ケン・ブロックのドラテクも夢じゃない! 「マスタング・マッハE 1400」の実力とは?
フォードが「マスタング・マッハE 1400」を発表。NASCARにデビュー予定のクルマの魅力をお届けしよう。
電気自動車でモータースポーツ、絶対にあり!
2020年7月21日、フォードは「マスタング・マッハE 1400」を発表した。同年4月23日にフルEVマスタングである「マスタング・コブラジェット1400」プロトタイプを公開しておよそ3か月、フォードが自信を持って発表する完全EVロードロケットの実力はどれほどのものなのだろうか。
マスタング・マッハE 1400がターゲットとした最高出力は、1419ps(1400hp)。プロトタイプはRTRと共同開発された。ベースとなったのは、「マスタング・マッハE GT」だ。
マスタング・マッハE GTのシャシを使い、パワートレインとともにさまざまなセットアップが可能となり、ほかのクルマではできない走行性能を発揮する。
電気自動車はこういうものだと常識的に考えられていることと、本当の電気自動車のパフォーマンスとのギャップを埋めることを目的として、フォードパフォーマンスとRTRが1万時間にも及ぶコラボレーションを経て、マスタング・マッハE 1400は完成した。
RTRビークルズの創設者でモータースポーツでの優勝経験もあるヴァーン・ギッティンJr.は、次のように試乗した感想を述べた。
「まったく! こいつを運転したら、いままで自分が抱いていたパワーとトルクという概念がひっくり返ってしまったよ!
こんな経験、絶叫ジェットコースター以外では初めてだね!」
使用されるモーターは7つ。これはマスタング・マッハE GTよりも5つも多い数だ。3つのモーターはフロントデファレンシャルに取り付けられている。
残りの4つはリアにパンケーキスタイルで取り付けられ、1本のドライブシャフトでデフに接続されており、ドリフトからサーキットレースまで、幅広い調整範囲でセッティングすることが可能だ。
シャシとパワートレインは設定に合わせて変更が可能で、駆動方式も後輪駆動/前輪駆動/全輪駆動と切り替えでき、エネルギー消費とパフォーマンスのデータを開発チームが調査できるように設定されている。
たとえば、ドリフト仕様とサーキット仕様ではフロントエンドの構成がまったく異なるため、コントロールアームやステアリングの変更がおこなわれ、これによりドリフト時の極端なステアリング角度が可能となっている。
パワーデリバリーは、フロントとリアで50:50にも、100:0や0:100にもいかようにも調整できる。ダウンフォースは257km/h(160mph)で1000kg以上を目標としているという。
フォード・パフォーマンスのモータースポーツ・ディレクターMark Rushbrookは次のように語っている。
「課題は、7つのモーターの極端なパワーをいかにコントロールするかでした。マスタング・マッハE 1400は、電気自動車で可能なことのまさにショーケースといっていいでしょう」
NASCARシリーズにデビューする予定のマスタング・マッハE 1400は、新素材のテストベッドとしての役割も果たしている。ボディパネルはカーボンファイバーで構成されているが、ボンネットだけはそれに代わる軽量な有機複合ファイバーで作られている。
●電気モーターのサウンドも悪くない!
マスタング・マッハE 1400の魅力は、フォードが同時に公開したオフィシャル動画を見ると直感的に理解できるだろう。
ヴァーン・ギッティンJr.がマスタング・マッハE 1400をドライブして、4つのステージでスペシャルな「マスタング」に挑戦するという構成だ。その4つのステージと迎え撃つドライバー&車両は次のとおり。
・トラック:ジョーイ・ロガーノ/フォード・ナスカー・マスタング(2019)
・ハンドリング:ヘイリー・ディーガン/フォード・マスタング・シェルビーGT350R(2020)
・ドリフト:チェルシー・ディノファ/フォード・マスタングRTR(2020)
・ジムカーナ:ケン・ブロック/フォード・マスタングHOONICORN RTR V2(1965)
全編、V8サウンドではなくて電気モーターの音が終止するのだが、ジェットエンジンの始動時のようでなかなか昂ぶるサウンドだ。電気自動車は音が静かで物足りないといわれるが、これはこれで非常に勇ましいサウンドである。
また、映像の冒頭で出演車両が横一列に並んでゼロヨンをするかと思いきや、マスタング・マッハE 1400だけがフライングして飛び出していくシーンがあるが、これは歴代マスタングへのリスペクトと捉えてもいいだろう(マスタング・マッハE 1400が圧倒的に速いのは自明の理だ)。
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