2019年12月にデビューしたものの、およそ4年後の2024年4月に生産を終えてしまったトヨタのフルサイズミニバンがあります。
　
　どのようなクルマだったのでしょうか。

　ミニという言葉を使うのがためらわれるほどのフルサイズ“ミニ”バン、トヨタ「グランエース」。

　およそ4年前に発売されたばかりのモデルですが、すでに販売終了となってしまいました。

　ボディサイズは、全長5300mm×全幅1970mm×全高1990mm。同社のラージミニバン「アルファード」（全長4995mm×全幅1850mm×全高1935-1945mm）よりもはるかに大きく、国産車最大級の大きさを誇ります。

　その大きなボディのなかに、3列シート・6人乗り仕様と4列シート・8人乗り仕様がラインナップされていました。

　もともとトヨタが新興国向けに販売している大型商用バン「ハイエース」（H300系／日本未導入モデル）をベースに、豪華な仕様に仕立てたものです。

　外観は、後ろから見ると真四角な迫力のある大きさが目立ちます。

　フロントは、クローム加飾された大型のグリルが強い押し出し感と高級感を演出。ヘッドライトに突き刺さるようなLEDデイタイムランプと、クローム加飾で縁を囲ったプロジェクター式2眼LEDヘッドライトで先進感も感じさせるデザインとなっています。

　ボディサイドでは、クラッディングパネルとスカート下部のクロームメッキモールをリアまで回り込ませることで、重心の低さと堂々したたたずまいを演出しています。

　リアエンドでは、ボディ両端の縦型のリアコンビネーションランプと、バックドアパネルの内側まで続くランプを組み合わせた上、逆L字型のクロームメッキで加飾し、迫力と高級感を演出しています。

　またフロントデザインの特徴の1つとなっているLEDランプの形状がリアコンビネーションランプにも取り入れられ、統一感もあります。

　特筆すべきは室内空間で、スクエアなフォルムを最大限に生かし、室内長3290mm×室内幅1735mmという圧倒的な広さを確保します。

　軽自動車の最大規格サイズは全長3400mm×全幅1480mmですので、グランエースがいかに大きいかがわかります。

　3列シート仕様の「プレミアム」では、2列目と3列目の4席に座り心地を重視した専用のエグゼクティブパワーシートを装備。ロングスライド機構、パワーオットマン、シートヒーター、格納式テーブルを備えます。

　4列シート仕様「G」では、2列目がエグゼクティブパワーシート、3列目は非電動エグゼクティブシート、4列目はワンタッチで座面を跳ね上げて格納できる6：4分割チップアップシートが採用されています。

　なおスライドドアは1000mmの開口幅を取り、後席への乗降性が配慮されています。

　インパネはブラック基調とし、助手席側に木目調加飾とエアコン吹き出し口にクローム加飾を施して華やかさを演出、本革巻きステアリングホイールに木目調加飾を組み合わせ、メーターフードにも表皮巻きと本ステッチを施して上質さを演出しています。

　後席では、フロントシート背面からサイドトリムに向かって木目調加飾を施し、その加飾に沿って優しい光を発するLEDサイドカラーイルミネーションを加えるなど、クールさの中にも落ち着きのある大人の上質感を作り上げています。

　インテリアカラーは、シックなブラック系と明るいアイボリー系が選択できました。

　パワートレインは、最高出力177PS・最大トルク450N・mを発生する2.8リッター直列4気筒インタークーラー付きターボディーゼルに6速ATを組み合わせた後輪駆動となっています。

　安全装備では、先進予防安全技術「トヨタセーフティセンス」を標準装備するなど、先進技術の数々も採用されています。

　 車両価格（消費税込み）は、642万1000円から672万1000円（最終モデル）と、大型ボディのわりにコストパフォーマンスは悪くなかったものの販売台数は低迷したため、2024年4月で生産終了となりました。

　販売ターゲットが法人ということに加え、アルファードが法人需要をすでに担っていたことや、大きいボディサイズがネックとなるなどの理由で売れなかったのではないかとみられます。

　充実した装備と豪華な内外装で「贅を尽くした大型ミニバン」でしたが、思いのほか短命に終わってしまいました。