なぜクルマを“誘導する掛け声”は「オーライ」? その歴史は“100年以上”…定着したワケとは
クルマを誘導する際の掛け声として広く浸透している「オーライ」。そこにはどのような背景があるのでしょうか。
100年以上の歴史をもつ「オーライ」、その成り立ちは?
クルマを誘導する際の掛け声の定番と言えば、やはり「オーライ」をおいてほかにありません。
この「オーライ」という言葉は、英語の「オール・ライト(all right)」がもとになっているというのが定説です。
「オール・ライト」は「大丈夫」や「問題ない」という意味であり、クルマを誘導する際の掛け声として最適のように思われます。
ただ、その成り立ちは意外にも古く、1890年ごろにはすでに「オーライ」という表現が用いられていたようです。
日本に「オーライ」の掛け声を持ち込んだのは、明治期に英国からやってきた鉄道関連の技術者たちだったようです。
いわゆる「お雇い外国人」と呼ばれる彼らは、日本政府からの要請により、当時最先端であった英国の鉄道技術を日本に持ち込みます。
そして、そんな彼らが用いていた「オール・ライト」を日本人が真似しているうちに、「オーライ」へと変化していったと考えられます。
ただ、この時点の「オーライ」はあくまで専門用語のひとつにすぎず、多くの人々が耳にする機会はありませんでした。
「オーライ」が広く一般に用いられるようになったのは、「乗合バス」が急増した1920年代に入ってからだとされています。
1920年代、東京などの都市部ではモータリゼーションが急速に進み、わずか数年のうちに乗合バスは数倍に増加したといいます。
乗合バスの増加とともにバスの誘導員も増えたことは想像に難くありません。
そして、彼らが鉄道の専門用語であった「オーライ」を用いたことで、この表現がさらに多くの人々に知られるようになったと考えられます。
ちなみに、1929年に刊行された辰野九紫の短編小説『青バスの女』では、都内を走る乗合バスの女性車掌のようすがユーモアたっぷりに描かれています。
「オーライ」という表現が浸透した背景には、乗合バスの車掌が「花形」であったことも関係しているのかもしれません。

「オーライ」には数多くのメリットがある?
一方、「オーライ」という表現がこれほどまでに定着したことについては、いくつかの言語学的な要因も考えられます。
まず、「オーライ」は母音を中心とした発音であり、離れた場所からでも聞き取りやすいという特徴があります。
誘導の現場では、エンジン音や周囲の騒音がある中で、短く、かつ明瞭に伝わる言葉が求められます。
そういう意味で、「オー」という伸ばす音をふくむ「オーライ」は、遠くまで通りやすい音として最適です。
また、「オーライ」には「まだ大丈夫」「もう少し」といったニュアンスを込めやすいという柔軟性もあります。
実際の誘導現場では、単に「オーライ」と繰り返すだけでなく、「はい、オーライ」「もう少しオーライ」のように、微妙な間合いや距離感を伝える言葉として使われることも少なくありません。
つまり、「オーライ」は単なる「OK」という意味を超えて、誘導という共同作業における一種のコミュニケーションツールとして機能してきたというわけです。
もちろん、建設現場のようなより正確性の求められる誘導現場では、「ストップ」や「切り返し」といった具体的な表現が用いられることもあります。
それでも、ほとんどの場合で「オーライ」が基本的な誘導の掛け声となっているのは、100年以上の歴史と言語学的メリットに裏打ちされたその汎用性と柔軟性によるものであると言えそうです。
そのように考えると、「オーライ」という掛け声は、日本の自動車文化のひとつと言っても過言ではなさそうです。
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ただ、近年ではバックカメラやパーキングセンサー、さらには自動ブレーキなどの駐車支援システムなどの技術が普及したことで、人間による誘導そのものが減少していると言われています。
こうした状況が進めば、「オーライ」という掛け声を耳にすること自体がめずらしくなるのかもしれません。
Writer: Peacock Blue K.K.
東京・渋谷を拠点とするオンライン・ニュース・エージェンシー。インターネット・ユーザーの興味関心をひくライトな記事を中心に、独自の取材ネットワークを活用した新車スクープ記事、ビジネスコラム、海外現地取材記事など、年間約5000本のコンテンツを配信中。2017年創業。

















