スズキ「ジムニー」新旧試乗比較! 新型は旧型に比べて何が変わったのか?
旧型ジムニー(3代目)と新型ジムニー(4代目)の乗り味はどうちがうのか?
では、実際に試乗するとどうでしょう。新開発フレームとサスペンションがもたらしたものは歴然。3代目に比べ、操縦安定性や乗り心地も格段に進化しています。「クロスカントリー4WDは乗り味が悪い」という既成概念を、ついに変えたという感動があります。また、剛性アップのおかげでハンドリングもシャープになり、高速でのレーンチェンジも不安なくおこなうことができます。
これまでの歴代ジムニーでは、エンジンに対しても不満を持つ人が少なくありませんでした。まず、3代目「ジムニー(軽自動車)」に積まれていた「K6A型直列3気筒インタークーラーターボエンジン」は、ショートストロークのためどちらかというとコントロール的に神経質な部分がありました。
しかし、4代目ジムニーに搭載されている「R06A型インタークーラーターボエンジン」は、発進直後から十分なトルクを発生。オフロードでも非常に扱いやすいものになり、高速道路でも80km/hからの加速が楽になりました。
高速道路と言えば、4代目ジムニーのATミッションには、新たにロックアップ機構を採用。3代目ジムニーに見られた再加速時のATミッションの“滑り現象”がなくなりました。ATミッションの変速タイミングも見直され、非常にスムーズな加減速をおこなうことができるようになっています。
実は、今回の4代目「ジムニーシエラ(小型自動車)」こそモデルチェンジの目玉と言ってもいいでしょう。
従来のジムニーシエラは、1.3リッターエンジンを搭載していましたが、長い勾配が続く高速道路では100km/hをキープするのも難しいことが多々ありました。場合によっては0.6リッターエンジンを搭載する軽の「ジムニー」の方が力強く加速していくことも珍しくなかったのです。
国内で3代目「ジムニーシエラ」の人気がなかったのは、この動力性能が要因だったと言っても過言ではありません。4代目「ジムニーシエラ」には、インドネシア向けミニバンに積まれていた「K15B型1.5リッターDOHCエンジン」を搭載。これにより、今までのネガティブなイメージを完全に払拭しました。
高速道路では、80km/hから十分なトルクが立ち上がり、パワーもアップしたため、伸びやかに加速していきます。0.6リッターエンジンに比べると、明らかなアドバンテージがあります。また、オフロード走行でもこの太いトルクが遺憾なく発揮され、砂地や泥濘地でもグイグイ進むことができます。
オフロード走行では、路面に対するアプローチ(対障害角度)も、4代目「ジムニー」では大きく変わりました。まず、副変速機(サブトランスファー)は、3代目「ジムニー」のスイッチ式から2代目「ジムニー」までの手動レバー式に戻りました。これは、より確実な操作を追求したためです。
4代目「ジムニー」と3代目「ジムニー」で最も異なっているのは、「ブレーキLSDトラクションコントロール」が全車標準装備になったことです。ブレーキLSDトラクションコントールとは、ABSのユニットを逆転させ、タイヤの1輪が空転したらブレーキをかけ、反対側のタイヤの駆動力を復活させるという差動制限装置です。
「ブレーキLSDトラクションコントロール」の効力は絶大です。まず、3代目「ジムニー」だったら上級テクニックが必要だった泥や砂、深雪などのオフロードにおいても、アクセルペダルを踏んでハンドルを操作するだけで走破することができるのです。
また、そうした悪路走行でトラクション(前に進むための摩擦力)を得るには、専用のオフロードタイヤの装着が必須でした。しかし、この装置があれば、トレッド面の溝が浅いオンロード用タイヤでも、驚くべき悪路走破性を得ることができます。
この他、衝突軽減自動ブレーキなど多様な安全装備を搭載するスズキの予防安全技術「スズキ セーフティ サポート」が上位グレードに標準化(その他グレードではメーカーオプション)することも、時代の変化を表していると言えるでしょう。
新世代の新型「ジムニー(4代目)」は、万人に受け入れられるクルマに進化しました。オフロードを進むという特別な性能を持っている一方で、日常ではさらに普通に乗れるようになったのは大きな進歩です。
もはや、クロスカントリー4WDやSUVという枠を超えた、「究極のクルマ=ジムニー」と言えるでしょう。
【了】
Writer: 山崎友貴
自動車雑誌編集長を経て、フリーの編集者に転向。登山やクライミングなどアウトドアが専らの趣味で、アウトドア雑誌「フィールダー(笠倉出版社刊)」にて現在も連載中。昨今は車中泊にもハマっており、SUVとアウトドアの楽しさを広く伝えている。