マツダの最新モデルとなる新型「CX-60」には最近のクルマとしては珍しく、多くのパワートレインが設定されています。
PHEV(プラグインハイブリッド)、マイルドハイブリッドディーゼル、(モーターのつかない)ディーゼル、そして(モーターのつかない)ガソリン車と4タイプもあり、購入時に迷う人も多いのではないでしょうか。
そのうち、ひとあし早く発売されたのが「e-SKYACTIV D」と呼ぶマイルドハイブリッドディーゼルやPHEVです。
しかし、今回試乗したのはそれらとは異なる“ハイブリッドではない”ディーゼルエンジン搭載車の「SKYACTIV D」。
PHEV(539万円~)やマイルドハイブリッドディーゼル(505万4500円~)に比べると323万9500円からとプライスも抑え気味で、より身近なモデルと言えるのではないでしょうか。
筆者はCX-60に関しては人一倍興味を持っていますが、追加されたモーターなしのディーゼルに試乗して2つのことを感じました。
1つは、しっかりパワーがあるということ。
マイルドハイブリッドとしてモーターを組み合わせる「e-SKYACTIV D」とモーター無しの「SKYACTIV D」は基本的に同じエンジンですが、モーター(最高出力16.3ps/最大トルク153Nm)の有無以外にも異なる部分があります。
それはエンジンのスペックです。
「e-SKYACTIV D」がエンジン単体で最高出力254ps/最大トルク550Nmなのに対し、「SKYACTIV D」は最高出力231ps/最大トルク500Nmとやや控えめ。
筆者はモーターなしのディーゼルを実際に発注済みの1人としても、これが加速フィーリングにどう影響を与えているのかはとても気になるところでした。
結論からいえば、まったく問題なく力強い加速を見せてくれ、個人的にも安心です。
確かに、細かく比べるとエンジン回転数が1500rpmを超えるあたりから3000rpmあたりまでの加速の伸びやかさというか、車両が前へ出ていこうという感覚はモーター付きディーゼルのほうが感じられます。
これは単にエンジンだけの違いでなくモーターがアシストする影響も考えられますが、いずれにせよモーター付きのほうが一枚上手であり、滑らかでした。
しかしながら、絶対的な加速の力強さではモーターなしの「SKYACTIV D」でも十分で、むしろ「ここまでの加速は必要ない」と思えるほど。力不足は全くありません。
よくよく考えれば、それも当然のことで、たとえば「CX-5」などに搭載する排気量2.2リッター直列4気筒ディーゼルエンジン(最大トルク450Nm)のクルマを運転してその加速の力強さに驚いた人も多いのではないでしょうか。
CX-60に積む3.3リッター直列6気筒ディーゼルエンジンの最大トルクはそれを上回るだけでなく、力強いトルクを発生する回転域が広くて1500回転と低い回転域から中回転域となる3000回転(モーター付仕様は2400rpm)までフラットにピークトルクを発生するのが大きな特徴です。
なので、CX-5のディーゼルよりも圧倒的にパワフルに加速するのです。
一部ではこのエンジンに対して「排気量のわりに出力が小さい」という声もあるようですが、そう思う人はまず実際に試乗することをお勧めします。
いっぽう3000回転以上はモーター付仕様とモーター無し仕様の発生トルクの差がなくなっていき、4000回転以上では(エンジン単体の差は)ほぼありません。
別の言い方をすれば「加速において絶対的にモーター付きディーゼルだけど、高回転での盛り上がりはモーター無しのほうが感じられる」となり、エンジンを回すことに歓びを感じられる人は特性の面からあえてモーター無し仕様を選ぶという選択もアリといえそうです。
ちなみにモーター付き用のディーゼルエンジンとモーター無しのエンジンをメカニズム的に比べると、基本的に違いはありません。
ただ、後者は燃料噴射圧の最大値が低く抑えられていて、それが最高出力やトルクの数字に影響を与えています。
エンジン担当の開発者によると「インジェクター自体はどちらも同じ部品」ということなので、モーター無しは制御でスペックを控えめにしていると判断していいでしょう。
ただし、補器類においてはオイル潤滑系の部品などが異なる(モーター付きエンジン用は性能が高められている)高出力対応となっているそうです。