やっぱりライバルはハーレー? BMW Motorradの新型モデル「R18B/R18トランスコンチネンタル」の実力に迫る
BMW Motorradは新型モデル「R18 Transcontinental(コンチネンタル)」および「R18 B」の予約注文を8月より開始しました。ハーレーダビッドソンに関する雑誌製作などを行ってきた渡辺まこと氏が試乗して受けた印象を語ります。
ドイツのBMW Motorradらしさを感じるアメリカン・ツアラー
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2018年に開催された我が国最大のアメリカン・カスタムカルチャーの祭典“YOKOHAMAホットロッドカスタムショー”では、当時まだ未発表だったBMW Motorradの新型ビッグボクサーエンジン(水平対向エンジン)の供給を受けた滋賀のカスタムワークス・ゾンが一点物のバイク“DEPARTED(ディパーテッド)”を製作し、見事にその年のベスト・オブ・ショーモーターサイクルを獲得しました。
2020年になると同型のビッグボクサーを搭載した新モデルとし“R18(アールエイティーン)”がデビューしましたが、こうした誕生の経緯を改めて振り返ってみると、1802ccの排気量を誇るモデルが“アメリカン・クルーザー市場”を見据えて、投入されたものであることが容易に伺えるでしょう。ともすれば新たにラインナップに加わった“R18B”と“R18 TRANSCONTINENTAL(トランスコンチネンタル)”は、そのBMW Motorradの姿勢をより顕著に示すものかもしれません。
【画像】BMW Motorradの新型モデル「R18B/R18トランスコンチネンタル」の特徴を写真とキャプションで解説(21枚)
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実際に、新型モデルである“R18B”と“R18トランスコンチネンタル”を見ても、どうしてもハーレーダビッドソン(以下:ハーレー)のツアラー系モデルの影が脳裏にチラつきます。
BMW Motorradサイドの言い分だと「ことさらにミルウォーキーのメーカーさんを意識したものではなく、あくまでも(1936年に生産されたBMW Motorradの)R5からのデザインの流れを受けたもの」とのことですが、やはり“トランスコンチネンタル”に装備されたリアバッグや両モデルに装着された“ヤッコカウル”(ハーレーに装備されたフロントフェアリングの俗称)にも似たフェアリングを眺める限り、その言葉には無理があろうというもの。また走らせてみてもターゲットが「アメリカのミルウォーキーで生まれたVツイン」を明確に見据え、狙ったものであることが伺えました。
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しかし、実際に走らせた際のエンジンフィーリング自体は、あくまでもBMWらしい伝統を感じさせるもので、見た目のとおり、かつて販売されていた“R100RS”や現在もラインナップされているRnineTのボクサーツインをそのまま巨大にしたかのようなフィーリングになっています。エンジンの鼓動感自体はハーレーに軍配があがるように感じましたが、「ドゥロロロロ」とクランクのジャイロ効果を感じる低重心のボクサーが折りなす高速での安定感はかなりのものです。
また、この“R18B”も“トランスコンチネンタル”も、どちらもロック/ロール/レインと3種類の走行モードが変更出来るようになっており、通常のバイクのトラクションコントロールで“スポーツモード”にあたる“ロック”では、“ストリートモード”の“ロール”よりアイドリング時に鼓動感が強調されたかのような印象。スタートダッシュも“ロック”の方が、よりトルクフルに感じます。
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ちなみに車重は“R18B”で398kg、“トランスコンチネンタル”で427kgとハーレーのフル装備モデルと同等くらいあるのですが、走り始めてみるとBMWの方が軽さを感じるものとなっています。
特に重量バランスが優れているからか、軽量であるはずの“R18B”より約30kgほど重い“トランスコンチネンタル”の方が低速域でのハンドリングが優れているように感じられ、タイトなコーナーでもライダーが狙った方向にクルクルと曲がります。
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ちなみにこのビッグボクサー・ツアラーはいずれのモデルもハーレーのツアラーモデルのようにトリプルツリーがネックに対して逆オフセット(フロントフォーク上部の支持部がネックシャフトよりエンジン寄りにある状態)となっているのですが、ハンドリングに妙なクセがなく、「さすがBMW」と思わせてくれるもの。見た目はかなりヘビーなのですが、走らせた印象は意外なほど軽快です。
とはいえ、このBMWツアラー、停車時はかなりの重さを感じるものとなっており、たいして重量が変わらないハーレーのツアラーモデルより重い印象を受けます。クルマのエンジンの如く巨大な1801ccのボクサーツインを搭載しているからか、サイドスタンドがかけられているバイクに跨り、車体を引き起こす際には思わず「オリャ!」と声を出してしまうほどにヘビーな印象です。
こうした点を踏まえてからか、この“R18B”と“トランスコンチネンタル”にはバックギアが標準で装備されているのですが、車体左サイドにあるバックギア用のレバーは使いづらい印象を覚えたのが正直なところ。セルボタンを押すと車体がスルスルとバックしはじめるのですが、こうした操作は慣れが必要なようでしょう。
また慣れといえば、この“R18B”にも“トランスコンチネンタル”にもクルーズコントロールが装備されているのですが、左グリップにある操作ボタンも若干、遠いように感じたのも気になったところです。
これは手の大きい欧米人向けの設計ゆえなのでしょうが、新型のBMWツアラーではこうした点があえて挙げるネガティブなポイントとなっています。
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更に言えば巨大なボクサーツインが左右に張り出している影響で足で行うシフト操作を目視することも不可能な上、シーソータイプのシフトレバーに慣れなければならない部分も気になった点。ハーレーの場合、「カカトで踏み込むとUP、つま先を踏み込むとダウン」になるシーソーシフトでも普通のバイクのようにつま先でシフトをかき上げる操作も容易なのですが、フットボードとシフトペダルのクリアランスが狭いBMWの場合、ほぼそうした操作は出来ないと思った方がいいかもしれません。特にゴツいエンジニアブーツなどで操作するには、ある程度の慣れが必要でしょう。
とはいえ、この“R18B”と“トランスコンチネンタル”。こうした指摘はあくまでも重箱の隅を突く程度のものであり、“バイクとしての出来栄え”を見るとかなり高いレベルに仕上げられています。特に巨大なフェアリングとリアバッグを備える“トランスコンチネンタル”のクオリティの高さは、その車名のとおり、大陸横断の旅に出掛けたくなる快適さです。
近年は2014年の“RnineT”カスタムプロジェクト以降、BMWが“K1600B”や今回のようなツアラーモデルをリリースし、逆にハーレーが“パンアメリカ”のようなデュアルパーパスモデルを生産するという逆転現象が起こっていますが、いずれにしても我々ユーザーが面白いと感じるモデルが市場に登場することは歓迎すべきことではないでしょうか。BMW Motorradの“R18B”と“トランスコンチネンタル”、いずれにしても、どちらも極上のツアラーです。
提供:バイクのニュース
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