トヨタ「ランクルFJ」は日常から悪路までこなす賢い末っ子! 扱いやすい絶妙サイズなのに中身は“ガチ”! 乗ってわかった魅力と課題とは

ランドクルーザー生誕75周年に登場したシリーズ最小の末っ子トヨタ「ランドクルーザー FJ」。IMV骨格ベースゆえに本格度を訝しむ声もありますが、その中身は驚くほど“ガチ”でした。「70系よりライトで250系よりヘビー」という絶妙な立ち位置を持つ本モデルの魅力とリアルな課題を、自動車研究家の山本シンヤ氏がレポートします。

扱いやすいサイズ感とパッケージングが魅力

 ランドクルーザー生誕75周年の節目に登場した、シリーズで最もコンパクトな末っ子が「ランドクルーザーFJ」です。

 タイ生産のIMV(ハイラックス等)骨格をベースにしていると聞き、「なんちゃってランクルなのでは?」と訝しむ四駆ファンもいるかもしれません。

 しかし、結論から言えばその中身は驚くほど“ガチ”であり、乗れば乗るほど「70系よりライトだが、250系よりヘビー」という絶妙かつ骨太な立ち位置が見えてきました。

 今回、オンロードとオフロードをじっくりと走り込んで見えてきた、ランクルFJの真価とリアルな課題をレポートします。

トヨタ ランドクルーザーFJの実力をオンオフ両方で試す!
トヨタ ランドクルーザーFJの実力をオンオフ両方で試す!

 まず膝を打ったのがそのサイズ感とパッケージングの妙です。全長4570mm×全幅1850mmというディメンションは、かつてショートボディ(3ドア)が設定されていた時代のプラド(90系や120系)を思い起こさせます。

 当時、ショートのプラドや三菱「パジェロ」は抜群の機動性を誇りながらも、「後席への乗り降りがしづらい」「荷物が載らない」というユーティリティの壁に阻まれ、時代の流れとともに姿を消していきました。

 しかし、ランクルFJはショートボディ並みの凝縮されたサイズ感でありながら、しっかりと「5ドア」を採用。大人4〜5名が無理なく乗れる居住空間を確保しつつ、スクエアなボディ形状を活かした実用的で広大なラゲッジスペースを確保しています。

 かつての3ドアが持っていた取り回しの良さと機動性を再現しながら、日常のファーストカーとして使い倒せる実用性を諦めていない点に、現代のランクルとしての強い意志を感じます。

オンロードは軽快ながら惜しいポイントも

 街中やバイパスを走り出して感じるのは、兄貴分の250系より約250kgも軽いボディがもたらす軽快感です。スクエアなボディ形状と水平基調のインパネ、低めのベルトラインのおかげで、前側方の見切りは抜群。車両感覚が掴みやすく、狭い路地でもスイスイと入っていけます。

 パワートレインは実績十分の2.7リッター直4ガソリン「2TR-FE」に6速ATの組み合わせです。世間では「非力」「回るだけで加速しない」と酷評されがちなユニットですが、車重の軽さもあって発進から日常の実用域までは意外なほど活発に走ります。

 むやみにアクセルを床までベタ踏み、またはラフなアクセル操作をすると、即座にキックダウンして4000〜5000rpmまでエンジンが唸り声を上げます。

 しかし、エンジンのトルク特性を信じ、スロットル開度をじわじわと丁寧にコントロールしてあげれば、無駄なキックダウンを抑えて粘り強い走りを引き出すことが可能。いわば「ドライバーのアクセルワークでしつける」楽しさがあるのです。

「アクセルワークでしつける」楽しさがある
「アクセルワークでしつける」楽しさがある

 ただし、そうやって丁寧に向き合うからこそ、トランスミッションの味付けが惜しまれます。発進直後の1速・2速は力強く押し出してくれるものの、3速・4速とシフトアップしていく領域のギア比がワイドに離れすぎており、巡航からちょっと加速したい場面でトルクバンドを外してしまいがちです。

 マニュアルモード(Sレンジ)を選んでも、アクセル開度によって意図せずキックダウンしてしまう制御ももどかしいところ。せめてこれが8速ATであれば、あるいは完全手動制御のMモードがあれば、このエンジンの美味しい領域をもっとスムーズに引き出せるはずです。

 もうひとつ、オンロードで強く感じた課題がステアリング系です。ランクルFJには、しっとりとした確かな手応えとキックバックの少なさを狙って油圧式パワーステアリングが奢られています。走行中の座りの良さや直進安定性には寄与しているものの、街中の車庫入れやタイトな辻曲がりでの据え切り、低速取り回しにおいては明確に重さが目立ちます。

 せっかく取り回しやすいサイズ感で、見切りも良く、マルチテレインモニターをはじめとするカメラサポートも充実しているのに、普段使いの駐車場で「ハンドルが重くて切り返しが億劫」と感じさせてしまうのはあまりにも損をしています。

 同じIMVプラットフォームを使うハイラックスにはすでに電動パワーステアリング(EPS)が採用されている実績があるだけに、「なぜFJにEPSを持ってこられなかったのか」と悔やまれてなりません。操舵力を軽くできるモード切り替えやEPSの採用は、今後の年次改良での最優先課題と言えるでしょう。

シャシー性能とサスペンションのしなやかさに衝撃!

