“農道のポルシェ”スバル「サンバー」も? 独自性無くなったクルマ業界のOEM事情とは

自動車メーカーが販売するモデルには、自社で開発・生産する以外に他メーカー製のものを外観やエンブレムを変えて販売することがあります。これを「OEM車」といいますが、ユーザーにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

クルマ業界におけるOEMの仕組みとは

 クルマの世界ではOEMが発達しています。OEMとは、供給する相手先のブランド名で、商品を製造することです。例えばスズキは、供給相手となるマツダのブランド名で、「ワゴンR」と実質的に同じ「フレア」を製造しています。同様にスズキ「スペーシア」でも、マツダ「フレアワゴン」として供給されているのです。

 軽自動車には、このようなOEM車が多く最も発達しているのは軽商用車ですが、自社開発ではないOEM車にはどのような特徴があるのでしょうか。

『農道のポルシェ』といわれたスバル「サンバー」もいまやOEM車

 スズキ「エブリイ」は、マツダ「スクラムバン」、日産「NV100クリッパー」、三菱「ミニキャブバン」として、3社に供給。製造するスズキを含めれば、乗用車メーカー8社の内、4社が同じクルマを扱っているほか、ダイハツ「ハイゼットカーゴ」も、スバル「サンバーバン」、トヨタ「ピクシスバン」として供給されるため、3社が販売しています。

 直近では、2019年3月28日に、日産「デイズ」と三菱「eKシリーズ」がフルモデルチェンジを行いました。この2車種は、日産と三菱が合弁会社として立ち上げたNMKVによって共同開発されたので、OEM車ではありません。

 それでも、新型「デイズ」&「eKシリーズ」は、日産が開発し、三菱の水島製作所が製造していることからOEMに近い業務提携といえます。

 小型・普通車では、ダイハツの「トール」が、トヨタ「ルーミー/タンク」、スバル「ジャスティ」として供給され、スズキ「ソリオ」は、三菱「デリカD:2」としても販売。

 OEMの目的は、経済的な負担を高めずに、効率良く車種の品ぞろえを整えることです。たとえばスバルは、かつて軽自動車を自社にて開発・製造・販売を行っていました。それを水平対向エンジン搭載車に絞って効率を高めるため、軽自動車の開発・製造から撤退します。

 このときに販売まで終了すると、軽自動車のユーザーは、スバルから離れてしまいます。そうなれば販売会社は、車検や点検、保険などの仕事も逃してしまうのです。

 OEM車について、自動車メーカーの販売店スタッフは、次のように話します。

「店舗に来店するお客様で始めからOEM車というものを意識される方は少ないです。しかし、販売店側からの観点でいえば、基本的に自社で弱い(力をあまり入れていない)車種を補えるために、ご提案する幅が広がるのは事実といえます」

※ ※ ※

 日産と三菱が軽自動車を共同開発した理由も、効率を高めるためです。三菱は以前、軽自動車を自社開発していましたが、薄利多売の商品だから三菱の販売網では足りません。

 一方の日産は、小型・普通車と他社の軽自動車を併用するユーザーが多いことに注目して、2002年から軽自動車のOEM車を扱うようになりました。

 そこで日産と三菱の利益が一致して、合弁会社のNMKVを作り、2013年に先代(初代)日産「デイズ」と3代目「eKシリーズ」を発売したのです。

 ひとつのメーカーだけでは、軽自動車の開発・製造・販売が成り立たたなくても、複数のメーカーが提携すれば可能となり、日産と三菱の提携や軽商用車の幅広いOEMは、儲かりにくい軽自動車ビジネスでは不可欠といえます。

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