2023年10月のジャパンモビリティショー2023で三菱自動車工業（以下、三菱）が出展した「D：X Concept（ディーエックスコンセプト）」は、同社のイメージであるタフさや無骨さに、先進性が組み合わせられたコンセプトモデルでした。
　
　間違いなく次期型「デリカD：5」を示唆するモデルとみられますが、ひょっとすると次期デリカD：5だけでは留まらないかもしれません。

　D：Xコンセプトは、超先進的なスタイリングをもちます。

　TシェイプのヘッドライトやLED前照灯、インテリアなどのディテールは、コンセプトモデル特有の斬新さや先進性ゆえの「荒さ」はあるものの、その佇まいは紛れもなく「デリカD：5」の近未来を想起させます。

　ボディの骨格には、デリカD：5でも採用されている「環状骨格構造リブボーンフレーム」の強化版が投入されています。

　ワンボックスタイプの広い室内空間には6人乗りの3列シートが据えられており、助手席シートは180度回転することができ、後席乗員と会話を楽しむことも可能。

　またフロントウィンドウの下部には「シースルーボンネット」が採用されており、助手席側のダッシュボードの足元まで配置した液晶パネルに前方の映像を映すことで、車両前面のすぐ下が確認できるため、オフロードを走る際のガイドになるといいます。

　まさにデリカD：5が築いてきた高い走破性をさらに深化させた「絶対安全大空間×絶対走破性」のコンセプトが、見事に発揮されています。

　また、プラグインハイブリッド車である点も注目すべきポイントです。三菱が得意とする電動4WDシステム「S-AWC」も搭載されており、現実的な次期デリカD：5のイメージが膨らみます。

　もちろんこのままの姿で登場することは考えにくいですが、そう遠くないうちに三菱から何らかのアナウンスがあると考えられます。

　ただ冒頭でも触れたように、D：Xコンセプトは次期デリカD：5に留まらない、ほかの可能性も秘められていると筆者（自動車ジャーナリスト 吉川賢一）は考えています。

　2024年5月に北米三菱が発表した5か年事業計画「モメンタム2030」において公開した、将来登場することを示唆していると思われるクルマのシルエット画像には、複数のSUVに混じってD：XコンセプトにそっくりなTシェイプのヘッドライトの背高なモデルも含まれていました。

　そのほか新型の大型SUVらしき姿も確認でき、これが次期「パジェロ」なのではないかと期待が高まっています。

　デリカとパジェロは元々、プラットフォームを共用した兄弟車でした。

　新型デリカD：5（D：6!?）が登場すれば、新型パジェロが誕生してもおかしくはなく、かたや「SUVミニバン」、かたや「クロカンSUV」と、ラインアップの棲み分けもできます。

　大型ピックアップトラックで本格的な四輪駆動を備える新型「トライトン」が日本国内で発売され、受注好調という状況を考慮してみても、パジェロ復活の可能性は決して低くはないのではないでしょうか。

　さらに期待されるのが、三菱とアライアンス関係にある日産にも、同様のシステムやプラットフォームを搭載したミニバンが登場するシナリオです。それが次期型「エルグランド」です。

　ジャパンモビリティショー2023で日産が出展した、次期型エルグランドを予感させるコンセプトカー「ハイパーツアラー」は全個体電池のバッテリーEVであり、あと2～3年のうちに発表できるかどうかというと、少し考えにくいと思います。

　日産がエルグランドを再び「キングオブミニバン」へと引き上げるべく、三菱のPHEVユニットやプラットフォームを譲り受ける可能性は大いにあるのではないでしょうか。

　三菱の新型デリカD：5、新型パジェロ、そして日産の新型エルグランド。姿やコンセプトは違いますが、いずれも長く続いている名門ブランドです。

　2025年以降、果たしていつどのクルマのフルモデルチェンジが発表されるのか、非常に楽しみです。