車体サイズが時代に合致? ハイエースのユーザーも認めるホンダ「N-VAN」の魅力とは
快適な移動を実現するためにシートデザインに時間を掛けた
「もちろん積載に関しては、トランスポーター以外にも徹底的にリサーチを行いました。意外だったのは、一定の荷室容量さえあれば、あとはユーザー任せでいいと気づかされたことです。というのも、例えばコンパネのような資材は床に敷くよう積めることを第一に考えていたのですが、実際には“そんなのは縦だろうが横だろうが入ればいい。それよりも快適に移動できるようにしてほしい”という声が多く、それを受けてシートの設計には時間を掛けました。これまで軽バンを乗り継いできたユーザーなら座ってもらうだけでN-VANの価値を分かって頂けると思いますよ。ドライバーの高齢化も進んでいるため、人に優しい運転環境を目指しました」(山口氏)
そうした配慮は運転席以外のシートも同様のようです。助手席はウレタンに頼らず、スプリングを採用することによって快適性を向上。後部座席に関しても、従来の軽バンが体育座りのようにお尻で体重を支える構造だとしたら、N-VANは低床設計のメリットを活かして下半身全体にそれを分散できるように工夫するなど、着座感へのこだわりが随所に見られます。
「それにN-VANはハンドリングもいいんです。背が高いため、一見不安定に見えるでしょう? でも車体の重心点と空力点(空気の力が集中する場所)がほぼ一緒の位置にあり、高速走行時も横風に強いことが特徴です。こういう形状のクルマの場合、空力点は高い位置にあるのが普通。だからグラグラするんですが、N-VANは見た目よりもずっと低いところにそれがあり、なんならサーキットも走れます」(山口氏)
こうして積載性からシート設計、ハンドリングまで幅広く語ってくれた山口氏は、デザイナーとして様々なアイデアを凝らしたモックアップを多数作り、社内でプレゼンを繰り返してきたそうです。
「N-VANはクルマというよりなんにでも使える“箱”のようなもの。だからこそ、ユーザーの工夫次第で無限の可能性があると思います。アイデアの大半はお蔵入りしたものばかりですが、これからもどんどん提案していきますよ。魅力あるクルマを手に入れ、それが新しい世界の入り口になれば最高じゃないですか。そのためにもまず我々が夢を思い描かないと。採算の話? それは後でいいんです(笑)」(山口氏)
軽バンと言えば実用ありきのイメージもありますが、山口氏にとってのそれは趣味の世界を広げてくれるためのツールでもあります。普段は4輪にはあまり興味のない2輪界の人達がN-VANに強く反応したのも、そういう匂いを感じ取ったからに違いありません。
その意味で実にホンダっぽいというか、ホンダだからこそ作れたクルマが「N-VAN」と言ってもいいでしょう。ユーザーをワクワクさせてくれる、今後の展開にも期待したいところです。
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