不思議な「伝説」がある埼玉・所沢市「滝の城跡」とは? 「血の出る松」に“竜が棲む”井戸ってマジか!? 街なかにある「いわく付きの場所」をバイクで行ってみた

埼玉県所沢市の街中に、土塁や空堀、馬出など中世城郭の遺構を色濃く残す「滝の城跡(たきのじょうあと)」があります。豊臣秀吉の「小田原攻め」で落城した歴史に加え、「血の出る松」など不思議な伝説も残る城跡をバイクで訪ねました。

古の佇まいを現代に残す街中の城跡

 埼玉県所沢市にある「滝の城跡(たきのじょうあと)」へ、ツーリングがてらバイクで訪れました。周辺には住宅が並び、すぐ近くの道路をクルマが頻繁に行き交います。ところが城跡へ足を踏み入れると、深い空堀や土塁がしっかり残され、街中とは思えない戦国の景色が現れました。

「滝の城」は、東川と柳瀬川の合流点近くの台地の縁を利用して築かれた平山城です。本郭(ほんぐるわ)、二の郭、三の郭からなる内郭と、それを囲む外郭、出郭(でぐるわ)などで構成され、規模は東西約350m、南北約200mです。

 南側は柳瀬川へ落ち込む高さ約25mの急崖となっており、北側には三重の堀や土塁を設け、自然地形と人工の防御施設を組み合わせています。

 現地に設置された解説板によると、築城は「享徳の乱(きょうとくのらん)」(1455~1482年)や「長享の乱(ちょうきょうのらん)(1487~1505年)など、戦乱が続いた15世紀後半と考えられていますが、当時の城主が誰だったのかは現在も特定されていません。

 発掘調査では扇谷上杉氏(おうぎがやつうえすぎし)と関連付けられる「ウズマキかわらけ」が出土しており、少なくとも同氏の勢力下に置かれていた時期があったと考えられています。

 その後、小田原北条氏が武蔵国へ勢力を広げると、城は北条氏康(ほうじょううじやす)の三男・北条氏照(うじてる)の支配下となり、永禄7年(1564年)には北条方の「つなぎの城」として使われ、下野国方面への出兵時には陣揃えの地になったと伝えられています。

バイクで住宅地のすぐ脇を抜け、「滝の城跡」入口に到着。木製の案内板には本丸跡や空堀などの配置に加え、城よりはるか以前の横穴墓群が発見された場所も示されている。バイクを駐車場へ移動して散策開始
バイクで住宅地のすぐ脇を抜け、「滝の城跡」入口に到着。木製の案内板には本丸跡や空堀などの配置に加え、城よりはるか以前の横穴墓群が発見された場所も示されている。バイクを駐車場へ移動して散策開始

 実際に歩いてみると、この城は縄張りの形が分かりやすく面白いです。民家のすぐ目の前にも堀跡があり、並行する2本の堀からなる「二重堀」の姿も確認できます。

 本郭へ向かう場所には「馬出(うまだし)」も残っていました。馬出は城門の外側などに設けられる小さな防御区画で、敵に直接門を攻撃させないと同時に、守備側が反撃へ出る際の足掛かりにもなります。

 土塁や空堀、馬出を自分の目で追っていくと、「ここから攻めるとどうなるのだろう」と考えながら歩いて楽しめます。

 戦国時代には、多摩西部と北関東の諸城をつなぐ「伝えの城」として重要な役割を担ったと考えられています。しかし天正18年(1590年)、豊臣秀吉による「小田原攻め」が始まると戦火に巻き込まれます。

 現地解説板では、北方から浅野長政(あさのながまさ)勢の攻撃を受け、わずか1日で落城したと伝えています。以後、城として使われることはありませんでした。

 その落城の記憶を思わせるのが、「七曲坂(ななまがりざか)」の「血の出る松」です。かつてここには、傷をつけると血のような赤い樹液を流すという大きな黒松があり、「落城時に討ち死にした城兵の血ではないか」と語り継がれてきました。

 松は1972年に枯れて伐採されましたが、現在も「血の出る松の跡」の碑が残されています。

 さらに、七曲坂を下りた場所には「霧吹きの井戸跡」があるそうです。この井戸には竜が棲み、悪さをするので村人たちが柳瀬川の対岸で祭り騒ぎをしておびき出し、弓で射たという伝説が残ります。

 出郭と城外を隔てる谷には、かつて「金津の滝」があり、この滝が「滝の城」という名の由来になったとも伝わっています。

 血の出る松に竜が棲む井戸……かなりおどろおどろしい城跡です。木々に覆われた場所では薄暗さもあって余計にそれを感じさせますが、実際には周辺道路の交通量が多く、それほど怖さを感じません。むしろ現代の生活圏のすぐ横に、こうした伝説と遺構が残っていることの方が印象的です。

 本郭跡には立派な「城山神社(しろやまじんじゃ)」が鎮座しています。平日にもかかわらず、参拝や城跡見学に訪れる人の姿がちらほら見られ、地域にすっかり溶け込んでいることが伝わります。

 さらに本郭南斜面からは、1976年の工事中に「滝之城横穴墓群(たきのじょうよこあなぼぐん)」も発見されました。調査で9基の横穴墓が確認され、7世紀後半を中心に築かれたと考えられています。城ができる約800年も前から、この台地が人々に利用されていたことになります。

 街中にある城跡なのに、土塁、空堀、二重堀、馬出といった遺構が目に見える形で残っています。住宅の前に堀があり、本郭には神社が鎮座し、その周囲には落城や竜の伝説まで息づいています。

 現代の所沢にすっかり溶け込みながら、しっかりと古の佇まいを残している――その絶妙な距離感こそ、城好きにはたまらない「滝の城」の魅力でした。

【画像】分かりやすくて面白い!! 街中に残る遺構が目に見える形で確認できる「滝の城跡」を画像で見る(21枚)

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Writer: くるまのニュース編集部

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