CLASSIC MAZDAストーリー ロータリーエンジンは、終わっていない。― 13Bロータリーエンジン、継続生産の裏舞台を訪ねる。 ―(後半)

夢のエンジンを、夢で終わらせない。弛まぬ生産を支える人たち、工場、そして志。
2021年某日、広島。朝8時半、薄暗かった工場の明かりが灯り、間もなく見渡す限りの工作機械が順に低くうなり声をあげはじめた。マツダ第2パワートレイン製造部。ロータリーエンジン・13B型の部品を製造する工場。そう、ロータリーエンジンは、まだ終わっていない。

(前半はこちらから:https://kuruma-news.jp/release/mazda/car/3039

最高の製作環境を保ち続けることが最高品質のための最初の工程

マツダ本社工場所属 鷲尾義和

「ここでは、アペックスシールという部品をセットするための溝切り加工をします。三角形のローターの3つの頂点に組み付けられるアペックスシールは、ロータリーエンジンが最高の性能を発揮するための極めて重要な部品です」

ちょうど作業中だった鷲尾義和さんに話しかけてみた。

「溝幅の設計値は、2ミリです。それに対して、マイナス5ミクロン、プラス12ミクロン(1ミクロン=1/1000ミリ)以内の精度で仕上げます。回転する砥石を使って慎重にゆっくり削っていくのですが、加工を始める前に砥石の厚みや状態を念入りに確認するところからがこの作業です。砥石は、何度使っているうちに徐々に薄くなってきます。また砥石の表面にキズがあったりすると、溝の内壁にもキズが付いてしまいます。もちろん機械にわずかでも不具合があると、せっかくここまでいくつもの工程を経てきたローターを台無しにしてしまいます。そのようなことにならないように、毎回毎回、今が最高の作業環境であることを確認し続けることが、とても大切なんです。」

鷲尾さんもまた、この工場でロータリーエンジンと向かい合って35年の大ベテランではあるが、シャイでやさしい性格という仲間内の評判もまた間違いないようで、そこまで話すとまた機械の方を向いて作業に戻ってしまった。

「この工場でロータリーエンジン製造の現場に携わっているのは、総勢7名の小所帯です。同じ敷地内の別の工場棟でローターハウジングの加工の前半行程を行っているのですが、そちらを合わせても10名だけです。その人数で、ローターだけでなく、ローターハウジング、サイドハウジング、エキセントリックシャフトなど、ロータリーエンジンに必要なすべての部品を製造しているんです。たいへんですが、誰が欠けても困るような仲間意識の強さはあると思います。皆、個性的でとても楽しい職場ですよ。」

佐藤さんは、そう笑いながらまた歩き始めた。

13B型・全10バリエーションを完全に作り分けるわずか10名のマイスターチーム

驚くべき数字がある。佐藤さんが笑顔で紹介したこの体制下、この工場からは毎月平均200〜400台分のロータリーエンジン用の部品が世界に向けて出荷されている

2020年4月からこの工場の職長として着任した安部宏道、同係長として着任した水津直己は、現場に立つ彼らについて口を揃えてこう話す。

「13B型というロータリーエンジンは、実は搭載車種・仕様によって10種類ものバリエーションがあるんです。それぞれ使用している部品の仕上げが細かく異なります。この膨大な種別の部品を、世界中からの発注に応じて作り分けなければなりません。また、社内外の加工工程をすべて完了させて製品として完成させるために、部品によっては1〜2ヶ月の時間が必要になることもあります。そして、そのようにして完成した複数の部品を組み合わせて、1つのユニットに組み上げなければならないこともあるわけです。

そのような複雑な作業を、彼らはメンバー間のやりとりの中で見事にこなしています。ここで働く誰もが、複数の作業を完璧にこなす経験とスキルを備えています。さっきあの機械の前にいた人が、いまは別の機械の前で異なるスキルが求められる作業をしているというような光景が、ここでは日常なんです。自分の持ち分以外は引き受けないような人たちの集まりでは、絶対に不可能なチームワークがこの職場にはあるんです。」

たいへんではないか? 佐藤さんに投げかけてみた。

「自分と同世代でマツダに入った人間は、みんなロータリーエンジンに憧れてここへ来たんです。今は新車への搭載はないですが、ロータリーエンジンが目指した志の意味を、肌身で知っている世代なんです。そして、その想いに共感して、ロータリーエンジンが搭載したマツダ車を買ってくださったお客様が、世界中にたくさんいらっしゃることも知っています。そのようなお客様にいつまでもロータリーエンジンの素晴らしさを楽しんでいただきたい。

1つ、また1つとハンドメイドで製造するような体制ですが、見渡すところに全員の顔が見えるようなチームであることで、皆が等しく責任感を持って取り組むことができています。それが、この工場で働く最大の喜びだと思うんです。」

そう言うと、そびえるような高さの機械の合間をさらに工場の奥に向かって歩き始めた。

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