 しかし、舞台を愛知県豊田市の「さなげアドベンチャーフィールド」のような本格オフロードへ移すと、オンロードでの不満はすべて吹き飛びます。トランスファーレバーを操作して副変速機を「L4(ロー)」に入れた瞬間、ランクルFJは獰猛なリアルオフローダーへと変貌を遂げます。

 オンロードでは伸びを欠いた2.7リッターガソリンエンジンが、L4の減速比によって1500〜2500rpm付近で驚異的な粘り強さを発揮。足の親指のわずかなミリ単位の動きと力加減だけでスロットルを正確にコントロールでき、急勾配の岩山を亀のようにじわりじわりと力強く這い上がっていきます。

 空転を起こさないこの緻密なトラクション性能は、過酷な現場においてまさに“神エンジン”と呼びたくなるほどの頼もしさです。

“神エンジン”と呼びたくなるほどの頼もしさ!
“神エンジン”と呼びたくなるほどの頼もしさ!

 そして、試乗中最大の衝撃はそのシャシー性能とサスペンションのしなやかさでした。

 コース内の難所である急勾配の登坂セクションにおいて、かつての70系(ショートボディ)であれば、前後デフロックを入れなければタイヤが空転して登りきれなかったような斜面を、ランクルFJはリアデフロックを使わずフリーのままで、あっさりとクリアしてしまったのです。

 しかも、過酷なオフロード走行を終えたあとに履いているタイヤを確認して二度ビックリ。オフロード用のマッドテレーン(MT)やオールテレーン(AT)ではなく、装着されていたのはなんとオンロード向けのプレミアムコンフォートタイヤ「ミシュラン・プライマシー」だったのです。

 なぜ、オンロードタイヤのデフフリーでこれほどの登坂が可能なのか。その秘密は、70系に匹敵するリアサスペンションの豊かなホイールストロークと、車重の軽さを活かした接地性の高さにありました。

 対角線スタックになりそうな大きなモーグルでもタイヤが路面から離れず粘り強く接地し続け、浮きかけたタイヤがあってもアクティブトラクションコントロール(A-TRC)がブレーキを素早く、緻密につまんで駆動力を反対側へ送り込みます。

狭い林間コースもなんのその!
狭い林間コースもなんのその!

 前後オーバーハングが短いためアプローチアングル・デパーチャーアングルも深く取られており、狭い林間コースを切り返し不要でスイスイと駆け抜ける機動性は、まさに兄貴分たちを凌駕するレベルです。

 世の中の兄弟でも「末っ子は上のいいところを見て真似て、悪いところは反面教師にして要領よく育つ」なんて言われますが、ランクルFJの仕上がりを見ていると、まさに「末っ子は兄貴たちを実によく見ているな」と思いました。

 長男(300系)の「悪路でも破綻しない余裕のサスストロークや緻密な最新制御」をしっかり横目で盗みつつ、次男(70系)の「大きくて重い」「3ドアだと荷物が載らない・乗り降りがしんどい」という不器用さを反面教師にして、5ドアと十分な荷室を確保して日常に寄り添う。

 そして、三男(250系)が「ちょっと都会派に寄りすぎじゃない?」とコアな四駆ファンに突っ込まれているのを見て、「じゃあボクは見た目以上に泥臭くガチでいきますよ」とばかりに、強靭なフレームと70並みの足まわりで武装してくるあたり、実に末っ子らしい抜け目なさとやんちゃさにあふれています。

 70系ほどスパルタンで乗り手を選びすぎることはなく、日常の快適性や先進安全・運転支援のベースを備えている。しかし、乗用車的な洗練と電子制御の安楽さが際立つ250系に比べると、明らかに物理的なダイレクト感と無骨な「道具感」が色濃く残っている。この絶妙な「70よりライト、250よりヘビー」なキャラクターこそが、ランクルFJ最大の武器だと筆者(山本シンヤ)は感じました。

 トランスミッションの多段化や電動パワーステアリングの導入といった「普段使いのしやすさ」における課題は残されているものの、ひとたびオフロードへ足を踏み入れた際の強靭さと信頼性は、紛れもなくランクルのDNAそのもの。

 入門編でありながら妥協なく作り込まれたこの末っ子は、ランクルの「操る楽しさ」と「生きて帰れる」哲学を、最も身近に教えてくれる1台です。

【画像】入門編ながらも妥協はナシ! トヨタ「ランクルFJ」の走りを画像で見る(30枚以上)

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Writer: 山本シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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