ちょっと変わったアウトバックを振り返る
スバルは2021年9月2日に、新型「レガシィ アウトバック」の日本仕様を初公開しました。ステーションワゴンタイプのSUVでは先駆け的存在だったレガシィ アウトバックは、北米市場では2019年に6代目となる新型モデルが発表されていましたが、日本では従来モデルの5代目のまま刷新されていませんでした。
しかし、ついに7年ぶりとなる新型が日本でも公開され、2021年9月2日に予約が開始され、同年10月に正式発表されます。
レガシィ アウトバックは1994年に、2代目「レガシィ ツーリングワゴン」(当初はセダンベースもあり)をベースに悪路走破性を高めたモデルとして、スバル「アウトバック」の名でアメリカから発売。
続いて日本では1995年に「レガシィ グランドワゴン」の名で登場しました。その後車名を「レガシィ ランカスター」に変え、2003年発売の3代目から国内モデルがレガシィ アウトバックとなり、現在に至ります。
新型レガシィ アウトバックのコンセプトは歴代を継承しつつ、エンジンは最高出力177馬力を発揮する1.8リッター水平対向4気筒直噴ターボに刷新し、安全運転支援システムも最新の「アイサイトX」を全車標準装備するなど、環境性能と安全性能の向上が図られました。
SUV人気が高いなかで公開された新型レガシィ アウトバックですから、再びヒット作となるのか大いに注目されます。
そこで、これまで登場したレガシィ アウトバック(アウトバック含む)のなかから、ユニークなモデルを3車種ピックアップして紹介します。
●スバル「レガシィ アウトバック 3.6R」
レガシィ アウトバックのキャラクターはレガシィ ツーリングワゴンと異なり、スポーティな走りよりもロングツーリングでの走りが重視されてきました。
そんなキャラクターをさらに高めたモデルだったのが、2009年に登場した4代目のトップグレード「3.6R」です。
その名のとおり、搭載されたエンジンは同社で最大となる3.6リッター水平対向6気筒自然吸気で、最高出力260馬力、最大トルク34.2kg・mを発揮。
この3.6リッターエンジンは海外専用モデルの大型SUV「トライベッカ」や北米仕様のレガシィなどに搭載された実績がありますが、国内ではこれまでに4代目レガシィ アウトバックのみに設定されたのみです。
レガシィ アウトバック 3.6Rの出力特性はマイルドに設定されていましたが、大排気量自然吸気エンジンならではの低回転域から湧き出る太いトルクを生かし、高い加速性能と長距離ドライブでの余裕ある走りを実現。
この3.6リッターエンジンはレガシィ アウトバックのキャラクターに相応しいといえますが、日本では自動車税の面で不利なこともあり販売的には2.5リッターモデルが主流でした。そのため国内では5代目の登場と同時に廃止となってしまいました。
●スバル「バハ」
前述のとおり、もともと北米市場での販売をメインにアウトバックが開発されました。実際にアウトバックは北米でヒットし、スバルのブランドイメージ向上にも貢献。
そして主戦場である北米で、アウトバックをベースにした非常にユニークな派生車がデビュー。それが、2003年に発売された「バハ」です。
バハは2代目アウトバックの後部を荷台(ベッド)に作りかえる手法で開発されたダブルキャブのピックアップトラックで、アメリカではSUT(スポーツユーティリティトラック)に該当します。
外観ではほかにも専用デザインの前後バンパーにオーバーフェンダー、サイドプロテクターが装着されるなど、アウトバックのイメージよりもポップな印象です。
発売当初に搭載されたエンジンは2.5リッター水平対向4気筒自然吸気のみでしたが、2004年に最高出力217馬力を発揮する2.5リッター水平対向4気筒ターボを追加。
バハはアウトバックと同等の走行性能や走行安定性があるピックアップトラックとして、稀有な存在でしたが、より大型のミドルサイズ、フルサイズピックアップトラックほどの需要はなく、2006年に生産を終了。
かつてスバルは「レオーネ」をベースにしたシングルキャブピックアップトラックの「ブラット」を販売しており、バハは同社のピックアップトラック第2弾でしたが、これ以降現在まで、スバルのラインナップにピックアップトラックは存在していません。
●スバル「アウトバック ウィルダネス」
前述のとおりアウトバックは、レガシィ ツーリングワゴンに対して悪路走破性が高いモデルとして開発されましたが、さらに2021年3月にはオフロード性能を一層高めたモデルとして「アウトバック ウィルダネス」が登場しました。
ウィルダネス=Wildernessは日本語で「荒野」を意味し、アウトバック ウィルダネスはまさに荒野を突き進むタフなモデルです。
外観は専用デザインのフロントグリルと前後バンパー、大型化されたホイールアーチ・プロテクター、フロントスキッドプレート、六角形のLEDフォグランプなどのアイテムが装着され、よりワイルドなイメージへと変貌。
さらに、悪路走破性を高めるために最低地上高が標準モデルの8.7インチ(約220mm)から9.5インチ(約240mm)まで上げられ、アプローチアングルとデパーチャーアングルも、より深い角度に対応しています。
搭載されるエンジンは最高出力263馬力を発揮する2.4リッター水平対向4気筒ターボで、トランスミッションはCVTのみの組み合わせです。
駆動方式はアウトバックと同じく、路面状況で走行モードを選択できる「X-MODE」を備えたAWDですが、ウィルダネスでは極低速時のトラクション性能が向上。
また、足まわりも専用セッティングとされ、オールテレーンのオフロードタイヤとスペアタイヤもテンパータイヤではなくフルサイズのタイヤを標準装備するなど、オフロードでのアクシデントにも対応しています。
アウトバック ウィルダネスは北米市場専用モデルで今のところ日本で販売される予定はありませんが、国内仕様の新型レガシィ アウトバックではアクティブな「X-BREAK EX」グレードが設定される予定です。
※ ※ ※
新型レガシィ アウトバックが登場したことで、スバルは2020年11月発売の新型「レヴォーグ」に続き、新たなステーションワゴンを市場投入することになります。
かつて、初代レガシィ ツーリングワゴンの誕生によって、ステーションワゴンブームを巻き起こしましたが、近年の国内市場ではステーションワゴン人気の低迷からラインナップは激減してしまいました。
ステーションワゴンはユーティリティに優れるだけでなく、セダン並の走行安定性とドライビングプレジャーがあり、かなりの優等生といえるモデルですが、ニーズの変化にはあらがえなかったのでしょう。
今後、新型レガシィ アウトバックが発売されればステーションワゴン人気の再燃につながるか、大いに期待されます。
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