“12年ぶり復活”の日産「新型ムラーノ」! 日本初の「ターボエンジン」×9速ATの組み合わせ実際どう? “日本仕様”どんな仕上がりなのか
日産のSUV「ムラーノ」が約12年ぶりに日本へ帰ってきました。今回は一足早く北米仕様の開発車両に山本シンヤ氏が試乗。歴代譲りの美しいデザインや「VCターボ」の力強い走り、そして日本仕様の装備に対するリアルな本音まで、しっかり解説します。
12年ぶりの日本復帰
日産のアッパークロスオーバーSUVである「ムラーノ」が、約12年ぶりに日本の地へと帰ってきました。
初代(Z50型)は「彫刻が走り出すようなデザイン」で北米市場を席巻し、日本でも高い評価を得ました。2代目(Z51型)を経て2015年に国内販売を終了。しかし今回、第4世代へと進化した新型が再び日本の土を踏むことになりました。
ただし、今回の導入劇には過去と決定的に異なるポイントがあります。それは、米国テネシー州スマーナ工場製の「左ハンドル仕様」がそのまま正規販売されるという点です。

この背景にあるのが、いわゆる“トランプ問題”に端を発する日米間の自動車貿易不均衡への配慮です。対日貿易赤字の是正を求める米国のプレッシャーに対し、国土交通省は2026年2月に「米国製乗用車の認定制度」を創設しました。
米国連邦安全基準(FMVSS)適合車の日本導入手続きが大幅に簡素化されたことで、日産はこの枠組みを活用してムラーノの導入を実現させたわけです。
歴代譲りのグラマラスな造形美
今回筆者(山本シンヤ)が試乗したのは日産からお借りした開発車両で、北米本国仕様の最上級グレード「PLATINUM」です。ちなみに実際に日本へ正規導入される市販モデル(SVグレード・4WD/消費税込価格:796万4000円)とはスペックや装備にいくつか差異があります。
例えばタイヤサイズは試乗車が255/50R21だったのに対し、日本導入モデルは255/50R20。車両重量も本国仕様の2013kgから日本仕様では1945kgへと軽くなっています。左側通行に合わせたヘッドランプの配光調整や日本の標識認識ソフト、更には日本専用の適合対策はしっかり施されています。
実車を見てまず感じるのは、全長約4.9m、全幅約2mという堂々たる体躯から放たれる圧倒的な存在感です。

エクステリア全体を見渡すと、前衛的でアヴァンギャルドだった歴代モデルと比べれば少々コンサバにまとめられた印象もありますが、リア周りに視線を移すと一変、歴代譲りのデザインコンシャスっぷりがいかんなく発揮されています。
フロントマスクはアッパー部分がツルンとしつつ、下部にグリルと日産エンブレムを配置し、低重心でワイドなスタンスを強調しています。ホイールの造形や全体の押し出し感はどこか「エルグランド」にも通じる迫力がありますが、サイドは比較的シンプルです。
しかし、サイド後端からグラマラスに大きく張り出したリアフェンダー、そして全幅いっぱいにシームレスに広がる立体的なコンビネーションランプへと繋がるリアエンドのフォルムは実に見事で、デザイナーの強いこだわりを感じさせます。
正直なところ、このエクステリアは好みがはっきりと分かれるでしょう。ですが、街中で周囲に埋没しない強烈な個性があり、ハマる人にはたまらない造形美を持っています。
日本仕様の装備設定に対する「本音」
それだけに惜しいと感じてしまうのが、日本仕様の展開内容です。ボディカラーは白、黒、そして試乗車のようなターコイズブルーの計3色のみと、かなり無難な選択肢に留まっています。
さらに約800万円という車格でありながら、弟分である「エクストレイル」や「アリア」、「キックス」にすら設定のあるパノラミックガラスルーフやBoseプレミアムサウンドが省かれ、試乗車に備わっていた上質なセミアニリン本革シートも日本仕様では合皮止まりとなってしまっています。
もちろん、為替の影響や800万円切りを意識した価格設定、輸入ロットの都合など、SVグレード単一に絞らざるを得なかった販売側の事情は理解できますが、この伸びやかなフォルムと大柄なボディで優雅に長距離をクルージングするキャラクターを思えば、頭上の開放感や音響空間、シートの肌触りといった「情緒的価値」こそ削ってほしくなかったというのが本音です。

