昨今、背が高く広大な室内空間が確保されたボディを有したミニバンが、家族層を中心に人気を博しています。
　
　そんななか、かつてホンダは全高が低いワゴンボディに3列シート6人乗りも設定されたスタイリッシュなミニバンを展開していました。
　
　一体どのようなクルマなのでしょうか。

　そのクルマとは「ジェイド」です。

　同車は2015年にデビューし、そのスタイリッシュで機能的なデザインが話題となりました。

　当初は3列シートの6人乗り仕様のみの展開でしたが、2018年には2列シートの5人乗り仕様が追加され、ミニバンからワゴンへと進化しています。

　これにより、従来のファミリー向けミニバンの枠を超えた、新しい需要を喚起。

　このモデルチェンジによって、都市型ファミリー層だけでなく、若年層やアウトドアを楽しむアクティブなユーザーにも支持されるようになりました。

　ジェイドの最大の魅力は、その低い全高が生み出すスタイリッシュなデザインと優れた足回りによる走行性能です。

　ボディサイズは全長4650mm-4660mm×全幅1775mm×全高1530mm-1540mmと、同社の代表的なミニバンである「オデッセイ」（全長4855mm×全幅1820mm×全高1695mm）と比較しても、背が低いことが分かります。

　その為、シルエットは、ミニバンでありながらワゴンやクーペを彷彿とさせるスタイリッシュな印象を与えます。

　フロントには2013年から2020年まで発売されていた、同社のコンパクトハッチバック3代目「フィット」に準じたデザインを採用。

　シャープなヘッドライトとメッキがアクセントとなっているグリルが組み合わされ、精悍な表情を演出するほか、サイドにはエッジの効いたラインが入り、躍動感を強調しています。

　くわえて全高の低さによる低重心化が図られたほか、サスペンションは前後に独立懸架を採用し、リアには現在のFF車では少数派のダブルウィッシュボーンを配置。

　これにより、路面の凹凸をしっかりと吸収し、快適な乗り心地を提供すると同時に、コーナリング時の安定感を向上させています。

　特にワインディングロードではその真価を発揮し、ミニバンとは思えないスポーティな走りを楽しむことができるのが特徴です。

　また、ジェイドは日常の使い勝手も考慮されて設計されており、全高が低く抑えられている点で、多くの機械式駐車場に駐車できる仕様となっており、立体駐車場が多い都市部のユーザーにとって大きなメリットとなっています。

　インテリアは、シートのデザインやレイアウトにも工夫が凝らされています。

　3列シート6人乗り仕様では、2列目と3列目のシートアレンジが自由に変更できるため、荷物の多い買い物や旅行時にも対応可能です。

　2列シート5人乗り仕様では、後部座席の広さを確保しつつ、余裕あるラゲッジスペースを提供しており、アウトドアギアや大きな荷物の収納にも適しています。

　さらに、安全性能も抜かりなく、ホンダの先進安全技術「Honda SENSING」を搭載し、衝突軽減ブレーキや車線維持支援システム、アダプティブクルーズコントロールなど、ドライバーの負担を軽減し、安全なドライブをサポート。

　長距離運転や渋滞時の運転に対する快適性や安全性にも配慮されています。快適で安心です。

　パワートレインは、発売当初は最高出力131ps・最大トルク155Nmの1.5リッター直列4気筒エンジンと最高出力29.5ps・最大トルク160Nmモーターを組み合わせたハイブリッド仕様のみで、低燃費と静粛性を両立。

　ホンダ独自のSPORT HYBRID i-DCD（インテリジェント・デュアルクラッチ・ドライブ）システムを搭載し、街乗りから高速走行までスムーズなドライブを実現しています。

　2018年には、最高出力150ps・最大トルク203Nmの1.5リッター直列4気筒ターボエンジンがラインナップに加わり、スポーティな走りを楽しみたいユーザーにも応える仕様となりました。

　グレードはベースモデルの「G（2列シート5人乗り）」、大人数乗車が可能な「X（3列シート6人乗り）」、スポーティな「RS（2列シート5人乗り）」の3種類で、XとRSにはガソリンモデルとハイブリッドモデルが用意されていました。

　そんなスタイリッシュなデザインとミニバンのジャンルを超越した走行性能が魅力のジェイドですが、徐々に室内空間の広さや居住性を重視した背の高いミニバンが人気となった時代の流れを受け販売不振となり、2020年に販売終了。

　なお、現在の中古車市場では40万円台から250万円台で販売されています。