スバルの「シンメトリカルAWD」はどのように生まれたのか

 スバル車を語る時に必ず出てくるキーワードといえば「シンメトリカルAWD」です。

 スバルは「4輪にバランスよく荷重がかかる→タイヤの接地性をシッカリ確保→4輪に配分された駆動力を無駄なく発揮→4輪駆動のポテンシャルを最大限に引き出せる」と語り、あらゆる路面でスバルが提唱する「安心と愉しさ」を実現するためのスバルのコアテクノロジーとなっています。

スバルのコアテクノロジー「シンメトリカルAWD」その歴史とは

 その特徴を簡単に説明すると、エンジン、トランスミッション、そして駆動系が一直線かつ左右対称にレイアウトされる構造となっていますが、この構造はどのようにして生まれたのでしょうか?

 富士重工(現・SUBARU)の4輪車参入は「テントウムシ」の愛称で有名なスバル360ですが、実はそれ以前から普通乗用車の開発に取り組んでいました。

 いくつかの試作車が開発されましたが、その中の一台に「A-5(1963年)」と言うモデルがありました。開発はスバル黎明期を支えた伝説のエンジニアである百瀬晋六氏を中心に行なわれています。

 元々、A-5は電気自動車として開発されたモデルでしたが、「時期尚早」と言うことでガソリンエンジンに転換されたと言います。

 A-5は当時としては画期的なフロントエンジン・フロントドライブ(FF)を選択。当時FRは振動と居住スペースなどの課題、RR方式はスバル360で実用化させていたものの、横風安定性に課題があり、百瀬氏の「駆動方式はFFが理想的」と言う判断から選択されました。

 更にパワートレインはポルシェやVW、そしてシボレー「コルベア」のユニットを参考に開発された水冷の水平対向エンジンとトランスミッションを縦置きに搭載。そう、このA-5が「水平対向エンジン+シンメトリカルレイアウト」を始めて採用したモデルなのです。

 サスペンションはフロント・ウィッシュボーン式/リア・トレーリングアーム式を採用、更にサッシュレスウィンドウを採用するなど、後のスバル車で採用される技術が数多く採用されていました。

 同クラスのライバルよりも200kg以上軽量設計となる650kgを目標とし、航空機技術が数多く応用されたと言います。

 このA-5、4台の試作車が製作されたのみで市販化には至りませんでしたが、水平対向エンジン+シンメトリカルレイアウトは開発コード「63-A」と呼ばれるスバル1000(1966年)で花開きます。

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