2018年スーパーGT開幕戦、NSX GT3は苦いデビュー 次戦富士へ気持ち切り換え

4月8日(日)、2018年の開幕戦を飾るスーパーGT 第1戦「OKAYAMA GT300KM RACE」が開催されました。今年から参戦するNSX GT3マシンの開幕戦はどのような結果になったのでしょうか。

残念なアクシデントにより、開幕戦はリタイア

 4月8日(日)、岡山国際サーキットで、2018年の開幕戦を飾るスーパーGT 第1戦「OKAYAMA GT300KM RACE」が開催されました。

スーパーGT開幕戦 決勝レース

 土曜日に行われた公式予選で「♯34 Modulo KENWOOD NSX GT3」(34号車)は、残念ながら予選Q1を突破できず16番手スタート。予想以上の寒さからフロントタイヤを十分に暖めることができず、その実力を十分に発揮することができませんでした。ご存じの通りNSX GT3はエンジンを車体中央に搭載する「ミドシップ」マシン。フロントに十分な重さを掛けることができず、レーシングタイヤを暖めることが難しいのです。

 しかし日曜日、決勝前のウォームアップ走行では、僅かに気温が上がったために状況が好転。エースドライバーである道上龍選手はこれに手応えを感じ、スターティンググリッドにマシンを並べた段階で「NSX GT3」のセッティングを変更しました。具体的にはリアサスペンションの車高を落とし、スタビライザーを調整して、フロントタイヤに圧力が掛かりやすくしたのです。

 迎えた決勝レース。中断に埋もれながらも「♯34 Modulo KENWOOD NSX GT3」は素晴らしい走りを披露します。

 スタートドライバーを務めたのはエースである道上 龍選手。レースは団子状態のなか順位こそスタートから1つ下げた17位を維持した状態でしたが、純粋なラップタイムは序盤から1分28秒台に入るハイペースであり、周囲のライバルに比べて速い状況となっていました。

 そして迎えた19周目。残念なアクシデントが起こりました。

 34号車の前を行くのは日産「GT-R NISMO GT3」でした。ストレートスピードこそNSXがやや劣るものの、ブレーキングの安定感ではNSX GT3が有利な状況。これは後からわかったことですがNSX GT3は序盤の混戦でマフラーエンドを潰されており、排気抵抗が大きくなっていたのです。

 スポーツカーとしてエンジンを低く車体中央に搭載するNSXは、制動姿勢が安定していたのです。またコーナリングスピードでは明らかに速かったことから道上選手はバックストレートでのブレーキングに備えていました。

 しかし180度近く曲がり込むようなタイトなヘアピンコーナーへのブレーキングで、道上選手はこのGT-Rに追突してしまったのです。予想以上にGT-Rが早くブレーキングを開始したことから、その減速に対応が遅れてしまったのです。

 この追突によってGT-R NISMO GT3はコースアウトしてマシンを大破。そのままリタイアとなってしまいました。このアクシデントでドライバーは胸椎骨折となってしまいましたが、幸いにも命に別状はありませんでした。

 追突のアクシデントにより大きなダメージを負った34号車のNSX GT3はなんとかピットまで自走しましたが、既にフロントバンパーが壊れ、さらにエンジンを冷却するラジエターも破損した状態となってしまったことから、チームはリタイアを選択しました。

 非常に苦いスタートとなってしまった岡山ラウンド。しかし幸いにマシンは修復が可能な見込みであり、チームも次戦に備える主旨をコメントしました。

残念なアクシデント後、ピットに戻った「♯34 Modulo KENWOOD NSX GT3」

●道上龍選手
「スタート直後に後ろからの追突に見舞われ、走行に問題ないと思っていたが、全チームが僅差で 走行する混戦状態となり、前方を走行するマシンをオーバーテイクする際に追突するアクシデントが発生してしまいました。今回のセッティングには良い手応えを感じていた分、大津選手につなげることが出来なかったことがとても悔やまれます。

 久しぶりのSUPER GTであり初めてのGT300、このクラスならではの難しさを痛感した開幕戦となりました。次戦の富士ではテストで良い結果を出しているので、チームメンバーのためにも気持ちを切り替えて取り組みたいと思います」

●大津弘樹選手
「予選では自分の満足のいく仕事が出来なかったので、そこは自分の勉強するべきところだと反省しています。GT300クラスは台数も多いため、中盤はトラフィックも多く混戦になりがちなので、今回のアクシデントの原因を作ってしまったのは予選結果を決めた自分の責任もあると思っています。開幕戦の経験を活かし次戦に向けてチーム一丸となり頑張ります」

●チョン ヨンフン監督
「初めてとなるこのレースでは、何が起こるか分からないという気持ちは正直あったのですが、マシンのセッティングが良かったため、手ごたえを感じる事ができました。今回はアクシデントでリタイヤとなってしまいましたが、マシンのセッティングや作り込みで手応えを感じられたので、チームと共に第二戦に向けて準備し、ポイント獲得へとつなげたいと思います」

 スーパーGT 第2戦は5月3日(木)/4日(金)に開催される「FUJI500KM RACE」。テストでも好感触をつかんでいる富士スピードウェイで、NSX GT3の活躍を期待したいと思います。

【了】

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Writer: 山田弘樹(モータージャーナリスト)

自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。レース活動の経験を活かし、モータージャーナリストとして執筆中。並行してスーパーGTなどのレースレポートや、ドライビングスクールでの講師も行う。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

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