3代目は「日常での使いやすさ」を大幅に進化

 マツダの主力SUV「CX-5」が3代目へとフルモデルチェンジしました。初代から一貫して評価されてきたのは、SUVでありながらドライバーの意思に忠実に動く「人馬一体」の走りと、マツダらしいスタイリッシュなデザインです。

 今回の新型もその基本思想を受け継いでいますが、実際に乗ってみて強く感じたのが、「日常での使いやすさ」が大幅に引き上げられていたことでした。

3代目のマツダ新型CX-5(写真のグレードは「G EXパッケージ」の4WD)

 ボディは全長4690mm×全幅1860mm×全高1695mmとなり、ホイールベースも2815mmへ延長されています。数値だけを見れば、従来型よりひと回り大きくなった印象を受けますが、このサイズアップは単に立派に見せるためではありません。その恩恵を最も強く感じるのが室内です。

 特に後席は明らかに広くなりました。従来型はライバル車に対して後席の広さでやや物足りなさを感じる部分がありましたが、新型では足元に十分な余裕が生まれ、頭上空間にもゆとりがあります。実際に後席へ座ってみると、数字以上に開放感が増したことを実感できます。

  • 余裕たっぷりで開放感が増した車内。後席の足元空間(ひざ周り)は64mm拡大した(写真は「G」グレード)

 荷室も奥行きが増し、後席を使用した状態でも荷物を積みやすくなりました。つまり新型CX-5は、従来から評価されてきた「スタイルと走りのよいSUV」という価値に、ファミリーカーとしての実用性を本格的に加えてきたと言えるのです。

 エクステリアは一目でCX-5と分かるスタイルを維持しながら、全体として力強さを増しました。フロントはワイド感が強まり、SUVらしい堂々とした表情になっています。それでいて、いたずらに威圧感を強めていないのはいかにもマツダらしいところです。

堂々とした雰囲気ながら威圧感のないスタイリッシュさが新型CX-5の魅力(写真のグレードは「G EXパッケージ」の4WD)

 サイドから眺めると、ボディサイズ拡大の効果もあって伸びやかなプロポーションとなり、従来型よりひとクラス上のSUVに近づいたようにも感じます。

 ところが、運転席に座るとその大きさをあまり意識させません。Aピラー周辺を含めて前方視界が良く、車両感覚をつかみやすいことがその理由のひとつでしょう。ドライビングポジションも自然で、シートに座ってステアリングを握ると、ペダルとの位置関係を含めて体がすんなり収まります。

居住性を高めた車内でありながら、運転席ではボディの大きさを感じない(写真は「G」グレード)

 このあたりは、長年「人間中心」のクルマづくりを続けてきたマツダならではの思想が反映されているのだと思います。ボディを大型化して居住性を高めながら、それによって運転のしやすさを犠牲にしていないあたりは、新型CX-5の大きな魅力になっていると感じました。

2.5L+マイルドハイブリッドは自然な加速感が魅力

 今回試乗したのは、中間グレードとなる「G」のFF車です。パワートレインは2.5リッター直列4気筒ガソリンエンジンに24Vマイルドハイブリッドを組み合わせ、トランスミッションには6速ATを採用。エンジンは最高出力178ps、最大トルク237Nmを発生します。

パワートレインは、動力性能と燃費性能を両立させた2.5リッター直列4気筒にマイルドハイブリッドの組み合わせ

 走り出して最初に感じたのは、アクセル操作に対する反応の自然さでした。低速域ではモーターがエンジンをアシストするため、発進時にもたつく印象はほとんどありません。アクセルを踏んだ分だけ素直に速度が上がっていき、ストップ&ゴーの多い市街地でも扱いやすく感じます。

 一方、強烈な加速感を期待すると少し印象は異なります。高速道路への合流などでアクセルを深く踏み込めば、2.5リッターエンジンはしっかり回って速度を高めていきますが、ターボエンジンやストロングハイブリッドのように強大なトルクが瞬時に立ち上がるタイプではありません。

アクセル操作に応じて素直に加速する新型CX-5。ドライバーの意図に沿った、予測しやすいレスポンスが印象的だ(写真のグレードは「G EXパッケージ」の4WD)

 しかし、それを物足りないとは感じませんでした。むしろ印象に残ったのは、ドライバーがアクセルを踏んだ量と実際の加速感が一致しやすいことです。

 少し踏めば少し加速し、さらに踏み込めばそれに応じて速度が高まる。この予測しやすいレスポンスは、マツダが重視してきた「人馬一体」の考え方にも通じるものとも言えます。

 日常的な市街地から郊外路まで、ドライバーの意思に忠実で扱いやすい。新型CX-5のキャラクターを考えれば、この自然なパワーフィールはよく合っていると言えるでしょう。

一番の進化を感じたのは乗り心地

 そして、走りで最も進化を感じたのが乗り心地でした。従来型CX-5は、ステアリング操作に対する反応が良く、SUVとしてはスポーティなハンドリングを楽しめる一方、低速域では路面からの入力をやや強めに伝える場面がありました。

 新型では、その印象がかなり薄れています。荒れた路面を通過しても、サスペンションが入力をしなやかに受け止め、ボディへ伝わるショックをうまく抑えています。段差を越えた際にも角の取れた感触となり、従来型より乗員に優しい乗り味になりました。

乗り心地の快適性とハンドリングの良さの高バランスが新型CX-5の大きな進化ポイント(写真のグレードは「G EXパッケージ」の4WD)