とはいえ、インテリアの基本造形そのものは誰が見ても素直に受け入れられる上質でモダンな仕上がりです。
アリアから始まった最新のコクピット思想を受け継ぎ、12.3インチのディスプレイが水平に並び、木目調パネルにアイコンが浮かび上がるハプティックスイッチの触感も良好です。Googleビルトインのナビ画面は英語表記ベースですが、スマートフォンを繋いでApple CarPlayやAndroid Autoを使えば日本語アプリも問題なく使えます。
この仕立ては大衆ブランドの枠を超えた「アッパーメインストリーム」と呼ぶにふさわしく、日産以上、インフィニティ未満という絶妙なポジションを築いています。
VCターボがもたらす豊かなトルク
パワートレインは日本初導入となる直列4気筒2リッター(KR20DDET型)「VCターボ」に9速ATを組み合わせます。最高出力245PS、最大トルク352Nmを発揮しますが、圧縮比を8:1から14:1まで無段階に変化させる可変圧縮比技術を用いているのが特徴です。
走り始めてすぐに実感するのは、極めて豊かな低速トルクです。かつてのV型6気筒3.5リッターを彷彿とさせるトルク感があり、日常域ではアクセルを軽く踏み増すだけで、巨体をスルスルと力強く前へ押し出してくれます。
高速巡航に入ると静粛性は極めて高く、エンジンは遠くで息を潜めている程度で、大陸育ちのグランドツアラーらしい極上の快適性を味わうことができます。
直進安定性も素晴らしく、目地段差の乗り越えでもドッシリとした重厚感があります。コーナリングでは車体の重さを意識させられる場面もありますが、ステアフィールには適度な手応えと骨太感があり、狙ったラインを綺麗にトレースできます。
ラグジュアリーなクルージングSUVでありながら、どこかに日産らしい芯の通った骨太さがしっかり残っている点は、日産ファンにとって嬉しい味付けです。

ただ、走りの面でも気になったポイントはいくつかありました。まずはエンジンの音質です。巡航時は静かなのですが、追い越しなどでアクセルを深く踏み込んで回転数が4000rpmを超えてくると、やや濁音の混じった商用車ライクな4気筒サウンドがキャビンに侵入してきます。
この車格と内外装のエレガントさを考えると、エンジン透過音の遮音やサウンドチューニングにはもう少し手を入れて欲しかったところです。
また、スロットルを踏み込んでから実際にトルクが立ち上がるまでの過渡特性には、ほんのわずかな「タメ」が存在します。
昨今すっかり普及したe-POWERやBEV(バッテリーEV:電気自動車)といった電動車の瞬時なダイレクトレスポンスに身体が慣れてしまっていると、この一瞬のタイムラグがよりシビアに気になってしまうのも事実です。
欲を言えば、トランスミッションの慌ただしいビジーシフトはやめて、アクセルを踏み増した際も安易にキックダウンさせず、もっとエンジンの豊かな低速トルクを信じて粘り強く押し出すような制御のほうが、このクルマの大らかなキャラクターには合っていると感じます。
乗り心地に関しては、試乗車が履いていた21インチタイヤだと日本の荒れた一般道でややバネ下のドタバタ感を拾いがちでしたが、日本導入モデルは20インチへと適正化されるため、アタリの柔らかさや追従性は日本仕様のほうがバランス良く仕上がっていると期待できます。
全長4.9m×全幅2mという大柄なサイズ、左ハンドル、そしてガラスルーフや高級オーディオが省かれた装備設定など、日本の道路環境やユーザー心理を考えるとハードルが少なくないのも事実です。
それでも、エクストレイルの上位モデルを待ち望んでいた日産ファンや、かつてムラーノを愛用していて乗り換え先を失っていたオーナーにとって、待望の選択肢であることに変わりはありません。
アメ車的なおおらかさと、日産エンジニアリングの骨太さが同居したこの味わいは、純国産車にはない独自の魅力を放っています。万能とは言えませんが、個人的には左ハンドルというハードルを越えてでも個性を楽しみたい人にとっては、唯一無二の相棒になれる一台だと思っています。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。





















































































