マツダ、麻布台ヒルズに「マツダR&Dセンター東京」を開設し、 東京本社を移転

 マツダ株式会社は、首都圏機能強化の一環として、東京都港区麻布台の麻布台ヒルズに新たなR&Dオフィス「マツダR&Dセンター東京(略称:MRT)」を開設するとともに、東京本社を従来の霞が関ビルから麻布台ヒルズに移転したことを発表しました。

 この取り組みは、研究開発、販売・マーケティング、人材採用の3領域における首都圏機能の強化を目的としています。

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マツダの新拠点に飾られたマツダのミニカー

 自動車業界は現在、「100年に一度」とも言われる大変革期を迎えています。

 クルマづくりの競争軸がハードウェアからソフトウェアへとシフトしつつあり、急速に変化する時代に対応するため、マツダは従来の広島一極集中にとらわれない柔軟な事業展開を模索しています。

 今回の取り組みについて、マツダの滝村典之執行役員(コミュニケーション・広報・渉外・サステナビリティ・東京首都圏担当)は次のように話しています。

「私たちは人が最も重要な資本という考えのもと、人材活躍の最大化の取り組みを推進しており、このたびの取り組みもその一環です。

 麻布台は、古くから外交の中心地でありながら、今なお進化を続けるエリアです。

 マツダも、新たな拠点から、マツダに関わるすべての人にいきいきとする体験を届け、選ばれるブランドであり続けたいと思います」

 マツダはこれまで、広島県府中町の本社をはじめ、広島県三次市や山口県など広島地域周辺に開発、生産、マーケティングなどの機能を集約し、地理的に近い拠点が連携することで効率的なものづくりとオペレーションを強みとしてきました。

 これまでマツダが首都圏に持っていた拠点は、東京本社とマツダR&Dセンター横浜(MRY)の2カ所でした。

 2024年2月には六本木に「マツダイノベーションスペース東京」を開設し、さらに2025年2月には南青山に「マツダトランス青山」を開設。

 今回のMRT開設と東京本社移転は、こうした首都圏機能強化の一環となります。

 MRTは、特にソフトウェア領域の開発機能を強化する拠点として位置づけられています。

滝村 典之執行役員 コミュニケーション・広報・渉外・サステナビリティ・東京首都圏担当

 マツダの今田道宏執行役員(統合制御システム開発担当)によると、MRTには「コネクティッドソフトウェア開発グループ」と「先進安全技術開発グループ」の2つのグループが配置されます。

「コネクティッドソフトウェア開発グループ」では、以下の3つの領域に注力します。

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1. GUIアプリケーション開発:マツダ独自の機能・価値を生み出すアプリケーションを自社開発
2. リアルタイム3Dグラフィックス:Unity社とのパートナーシップを活かし、直感的な操作を可能にする先進的なGUI開発
3. ソフトウェアプラットフォーム開発:共創・共通化により効率的な開発を目指す
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「先進安全技術開発グループ」では、人の状態検知によるリスク低減を目指す高度運転支援技術「マツダ Co-Pilot コンセプト」の進化に取り組みます。

 特に、従来のルールベースのシステムから、膨大な走行データと動画でトレーニングしたAI技術を活用した「データドリブン開発」への移行が進められています。

 今田執行役員は「クルマの電動化や知能化が急速に進化・高度化する中でも、安全・安心を担保し、お客様に感動した体験を提供していくためには、より高度なソフトウェア技術の開発やイノベーションが不可欠になっています」と説明しています。

今田 道宏 執行役員 統合制御システム開発担当

 またMRT開設の背景には、マツダが直面する3つの課題があり、それは「採用、共創、連携」です。

  採用の面において、マツダは首都圏に日本のIT・デジタル人材雇用企業の約51%が集中しており、高度なソフトウェア人材の確保が急務だといいます。

 クルマに搭載されるソフトウェアの規模はモデル世代ごとに約10倍のペースで増加している一方、ソフトウェア開発者の採用競争は自動車業界だけでなく多様な業界で激化しています。

