毎年、お正月といえばさまざまな小売店が「初売りセール」などとうたい、商品の割引やキャンペーンなどを開催するのが恒例となっています。
　
　クルマも同様に、新車販売店では例年正月早々の初売りとしてセールを開催し、新車の値引きなどが企画されています。しかし一方で、新車の納期遅れが問題となっていることもあり、このようなセールは企画・開催できるのでしょうか。

　今回は2022年12月初頭に東京都内のトヨタ、日産、ホンダ、マツダ、三菱、スバル、スズキ、ダイハツの国産車ディーラー計8店舗に直接話を伺いました。

　トヨタの販売店スタッフは以下のように話します。

「年明けの新春セール自体は開催する予定となっています。しかし、新車が安くなるかといわれるとそうではなく、どちらかというと展示車や在庫車販売がメインとなりそうです。

　半導体不足により納車が長期化している問題で、値引きが思うようにできないのが現状です」

　販売店目線では、納期不明な新車に対して値引きをする行為がハイリスクであるため、初売りセールを開催するとはいっても、買い得な新車を用意することは難しいようです。これについては日産やホンダの販売店スタッフも同様のことを話します。

　そのなかで、2023年の初売りセールで販売店が唯一できる策として、貴重な在庫車や展示車の販売を実施することが精一杯の作戦ということになります。

　一方で、展示車や在庫車は限られています。初売りセールに限らず、早期に新車が必要なユーザーに対し、常に即納のためのクルマを集め続けている状況も続いており、セールのためにわざわざ在庫車を用意するほどの余裕もないわけです。

　また、三菱の販売店スタッフは「初売りは例年よりも開催を早め、12月から新春セール価格と同じ内容で在庫車を提供する予定です」と話し、スバルの販売店スタッフも「カタログギフトのプレゼントや下取り車の査定アップを検討中です」と、具体的な値引き以外のアプローチで初売りセールを企画するようです。

　マツダの販売店スタッフは初売りセールについて「初売りはやります」としながらも、販売店の立場としての現状を話してくれました。

「正直、新車を初売りセールで販売したとしても、販売店にとってあまり旨味はありません。仮にいまから注文しても、納車はおおむね来年（2023年）4月以降となる見込みのため、3月末の決算時期に間に合わないからです」

　そもそも初売りセールは、年度末の決算期に向けた新年最初の販売支援策という意味合いもあります。

　しかし納車が間に合わない状況が続いているため、販売店側からすると初売りが売上に影響をもたらす可能性が低いことを暗に示しているようです。

　では、他メーカーと比べると納期も短い傾向にあり、例年年末年始には大々的な初売りキャンペーンのTVCMを打つ傾向にあるスズキやダイハツはどうなのでしょうか。

「スズキでは先行して初売りフェアを開催します。在庫車の値引きやオプションのプレゼントなどを用意しています」

　またダイハツ販売店のスタッフは「新車の値引きは（新春セールでは）予定していません。販売店オプションのプレゼント企画が来年はメインとなる予定です。ただし希望の車種の在庫があって、3月中の納車ができれば、値引きは期待できるかもしれません」

　やはり、スズキやダイハツでも他メーカー同様新車値引きは難しいようで、長納期化のなかで初売りをどうするかについて、悩みのタネであることは変わらないようです。

　このように、2023年の初売りセールでは苦肉の策として下取り査定のアップやカタログギフト、販売店オプションのプレゼントを用意し、お得感を出そうという戦略のようです。

　新春セールを先行して実施する販売店もあり、新車販売店の各社はこの新車長納期化の現状に直面するなか、年度末に向けての販売戦略案にかなり奮闘している様子がわかります。

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　毎年恒例のクルマの初売りセールですが、今回話を伺った販売店ではいずれも、2023年初売りにあわせた特別な新車値引きを期待するのは難しそうです。

　そんななか販売店も打開策を打ち出そうとギフトを用意するなどさまざまなアイデアを練っているようですが、これらが消費者にとって有効なものとなるか注目されます。