2025年8月中旬、神奈川県小田原市内のレンタカー店で発生した奇妙な事件。

　それは、30代主婦が同時期に複数のレンタカー店で合計3台を借りたまま返却せず、外国人に勝手に売却していた…事件です。

　この主婦は1台30万程度で外国人に売却していたとのことです。

　その後、9月上旬にレンタカーは相模原市上溝にある自動車解体ヤードで発見され、被害者の一人であるAさんのところにクルマ（三菱エクリプスクロス）も戻ってきました。

　しかし、テレビ局が9月中旬に30代主婦の家を訪れた際に駐車場には前述とは別の「わ」ナンバーのクルマが停まっていたことがわかりました。

　Aさんの会社からエクリプスクロスを借りて延長を繰り返している間に、実は勝手に売却していたのであれば、逮捕もされず、また新たにレンタカーを借りていたとは驚きです。

　また、別のレンタカーが再び売却されたのかどうかは不明です。

　こうした条件について、法的にいくつか気になる点をアディーレ法律事務所　弁護士　池田昇右氏に伺いました。

――　30代主婦はなぜ、逮捕されないのでしょうか？

　（1）逮捕の要件について（刑事訴訟法199 条1項、2項但し書き）（刑事訴訟規則143条の3）

　逮捕の要件としては、「相当な理由」（嫌疑の相当性）が必要です。また「逮捕の必要」性（被疑者の逃亡、罪証隠滅のおそれ）が明らかにないといえないことも必要です。

　（2）本件では、逮捕されていないということを前提にお話しさせていただきます（逮捕後、勾留されずに釈放されていたり、勾留後に在宅起訴されていたりする可能性もあるため）。

　1.現在捜査中であり、嫌疑の相当性を満たすだけの事実関係の確認や証拠が、まだ十分ではないと判断されている可能性があります。

　2.諸般の事情から逃亡の可能性が低い、いまさら罪証隠滅のおそれもないとして、逮捕の必要性が明らかに認められないと判断された可能性もあります。

　3.逮捕しないまま在宅起訴される可能性もあります。

　4.捜査の結果、そもそも罪を犯したと判断できなかった可能性もあります。

――　再びレンタカーを借りていたことについてはいかがでしょうか？

　再びレンタカーを借りてはいけないという法律があるわけではないので、原則は問題ないと思われます。

　もっとも、契約時の約款次第では、約款に反する事実を隠したまま借りれば、レンタカーを借りたことについて詐欺罪が成立する可能性はあります。

――　８月中旬に借りたレンタカーが、実は勝手に売却されていたことはどんな罪になりますか？

「レンタカーを借りた行為」について。当初から売却する目的でレンタカーを借りたのであれば、借りた行為について詐欺罪（刑法246条）が成立する可能性があります。

　借りた後に、売却を思いついたのであれば、レンタカーを借りたことについての詐欺罪は成立しません。

　上記でレンタカーを対象とした詐欺罪が成立する場合には、売却した行為は不可罰的事後行為（すでに詐欺で評価済みということ）として、不可罰になる可能性があります。

　借りた後に売却を思いつき車に対する詐欺罪が成立しないのであれば、車を売却した行為について、横領罪（刑法252条）が成立する可能性があります。

――　レンタカーのエクリプスクロスを30万円で買ったパキスタン人はおとがめなしでしょうか？

　主婦からクルマを購入し、30万円をしはらったというそのパキスタン人が「盗品その他、財産に対する罪に当たる行為によって領得された物」であることを知って買ったのであれば、盗品等有償譲受け罪（刑法256条2項）が成立する可能性があります。

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　逮捕されない理由はいろいろとありそうですが、レンタカーを再び借りていることは現状では問題ないようです。

「わ」ナンバー車＝レンタカーであり、車検証などをみても所有者欄を見ればその主婦の所有車両じゃないことはすぐわかるはずです。

　また、通常の中古車として買い取る場合もエクリプスクロスの新車（2024年10月登録）となれば30万円という価格は安すぎます。

　本件が今後どのような進展を迎えるのか、引き続き注目していきたいと思います。