 そうしたなかで今田執行役員は「コネクティッドソフトウェア開発グループに常駐する社員の約8割がキャリア採用の見込み」と述べており、新たに入社した社員がすぐに馴染めるよう柔軟な風土の醸成に努めていくとしています。

 首都圏の就業人口は日本の全就業人口の約3割を占めており、ソフトウェアに限らず様々な分野で高度な専門知識を持つ人材を採用するために、首都圏の採用市場への積極的な参入が必要とされています。

 今後は人材採用活動の拠点を広島から首都圏に機能集約することも予定されています。

 次に共創です。

 AIを活用したデータドリブンな自動運転技術や次世代の先進技術は、マツダ単独では実現が難しい領域です。

 そのため首都圏に拠点を持つITベンダーやAIベンダー、さらには官公庁との連携による業界協調活動の拠点としても、MRTは重要な役割を担います。

 今田執行役員は「多様な新たな人材の人達と仲間になってスピード感を持って新しいビジネスや開発につなげるには、これまでマツダになかった知見やアイデアを持った人材やビジネスパートナーが仲間に加わることが必須です」と強調しています。

 次に社内連携です。

 MRTは独立した組織ではなく、広島本社やマツダR&Dセンター横浜(MRY)と組織上は一体で運営されます。

 広島本社では車両開発全般、MRYでは実車を使った開発業務、MRTではソフトウェア開発と共創に注力するという業務分担が計画されています。

 この3拠点での一体運営を実現するため、MRTとMRYを横断して統括する副本部長というポジションが新設されました。

 また、MRT内にはデザイン本部のワークスペースも設けられ、デザイン開発とソフトウェア開発の連携も強化される予定です。

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 また今回、東京本社が移転しました。

 東京本社では、従来の広報、渉外、営業等の機能に加え、国内ビジネスの構造変革を推進するためのマーケティング機能や、全社的な人材採用機能が強化されます。

 2050年には都市圏の人口比率が60%を超えると予測されており、自動車需要も都市部に集中する傾向が強まると見込まれています。

 このような背景から、マツダは都市圏における販売網再構築と新世代店舗への投資を加速させる方針で、滝村執行役員は次のように話しています。

「都市圏、特に首都圏は日本全国また世界各地から集まった人々が交差するエリアであり、モビリティへの接し方やライフスタイルの多様な価値観を肌で感じることができる場所です。

 お客様や人々が作り出す空気感に直接触れることができる首都圏は、販売、マーケティング、コミュニケーションの最前線であると言えます」

共用スペースなどはマツダのデザイナーが手掛けている

 マツダR&Dセンター東京と東京本社のオフィス環境については、「社員1人1人が通いたくなると感じる場と空間を目指し、設計段階から多くの議論と工夫を重ねてきました」と滝村執行役員は述べています。

 R&Dエリアでは広島本社やMRYと連携したアジャイル開発がよりスムーズに進むよう、開放的で機能的な空間が整備。

 東京本社エリアでは、来客対応や多様な働き方に対応する柔軟性を備えています。

 共用エリアでは、机や椅子を自由に動かせる協創活動がしやすい空間や、コミュニケーションの中心となるカフェスペースが設けられるなどマツダ社内のデザインメンバーが手掛けています。

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 マツダの麻布台ヒルズへの東京本社移転とMRTの開設は、自動車業界の大変革期においてマツダが掲げる「選ばれるブランド」であり続けるための戦略的な施策です。

 走る歓びやデザイン、品質といった従来の強みを磨き上げる一方で、電動化・知能化にも着実に対応していくために、首都圏における研究開発、販売・マーケティング、人材採用の3領域での機能強化が図られています。

 特に注目すべきは、ソフトウェア領域の開発機能強化と、首都圏の人材・企業・研究機関との共創促進という点です。

 クルマづくりの競争軸がハードウェアからソフトウェアへと移行する中、マツダはこの変化に対応すべく積極的な投資と体制変革に取り組んでいます。

 マツダが「人中心」の価値観を大切にしながら、新たな拠点でどのような革新的な技術やサービスを生み出していくのか、今後の展開に注目が集まります。

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