運ぶことも可能です。航空自衛隊が2016年から運用を開始したC-2輸送機は、ギリギリですが26t程度とされる16式機動戦闘車を空中輸送できるといわれています。
2019年度の演習にお目見えした19式装輪自走155mmりゅう弾砲の車重も24t以下であり、やはり空中輸送が可能です。戦場となった島しょにC-2が離着陸できる飛行場があるかという問題が出てきますが、それでも戦車を艦船で運ぶよりも格段に短時間で部隊を展開できるというメリットがあるのです。
演習の後半では、島しょ防衛を主眼とした兵器の運用方法が展示されていましたが、まず戦闘車両で初期の防衛攻撃をおこない、戦車が着いたところで、敵の掃討をおこなっていくという作戦が取られていました。
さて、このように兵器の運用のシチュエーションが変わったということもありますが、自衛隊の装備が変化しているのは、防衛予算という切実な問題もあります。
2019年度の防衛予算は、18年度当初比で1.3%増の5兆2574億円となり、5年連続で過去最高を更新しています。
2012年度から防衛予算が右肩上がりとなっていますが、装備の急速な近代化と変革を迫られている自衛隊は、必ずしも潤っていないというのが実情のようです。
私たちの生活同様に、物価の上昇によって生産コストや各維持費がかさみ、じつは自衛隊の各兵器の稼働率が低下しているともいわれています。
陸上兵器でいえば、戦車の維持費は非常に高め。仮に10式戦車を30年運用する場合、1年あたりにかかる維持費は3000万円以上というデータが出ています。90式や74式についてはさらに旧式のため、運用コストは、さらに高価であることに違いはありません。
一方、戦車に比べて装輪戦闘車は、維持・運用がしやすいようです。たとえば、輸送を考えただけでも、前述のように専用の運搬車が必要な戦車に対して、装輪戦闘車は自走が可能です。戦車は時として、民間の運搬車を借りて移動することもあるそうなので、そのコストだけでも違いが出てきます。
防衛省と陸上幕僚監部は、現在配備されている90式戦車を廃止し、順次16式装輪戦闘車に切り替えていく意向です。
もちろん戦略上、圧倒的な火力と高い悪路走破性を持つ戦車がなくなることはないといえますが、今後の怪獣映画に登場するのは、ほとんどがタイヤを持った車両、ということになるかもしれません。
Writer: 山崎友貴
自動車雑誌編集長を経て、フリーの編集者に転向。登山やクライミングなどアウトドアが専らの趣味で、アウトドア雑誌「フィールダー(笠倉出版社刊)」にて現在も連載中。昨今は車中泊にもハマっており、SUVとアウトドアの楽しさを広く伝えている。
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