「CX-80」には「CX-60」にある2.5リッターの直列4気筒自然吸気ガソリンエンジンがない
話題の3列シートSUVであるマツダ「CX-80」には3タイプのパワーユニットが用意されています。プラグインハイブリッドの「PHEV」を頂点に、モーター付きディーゼルの「XDハイブリッド」、そしてモーターなしディーゼルの「XD」。先に伝えておくと筆者(工藤貴宏)のイチオシは最もベーシックな「XD」ですが、その理由は後ほどお伝えしましょう。
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ところで、そんなCX-80のパワーユニットの展開に関して、血縁関係の濃い2列シートSUV「CX-60」との違いに気が付く人もいるかもしれません。CX-60は4タイプのパワーユニットを用意しますが、CX-80は3タイプとひとつ少ないのです…
どれがなくなっているのか?
それは、ピュアガソリンエンジン。CX-60ではモーターを組み合わせない排気量2.5リッターの直列4気筒自然吸気ガソリンエンジンが選べますが、CX-80には設定がないのです。「CX-80はCX-60に対して重量が増しているうえに、乗車定員も増えている。そのため状況によっては力不足を感じるから」というのがその理由。ですが、ディーゼルだけでスタートした「CX-8」や「CX-3」にも気が付けばガソリンエンジンが加わったように、どこかのタイミングで追加される可能性がまったくないとは言い切れません。ガソリン自然吸気エンジンを積んだ仕様は価格を下げることが可能なので、リーズナブルなCX-80を求めている人は、マツダにラブコールを送るのもいいでしょう。
さて、そんなパワートレインの内容と特徴をもう少し細かく見ていきましょう。
まるで大排気量V8エンジンのようなフィーリングの「PHEV」
「PHEV」の構成は、2.5リッターの4気筒自然吸気ガソリンエンジン+外部充電可能な大型バッテリー+強力モーター。モーターは175psもあり、188psのガソリンエンジンと組み合わせてシステム出力は327ps。同じく最大トルクは500Nmもあるので、車両重量が2.2トンあるとはいえ動力性能はかなりのものです。
いっぽうで外部から充電することで、エンジンをかけずにモーターだけで67km(カタログ記載WLTCモード)のEV走行が可能。日常域はガソリンをほとんど使わず走り、給油すればロングドライブもストレスなくこなせるのが、EVと違う大きな魅力というわけです。
ちなみに走行感覚は、EV走行時を除けばモーター走行感はほとんどなし。「モーターが付いていない」と言われたら信じそうなほどです。同じPHEVのSUVでも、エンジンがかかってもエンジンの存在感を徹底的に消してモーター走行の感覚にこだわる三菱「アウトランダーPHEV」とは対極にあるフィーリングと言っていいでしょう(そもそも両者は駆動力を生む仕掛けも違いますが)。
とはいえそれは、モーターがあまり働かないというわけではありません。これまでのエンジン車を好む人に向けて、PHEVながらハイブリッド走行時はあえてモーター感を覚えさせない味付けにしているのです。そのフィーリングは、まるで4.0リッターくらいの排気量を持つV8エンジンのよう。モーターが加わることで低回転トルクに厚みが増し、さらにモーターのパワーによるブースター効果で全体的にパワフルな印象を受けます。有段式のトランスミッションを組み合わせるからエンジン回転上昇と速度上昇がしっかりリンクして違和感がなく、伸びやかで力強い加速ができるのも魅力ですね。
ハイブリッド燃費(WLTCモード)は12.9km/Lで「ハイブリッドの割にはよくない」と思う人もいるかもしれませんが、「V8大排気量エンジンと同じ動力性能と加速感のわりには燃費がいい」と捉えるのが正解でしょう。
そんなPHEVは、外部充電を活用することで日常範囲はガソリンをほとんどつかずに走ることができるエコ性能と“走る歓(よろこ)び”を両立するパワーユニット。筆者がPHEVをオススメするのは、ガソリン大排気量車のゆとりある加速感が好みのドライバーです。