 だからといって、単純に足回りを柔らかくしたわけではありません。カーブへ入ってステアリングを切ると、車体はドライバーの操作に対して素直に向きを変えていきます。SUVとして重心の高さを意識させる動きも少なく、ボディが必要以上に大きく傾くこともありません。これは、従来型が持っていたハンドリングの良さを残しながら、路面からの入力だけをうまく丸めたような感覚です。

 新型CX-5では、スポーティさだけを前面に押し出すのではなく、「毎日気持ちよく乗れること」へ重点を移したように感じました。

 これは後席の居住性向上ともリンクします。せっかく後席を広くしても、乗り心地が硬ければファミリーカーとしての魅力は十分とは言えません。広くなった室内としなやかな乗り心地を組み合わせたことで、家族を乗せた長距離ドライブでの快適性は従来型から確実に向上したと言っていいでしょう。

Google built-in採用でインパネも大きく変化

 そして、走りや実用性と並んで、新型CX-5の大きな変化となったのがインフォテイメントです。

 従来のマツダ車ではセンターコンソールに配置したコマンダーコントロールを中心とする独自の操作体系を採用してきました。それが新型では、大型センターディスプレイを中心としたタッチ式へとHMIを大きく方向転換しています。その核となるのが「Google built-in」です。

大型センターディスプレイは全面タッチ式に。「Google built-in」採用により、スマホを介すことなくGoogleマップなどのサービスが使える。写真の「G」グレードは12.9インチ

 ここで理解しておきたいのは、Google built-inとAndroid Autoは似ているようで仕組みが大きく異なることです。

 Android Autoは、基本的にスマートフォンで動作しているGoogleマップや音楽アプリなどを車載ディスプレイへ展開する仕組みです。主役はあくまでスマートフォンです。それに対してGoogle built-inでは、車載インフォテイメントシステムそのものがAndroid Automotive OSをベースとして動作し、GoogleマップやGoogle Playなどのサービスがクルマ側へ組み込まれています。

 簡単に言えば、Android Autoが「スマートフォンをクルマで使う」ものだとすれば、Google built-inは「Googleがクルマそのものに入った」仕組みなのです。

様々なアプリはスマートフォンを経由せずに、Google built-inであればクルマのモニターから直接ダウンロードできる(写真のグレードは「G EXパッケージ」)

 実際に使ってみると、この違いはGoogleマップだけにとどまりません。Googleマップはスマートフォンを接続することなく利用でき、検索能力もスマートフォン版と同様に高いものです。施設名を正確に入力しなくても目的地を見つけやすく、周辺の飲食店なども自然な言葉で検索できます。

 そしてGoogleアカウントでログインすれば、スマートフォンやPCで保存した場所などをクルマでも利用できます。Googleマップがスマートフォンから持ち込むナビではなく、事実上の「純正ナビ」として機能するわけです。

 さらに興味深いのが音声操作です。目的地を検索するだけでなく、「OK Google、エアコンを22度にして」などと話しかけて空調を操作することもできます。これは、Googleが扱う対象が地図や音楽などのデジタルサービスだけでなく、クルマそのものの機能にまで広がったことを実感できる部分です。

 大型ディスプレイ化によって画面を見る機会が増える一方、音声操作によって視線移動を減らす。この組み合わせは、新型CX-5の安全面を考える上で重要なポイントとなっています。

  • 「Google Built-in」に「COCCHi for Automotive」をインストールして展開した。パイオニアのナビアプリ「COCCHi for Automotive」は月額700円で利用できる(撮影:会田 肇)(※スマートフォン向けアプリ「COCCHi」はサービス終了のアナウンスがあったが、車両から直接ダウンロードできる「COCCHi for Automotive」については引き続き継続される)

 Google PlayからAndroid Automotive OS対応アプリを車載システムへ追加できることもGoogle built-inならではの機能です。

 一方で、実際にサードパーティー製のナビアプリなどを試してみると、動作がやや遅かったり、画面レイアウトが十分に最適化されていなかったり、音声入力が思うように機能しなかったりする場面もありました。このあたりは今後のアプリ側の対応やアップデートに期待したいところです。

インストールしたナビアプリには車速パルスを反映でき、GPS衛星からの電波をロストしても純正ナビのようにルート案内を継続できる。ビデオカメラで撮影した映像をキャプチャー(撮影:会田 肇)

「走りのCX-5」から「毎日使いやすいCX-5」へ

 新型CX-5を試乗して最も強く感じたのは、マツダがこのクルマの守備範囲を大きく広げたことでした。

 自然なドライビングポジションやステアリング操作に対する素直な反応など、以前からのCX-5らしさはしっかり残っています。

 その一方で、後席を広くし、荷室を使いやすくし、乗り心地をよりしなやかに仕上げた点は、「運転して楽しいSUV」という従来の魅力を捨てることなく、「家族を乗せて毎日快適に使えるSUV」へと進化したことの証しでしょう。そしてGoogle built-inは、その進化にデジタルという新しい価値を加えました。

時代に合わせた話題性のあるデジタル要素"だけ"ではなく、クルマそのものの基本性能も大きく進化しているのが新型CX-5の魅力点

 重要なのは、新型CX-5の魅力がGoogle built-inだけにあるわけではないことです。むしろ、広くなった室内、扱いやすいパワートレイン、しなやかな乗り心地といったクルマとしての基本性能を着実に磨いたうえで、そこにGoogleという新しいデジタル環境を組み合わせたことに意味があります。

 マツダが長年培ってきた「人馬一体」の思想を残しながら、より快適に、より使いやすく、そしてデジタル時代にふさわしいSUVへ。3代目CX-5は、CX-5というクルマの価値そのものを一段と高めたモデルと言えそうです。

「Google+大型モニター」は全車標準装備!新型「CX-5」のグレード一覧はこちら

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